PROMISE

 神はマムレのテレビンの木の傍らでアブラハムに現れた。

 それは昼の暑い日だった。アブラハムは天幕テントの入口で座っていたが、頭を上げて見ると、3人の人がアブラハムの前に立っていた。


「( ゚д゚)ハッ!……あーすみません。寝てた訳じゃ無いっすよ? いやはやいやはや、すぐに水を取ってこさせますから、足を洗って木の下でお休みになられてください!

 私は一口のパンを取ってきますから、食べて元気付けてからお出かけになって下さい。せっかく来てくれたんですからぁ。ねぇ?」


「えぇ、お願いします」


「サラ! 今すぐ麦粉でパンを作りなさい! 神様がおいでになったぞ!」


 さらにアブラハムは子牛を取って、擬乳と牛乳を調理したものを彼らにの前に供えた。


「あーそうそう、サラは今どこにいますか?」


「天幕の中におられます」


 すると3人の内の1人がサラに言った。


「来年の春、私は必ず此処に帰ってくる。その時にはサラに男の子が生まれているでしょう」


 しかし、アブラハムもサラも歳を取っており、サラに関しては既に女の月も止まっている。普通に考えても子を産めるような体では無い。

 それでサラは心の中で笑って言った。


「私は衰え、主人はもう老人です。こんな私に今後楽しみなんてありえますか?」


「……アブラハム? サラは何を笑っているのですか? 神に不可能などあり得ません。来年の春、私は此処に帰ってきてサラは男の子を生んでいるのです。

 私がなにか間違ったことでも?」


「え……いえ! 私は笑っていません」


「いや、あなたは確かに笑いました」


 そういうとそこの人々はソドムの方へ向かったので、アブラハムはそれを見送るためについて行った。


 時に神は言った。


「あーうん。今、私がしようとしていることをアブラハムに隠してもいいかな?

 彼はどうせ必ず大きな強い国民になって、地の全ての民は彼によって祝福を受けるんだから。

 私は彼が後の子と家族らに神の道を守ることを命じ、正義と公道を行わせるために彼を知ったんだ。

 これは神がアブラハムについて言ったことを彼の上に臨ませるためなんだよな。


 それと、ソドムとゴモラはほんとにやべえ奴らだから今から行って良い奴と悪い奴を見極める必要がある」


 人々を見送っていたアブラハムは既に戻っており、神の話を聞いていた。


「いやいや、ちょっと待ってくださいよ神様。まさか本当に正しい者と悪い者を一緒に滅ぼされるんですかい?

 例えばそこに50人の正しい者がいたとします。それでも許されないと言うんですか?

 あなたは決して正しい者と悪い者を一緒に滅ぼされることはしないでしょう。全地を裁く者は公義を行なうべきではありませんか?」


「何を言われているのですか? アブラハム。勿論、正しい者が50人いたら、それら全てを許そう」


 アブラハムは続けて質問する。


「私たちはそこら塵に過ぎない存在ですが、あえて聞きます。

 もしその50人から5人が欠けたなら、そんな5人のために全てを滅ぼすおつもりですか?」


「もしそこに45人いたら、滅ぼさないだろう」


 アブラハム更に質問する。


「ならもしそこに40人いたら?」


「同じく40人いても滅ぼさない」


「なら30人でも?」


「30人でも滅ぼさない」


「しつこいですが20人なら?」


「20人いたならそれでも滅ぼさない」


「ならならなら、どうか怒らないでください。もう一度聞きます。そこに10人いたなら?」


「10人でも滅ぼさない」


「あぁ……そうですか……なるほど」


 アブラハムは神と語り合えると天幕の中へ戻っていった。

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次回、『LUT』

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現代的過ぎるキリストの叙事詩 Leiren Storathijs @LeirenStorathijs

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