別れ・・・ そして

私は臼井亜香里。


私は夏休みが明けた9月1日の朝に激しい腹痛に襲われ入院した。

病名は虫垂炎、いわゆる盲腸が炎症をおこしたものだ。

私の場合、腹膜炎をおこしていたので緊急の手術となった。


幸い炎症は酷く無かったので一週間程度の入院だった。


まったく・・・ 夏休み明けからヒドイ目にあった。


入院中は岳との事ばかり思い出して・・・

思い出す度にニヤニヤしてしまった。


退院して初めて登校すると岳と出くわす。

なんだか雰囲気がいつもの岳じゃない。

禍々しい様な空気を纏っている。


「おはよう岳! 心配かけちゃたね。」


「おはよう亜香里! 大事な話がある、ちょっと屋上に来てくれ。」


いつもと違って岳の対応が素っ気ない。


屋上に出ると岳はまくしたてる様に話し始めた。

「亜香里、まずは退院おめでとう。・・・それからなんとなく感じていると思うが俺は岳じゃ無い。俺は武だ。岳が亜香里を想って身体を悪魔の俺に提供してくれたんだ。」


「えッ、岳じゃ無い? 悪魔ってどういう事?」


「亜香里が夏休み最終日に岳のナイロン糸みたいなものを抜いただろう?それは”死神の翼”と呼ばれているものだ。それが抜けると身近な人が死を迎える。岳は君が死ぬと思ったんだろう。君がと懇願して、身体を悪魔に提供する契約を結んだんだ。」


「えっ? それじゃあなたは・・・?」


「俺は悪魔の武。岳の双子の兄で生まれて7日で死んだ。岳はバカだな。亜香里はまだ寿命の順番が来ていないから今回は死ななかったのに・・・」


「それって どうゆう事?」


「悪魔は死神と親しい関係にある。死のニオイはなんとなく分かるものだ。今回死ぬのは亜香里のお父さんだ。コレは最初から決まっていた。フフフ、岳はそんな事も分からず身体を悪魔に渡したんだ。」


「えッ・・・ そんな・・・ 私のお父さんが亡くなる?」


「あぁ あと2~3日で亡くなるだろう。今のうちに思い出づくりでもしておくんだな!」


「ウッ・・・ 私は一度に岳とお父さんを失うの?」


「あと、岳からメッセージを預かってるから渡しておく。」


「えッ 岳からのメッセージって・・・」

私は武からメッセージを受け取ると読み始めた。

~~~~~~~~~~

亜香里、この手紙を無事に読んでくれ。

亜香里に"死神の翼"の事を話せなくて悪かった。

俺は自分が死神なんじゃないかと悩んでいた。

亜香里が俺を恐怖し離れて行くのが怖かったんだ。

俺の我儘の為に結局、亜香里を危険なめにあわせてしまった。

ゴメン。

目の前に居る岳は悪魔の武だ。

悪魔との契約で"亜香里に関わるな"と条件をつけた。

もし、関わるなら契約違反を告げればいい。

心配するな、これからも亜香里は安全だ。

亜香里の事、一生護るって言ってたのにこんな事になってしまった。

ゴメン。

亜香里、どうか俺の事は忘れて幸せになってくれ。

亜香里の幸せが俺の幸せだ。

~~~~~~~~~~


私は手紙が涙で滲んで読めなくなった。


岳はまだ死んだわけじゃない!

ちょっとだけ離れ離れになるだけだ。

"例え何年かかろうが絶対に取り戻してやる。''

岳の手紙を握りしめて心に誓った。

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堕天使と悪魔 アオヤ @aoyashou

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