ちーちゃんの夏

綿引つぐみ

ちーちゃんの夏

ぼくが知っている妄想のうちのひとつが夏を

夏ばかりを幾つも過ごして

たとえばだから幼馴染みのちーちゃんの、庭の隅っこでおしっこしてるのをじーっと見てたり、一緒にせまっくるしいお風呂にぷよぷよと浸かったり、ふしぎな匂いのするちーちゃんのベッドに泊まったり、泳いだり、走ったり、黒とピンクのランドセルはいつもいつも隣同士で、夏服のセーラーはまぶしくて、ちーちゃんに宇宙怪獣のコスを着せたり、包帯でぐるぐる巻きにしたり、されたり、そしたらいつの間にか二人は同じ家に住んでて、やがて赤ちゃんが生まれて、

そしてその頃に初めて気づく

ぼくの妄想なのに

ぼくが勝手につくったのに

ちーちゃん

きみはいつでものほほんって笑ってた

妄想は幾つもの夏を過ごして

今朝は鉢植えのアサガオに降る雨としてある

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ちーちゃんの夏 綿引つぐみ @nami

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