『さんにん』

やましん(テンパー)

『さんにん』


 しばらく、ぼくたちは、別々に考え込んでおりました。



やましんC


 『きみ、なんで、病院にいるの?』



やましんオリジナル


 『ステントから、菌が入って、腎臓から高熱を出した。まあ、もう、大丈夫だとは思う。』


やましんC


 『ここに、いるつもりかい?』



やましんオリジナル

 『利点はある。売店には、長持ちしそうな食糧がある。頑丈だろう。ただ、病院のなかも、非常電源だろうから、長くは持たないなあ。たぶんね。切れたら、まっくら。びびび。ビビッド。終了。』


  

やましんC


『あのさ、ふと、思ったんだけど、あの、迷走探偵は、死なないだろ。もともと、宇宙妖怪だし。ぼくらが、消えなかったのにも、なにか理由があるんだろうし。行ってみようよ。』



やましんオリジナル


 『Bも、生きてると?』



やましんC


 『そうそう。それもある。あいつ、あのレトロ・マンションに住み着いてるんだろ?』



やましんオリジナル


 『そういや、そうだね。じゃ、行ってみるか。しかし、ここからは遠いし、歩くと体に毒だぜ。』



やましんC


 『なに、四時間あれば、行けるさ。』




やましんオリジナル


 『病み上がりだし、自信はないが、一人でいるのは、心細いな。わかった。行こう。』


 やましんオリジナルは、病室の、大切な荷物だけをまとめました。


 売店で、飲み物と、いくらかの食糧を現金払いにしました。


 まあ、レジに置いていっただけたけれど。


 こうして、ふたりは、妖怪探偵『ダジャレー』の事務所に向かったのであります。


 

     ●●●●●●●●●●



 道路は、放置された自動車で固められていたのです。


 これでは、歩くしかないです。


 ふたりは、あたりを気にしながら歩きました。


 しかし、生き物の姿は、まったくない。


 からす一羽、はと一羽、にゃんひとにゃん、姿がありません。



やましんオリジナル


 『まるで、放棄された《死の都》だなあ。』



やましんC


 『しかし、建物には、またく、傷ひとつないな。爆弾とかではない。爆弾では、ああいうふうには、人は消えないし。』



やましんオリジナル


 『あんたも、見たんだ。』



やましんC


 『うん。』


 

 ふたりは、メイン道路を、ひたすら歩いたのです。


 だいたい、病院からは、8キロメートルくらいだから、昔の人なら、あと少し、の範疇になります。


 ふたりは、午後4時をかなり過ぎて、ダジャレーのマンションに到着しました。


 マンションと言っても、昔のアパートでありまする。


 だから、玄関ホールには、別に、特別な施錠はしていません。


 エレベーターも、ないです。


 ふたりは、階段を上がり、かの迷探偵の事務所の前に立ちました。



 『押すよ。』


 やましんCが言い、インターホンのボタンを押したのです。


 これは、電池駆動なので、鳴りました。


 返事が来ません。


 さらに、しつこく、押しました。



 『ばかやろう。だれだ?』



 ダジャレーの声です。


 『お友達のやましんですよ。』


 『やま………疫病神のやましんか。まて、よし。特別に、開けてやる。』


 

 こうして、明らかに生きている二人と、宇宙妖怪だが、知的生命体の、あわせて、さんにん、揃ったのです。



        🏚️  


 

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『さんにん』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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