前夜

星彩 涼

前夜

 明日は共通テスト。昼を過ぎた頃からその意識が意図せず強くなる。それは目の前のTVの奥でキャスターが、

 「明日は全国的に雪が朝から降る確率が高いです。明日に控えた共通テストを受ける受験生の方達は注意して頑張ってください。」

 と言ってるのを聞いているせいかもしれない。三が日を終えた頃から急にあちこちのメディアで共通テストが話題になっていた。愉快な祭りが始まるかのような雰囲気でTVマンやインフルエンサーが受験生を激励しているのは個人的にあまりいい気しなかったが、世間的には受験とはそういうものなのだろうと気にしないようにしていた。


 感染症の新株流行の煽りを受けて学校は二日前からオンラインとなっていた。私は、SNSで友達と繋がることでとうにか不安を打ち消していた。明日の準備を進めていけばいくほどに共通テストが現実味を帯びていった。とはいえ、焦りはなかった。今さら焦ってもしょうがない、なるようにしかならない。という一種の諦観があったせいだと思う。また、この一年勉強してきた事が全てだと感じていた。直前のクリスマス模試が自信にもなっていた。その模試のおかげでより落ち着いて今日まで過ごしてこれた。


 日が落ちきった時には不思議な感覚を覚えていた。この感覚は空手の組手が始まる直前に感じていたものと同じだった。それは、緊張ともワクワクとした期待ともとれる一種の興奮状態であった。体の芯から電気が全身を巡るような。体が軽くなって、全ての神経が逆立つような。そんな感覚だ。これは、どんな結果になってもとにかく楽しむ事だけを考えている証拠でもあった。


 大きく深呼吸し、ベッドに就き、明日への英気を養う前夜--

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前夜 星彩 涼 @ochappa

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