第103話 行方


 俺は前世で殺された。

 大した力もないのに自分の言いたいことを全部言ってたら、敵ばかりになって最後は殺されたんだよ。

 だけど殺されたことは悔しいけど、俺は自分のやったことを後悔してないからな。


 この世界で魔王アレクに転生して、俺は力を手に入れた。大抵の奴には絶対に負けないだけの力だ。

 せっかく手に入れた力だから、俺は自分のやりたいことに使うつもりだ。だけど俺の考えの根本的なところを変えるつもりはないからな。


 俺は自分の言いたいことアレックスたちに言う。だけど力づくで従わせようだなんて思わない。

 そんなことをしたら、俺を殺した奴らと同じだからな。


 ケイリヒトが俺を睨んでる。まるで全身から噴き上がる怒りが見えるようだな。

 だけどレヴィンが空気を読まないで、突然笑い声を上げだ。


「アハハハ……アレク、あんたは面白い男だね。そこまで開き直られると笑うしかないよ」


「レヴィン、ふざけないで! こんな風に好き勝手に言われて……私はアレクを絶対に許さないから!」


 怒りを噴き上げるケイリヒトをレヴィンは嘲笑う。


「ケイリヒト。あんたがアレクを許さないなら、あたしはアレクに味方するよ。アレクに残って貰ったのはあたしだからね」


「レヴィン……」


 ケイリヒトの怒りの矛先がレヴィンに変わる。

 だけどレヴィンはケイリヒトを無視して、俺に向き直る。


「アレク、1つだけ教えてくれないか。あんたがアレックスとトライアンフに加担するのは、どういう狙いがあるんだい?」


 おい、レヴィン。何を言ってるんだよ。


「そんなの決まってるだろ。俺は馬鹿正直なアレックスと、脳筋だけど良い奴のトライアンフが気に入ってるんだよ」


 縦長の動向の瞳を

真っすぐに見て、俺は正直に応える。


「本当に……それだけかい?」


 レヴィンが目を細める。俺を見極めようとしてるな。


「ああ。他に何があるんだよ。レヴィンは俺の知りたいことを知ってるだろうから協力して欲しいけど。今回のことは全然関係ないからな。

 俺はアレックスとトライアンフのことをどうにかしたいと思っただけだ

。レヴィンに来て貰ったのは2人のためだよ」


「今回のことであたしにメリットがあっても、交渉材料に使わないってことかい?」


「ああ。レヴィンのためにやった訳じゃないからな。あんたが知ってることについては、改めて交渉させて貰うよ」


 レヴィンは面白がるように笑う。


「なるほどね……アレク。あたしはあんたが気に入ったよ」


 俺のどこが気に入ったのか解らないけど。納得してくれたみたいだら構わないか。

 ケイリヒトの方はレヴィンに無視されて、怒りが収まらないみたいだけどな。


「ケイリヒト……アレクを悪く言うのは止めてくれ。アレクは俺たちのために言ってくれたんだ。まあ、言い方に多少問題があるがな」


「ああ、全くだぜ。俺のことを脳筋だとか、ふざけるんじゃねえぞ。だけどよ……アレクが本気だってことは、ケイリヒトにも解るだろう」


 アレックスとトライアンフが2人掛かりで説得しても、ケイリヒトは納得しなかった。


「アレックスもトライアンフもアレクに騙されてるのよ! こんな無茶苦茶なことを言う奴を信用するなんて、貴方たちは本当に馬鹿じゃないの!」


「ああ、ケイリヒト……俺は自分が馬鹿だって今さらながら気づいた。おまえの気持ちも考えないで全部自分の責任だとか……俺は思い上がっていたんだな。ケイリヒト、すまない!」


 突然頭を下げられて、ケイリヒトは一瞬唖然としたけど。


「そんなの……ズルいわよ。なんで……アレックスが謝るのよ……」


 ケイリヒトの瞳から大粒の涙が溢れ出す。鬼の目にも涙だなと思ってしまったことは内緒だ。


「ケイリヒト……」


 アレックスがケイリヒトを抱き締める。

 ケイリヒトはアレックスの胸に顔を埋めて。


「アレックスは……本当に馬鹿なんだから……」


「ああ。ケイリヒト、すまない。そして……ありがとう」


 抱き合う2人の傍でトライアンフが苦笑してる。


「なあ、アレク。話はついたみたいだからよ。これから飲みに行こうぜ」


「おい、トライアンフ。また飲みに行くのかよ……まあ、別に良いけどさ」


「だったら、あたしも一緒に行くよ」


 レヴィンが俺の肩を抱いてニヤリと笑う。


「トライアンフは蟒蛇うわばみだから酒なら何でも良いだろうけど。あたしが本当に美味い酒を飲ませてやるよ」


 いや、その恰好で密着されると……色々と不味いんだけど。


『アレク様……僕がその露出狂を殺して良いですよね?』


『私がその獣臭い女を殺したいのですが……駄目でしょうか?』


 おい。なんでサターニャまでいるんだよ。まあ、『闇の魔神の大迷宮』の方は問題ないって解ってるけどさ。


『エリザベス、サターニャ。絶対に駄目だからな』


 あいつらは俺の苦労を無駄にするつもりかよ。

 それにしてもさ。また面倒な奴と知り合いになったな。


――――――――――――

ここまで読んで頂いてありがとうございました。

自分としては一区切りつきまして続きを書くか未定のため、完結設定にさせて頂きます。

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RPGのラスボスに転生したけど、倒されたくないから。裏技を使って限界までレベルアップしまくってみた。 岡村豊蔵『恋愛魔法学院』2巻10月30日 @okamura-toyozou

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