第69話 聖者の困惑

「ほう、キサマが聖者ですか……。行く先々で、ずいぶんと我ら魔王軍の邪魔をしてくれているようで……」


 魔王軍四天王のひとり【不死身イモータル】の二つ名を持つ【コシチェイ】が、ニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべている。

 それは、他者を見下す醜悪な笑顔だ。


「別に嫌がらせをしようなんて思ってもいませんよ。私に邪魔をされたと思っているのなら、所詮はその程度の実力しかないんでしょうね」

「なんだと?」

「魔王軍などど騒いでいるようですが、完全に名前負けしてますね」

「キサマぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


 そこまで喧嘩早い性格ではないと思っていたのだが、ついつい煽りの言葉が出てしまう。

 コイツを前にしたとたん、言い様のない嫌悪感が身体を走ったのが原因なのだが、あまり長兄あにのことを悪く言えないなと反省する。


 すると、コシチェイは怒りに身を任せて、私に向かって襲いかかって来たのだった。


 おやおや、ずいぶんと堪え性がない男だ。

 そんなに怒っていると、ほら。

 隙が生まれてしまうではないか。


 両手を振り回し、泣いた駄々っ子のように近づいて来るコシチェイの心臓目掛けて、私は手刀を叩き込む。

 手応えあり。


 魔力で覆って強化した私の手刀は、下手な剣よりも強い。

 私の右腕がコシチェイの胸に深々と突き刺さっている。


 この程度の相手か。


 私は四天王と名乗る男の無様さに、そっとため息をつく。

 確かに当たれば少なからずダメージは受けることだろう。

 だが、いかんせんその攻撃は稚拙すぎた。

 技も計略もなく、ただ本能のままに仕掛けてくるなど獣も変わらないではないか。


 そんなことを考えた私であったが、その直後におかしなことに気づく。


 …………どうして立っていられる?


 私の手刀を間違いなくコシチェイの胸を貫いた。

 本来ならば、心臓を貫かれた相手は全身に血液が回らず、すぐに力なく崩れ落ちるはず。


 なのに、


 嫌な予感を感じた私が、コシチェイの胸から腕を引き抜き後方へ下がる。

 と、同時に私のいた場所にコシチェイの大きな腕が振り下ろされる。


 勢い余って地面をしたたか殴り付けたコシチェイの拳が、轟音とともに大地を揺らす。


「ホッホッホッホ。命拾いしましたねぇ。ネズミのようにプチッと潰してやろうと思ったのですがねぇ~」

「死霊系か……、傀儡系ってところですかね?」


 自ら【不死身イモータル】を称しているところから考えて、死を超越する何かがあるのか。

 私が主要な臓器を破壊しても死なない可能性について考えていると、コシチェイはその秘密についてワザワザ明かす。


「いえいえ、私はそんなどこにでもいるような存在ではありませんよ。特別に教えて差し上げましょう。私の能力は『超回復』。つまり、いくら傷をつけられようともすぐに回復してしまうのです」


 コシチェイは嗜虐的に口元を歪ませると、高らかに宣言する。


「さあ、続きと行きましょうか。不死身の私とただの人間のアナタ。先に力尽きるのはどちらでしょうか?」


 こうして、私とコシチェイの死闘が始まった。

 治癒魔術師として回復を担う私が、超回復者と戦うことになるとは。


「やれやれ、何の冗談だ……」


 そう呟いた私は、気持ちを切り替えて戦いに臨むのであった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


久々の更新。

続きも早く投稿しますね。


ゴールデンウィーク中に何とか決着をつけたいですね。





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