猫の王の

HUDi

第1話

・猫の王の姿をした神が、隕石を降らせる。隕石は王の頭上でばらばらになって小さな魔晶石の粒となり地上に降り注ぐ。その中から、制限時間以内に正しいものを探し出さないと、街は崩れ落ち人々は死んでしまう。私は子供だ。

・街で暮らしているのは肌の汚れた、戦争から逃亡げてきた人々である。天井だけ幕を張ったテントの下で、道の脇でひっそりと、震えながら、大きな目でこちらを見ている。

・電車の中で、隣の軍装の男が話しかけてくる。この男は包帯でぐるぐる巻きにされた手先を見せてくる。猫の手のようだ。

・ちょっとしたジャングルにある洞窟に入る。すると、男がいる。男は真実を話せと迫ってくる。私が話さないと言うと、男は毒をけしかけて私を殺す。だが、話しても殺されるのは一目瞭然だ。逃げれば、蛇のような鞭のようなものをけしかけられて死ぬ。一体どうすればよいのか。

・男がとあることを教えてくれた。猫目の石。密林の儀式。何かに怯えているように、銃をこちらに構えている。


・男は、昔の親友だった。

・街はレンガ張りのダウンタウン。秋らしく枯葉が多い。家がそのまま空っぽになってしまったかのような廃墟に、古い本の詰まった本棚。家の床にまでレンガが続いている。凹凸の多い街だ。風が涼しい。

・黒いシルクハットに燕尾服の、三白眼の男が現れた。ジャングルでのことについて、また私の身の回りのことについて、何か知っている様子だ。そして、彼は女だ。猫のような奴だ。

・子供たちの秘密基地。高層ビルの、貸し切りのオフィス。シャワーと冷蔵庫とWi-Fi付。金持ちの友達が貸してくれた。今でも、大人になっても使っている。

・我が家の別荘は、母が日本系なので、どことなく和風の、木造の家である。たまに親せきや友人と集まってパーティをする。近くにきれいな小川が流れており、家の中には仏壇がある。

・別荘にて、ある女性と目が合った。彼女は何の反応も示さなかった。

・オフィスに続く扉を開けると、小汚いひげを生やした男がいた。男は恐怖にとらわれていた。俺だ。

・「猫目の石」

隕石の粒は淡紫色で、表面には様々な黒い模様が描かれている。私は数々のヒントを元に、鍵を差し込める穴のような細長い紡錘形の描いてある一つを探した。これだ、と手を伸ばそうとするが、自信はない。かまわない。しかし、また全て失ったらー―――。

猫の王が、足先で4つの小石を示した。「これじゃよ」石が金色に輝く。猫の王は、俺が答えに気づいているのを判って、あえて答えを明かしたのだ。燃えるような悔しさと怒りに、笑った。


・彼女の胸に、淡紫色のペンダントがかかっていた。彼女は、先に未来に帰ってしまった。

・ネットゲームの画面、格上の相手チームに、自慢の第2チームだけが勝ち続けている。しかし作りかけのようなゲームだ。

・そよそよと、空っぽのダウンタウンに風が吹く。小春日和の陽光が射す。そっと散る紅葉と、輝く金色のブロンド。白いワンピース。

・キャアアアという女のような悲鳴を上げ、2人の親友が白い煙霧の下へ落ちてゆく。僕は猫の王を見上げた。王が微笑んだように見えた瞬間、僕も一緒に落ちてゆく。隕石による破壊が、刹那の時間の後に街にゆっくりと降り注いでゆく。街にはぽっかりと黒い穴が開いた。僕の心のように。

・「ぶっ殺してやる!」

・「ホッホッホ!落ちてくるぞ、落ちてくるぞ、わしの大事な宝物が!」猫の頭上で、暮れ泥む空がぎらりと輝く。粒。魂の粒。

・制限時間が切れた。猫の王の姿は消え、ダウンタウンは煙に満ちた。地面がどこだかわからない。廃墟だと思った図書館が、鈍い金色の光を放っている。白灰色と金色と、レンガと落ち葉の赤褐色の中で、橋はゆっくり落ちてゆく。

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猫の王の HUDi @HUDi

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