死して尚、君の幸せを願う

わだち

死して尚、君の幸せを願う

「せ、成功した……?」


 六畳一間のワンルームの部屋の中心で、一人の女性が降霊の儀式をしていた。

 部屋の中央には白い紙があり、その上には不可思議な紋様が描かれている。

 本来、その場には恐ろしく強い、化け物のような霊が召喚されるはずであった。だが、そこに召喚された霊は特別な力を持たない一人の少年の霊だった。


「あれ? 神月さん? てか、ここどこ?」

「な、なんであなたが……?」



********



 高校の入学式の日、新たな出会いに心膨らませている日に、同じクラスにびっくりするほど綺麗な女子がいたとしよう。そして、その女子とたまたま隣の席になったとする。

 高校生活の初日だ。テンションは勿論上がっている。


 それだけの条件が揃っていたら、その女子に話しかけたくなるのは当然じゃなかろうか。

 勘違いしてほしくないのだが、恋人になりたいなんてことは考えていない。いや、少しは考えているかもしれない。

 それ以上に、同じクラスだし、少しくらい仲良くなりたいというだけだ。


 そう、下心なんてほんの少ししかなかった。


「俺さ、真田零士! よろしく!」

「……興味ないので話しかけないでください」


 これが、俺こと真田零士と後に闇の魔女と呼ばれる神月ヤミとの初対面であった。


*****



「おはよう! 神月! 今日はいい天気だな!」

「今日は曇りですけど、あなたの目は節穴なんですか?」

「おっと、こいつは一本取られちまったぜ!」


 朝礼前、いつもの様に神月に挨拶したが、今日も神月は辛辣な態度だった。

 だが、天気を間違えるという俺の渾身のボケにはきっちりツッコミを入れてもらえたぜ。

 これは仲良しと言わざるを得ない。


「はぁ……」


 神月とやり取りが出来たことに頬を緩ませていると、神月は見せつけるようにため息をついてから、机の中から本を取り出し、本の世界に入っていった。

 こうなると、朝のトークタイムは終了だ。

 以前、読書中に話しかけたら、永遠に無視され続けたのは悲しい思い出である。


 仕方ないので、俺も席を立ちトイレに向かう。すると、そんな俺の下に逆立つ前髪が特徴的な茶髪の男がやって来た。


「お前、闇の令嬢によく話しかけるよな」


 こいつの名前は三浦光星。身長180センチメートルで、バスケ部のエースにして、学力は県内でも上位。その上、イケメンというハイスペック男子だ。

 何よりも恐ろしいのが、その男らしさ。抜群のカリスマ性を持っており、女性男子共に高い支持を得ている。

 

 その三浦がいう闇の令嬢とは、神月の呼び名である。黒く艶やかな髪と、ピクリとも動かない無表情に闇を感じるという声が集まり、そう呼ぶ人が増えた。


「そんなに凄いことか? 同じ高校生だぜ?」

「いやいや、普通はあそこまで冷たくされて話しかけようとは思えないっつーの。そもそも、神月さんが誰かと仲良さげに話してるところを誰も見たことが無いんだぜ? それに、言っちゃ悪いが、感じ悪いし、クラス内でも浮いてるじゃねーか。最初こそ可愛いから、話しかける奴もいたけど、一年も経てば全員あの子は無理だって気付くだろ」

「それ、遠回しに俺が未だに無謀な挑戦をしているバカだって言ってないか?」

「違うのか?」

「ちげーよ! 俺はな、神月の友達を目指しているんだ」


 そう、神月には友達がいない。いや、いるかもしれないが、少なくともこの校内にはそれらしき人がいない。

 あからさまに人を避けている。他でもない神月がそれを望んでいるのだろうが、俺はその意志に反するように神月に毎日話しかけている。

 気付けば一年経っており、学年内でも神月に唯一話しかける勇者として名が広まっているらしい。


「なんでそこまでするんだよ」

「なんで……? なんでかぁ……。なんでだろ?」

「分かんねーのかよ」


 俺の返答を聞いた三浦がバカを見るような目を向けてくる。

 そうは言われても、実際によく分からない。

 だが、不思議と神月を見ると話したい、この人の笑顔を見たいと思ってしまうのだ。

 そうだな。仮にこの感情に名を付けるなら……。


「きっと、愛ってやつさ」

「あー、はいはい。ロマンチックで素敵だねー」

「ちょ、お前雑すぎない? 割とかっこいいこと言ったつもりなんだが」

「そういうところだよ。お前のその変にかっこつけるところが無かったら、お前にも今頃彼女が出来てただろうに。たまに女の子に聞かれるんだぜ。零士君ってどんな人って」

「え? まじで? じゃあ、なんで俺に告白する人がいないんだ?」

「お前が神月にぞっこんだと思ってる人が半分、残りはお前のかっこつけるところがウザイらしい」

「嘘だろ!? こんなにかっこいいのに!?」

「自分で言うな」


 呆然とする俺の顔を見た、三浦はため息を一つついてから蛇口の水を止め、ハンカチで手を拭き始める。


「まあ、俺はお前の馬鹿みたいなところ、嫌いじゃないけどな」


 そう言って、二ッとした笑みを浮かべると、トイレを後にした。

 

 か、かっけえ……。

 流石は運動神経抜群、頭脳明晰、付き合いたい男子ランキングぶっちぎり一位の三浦だ。

 やはり笑顔か。

 俺も三浦の様に、さりげない笑顔を練習しよう。


 鏡の前で口角を上げ、歯が見えるような笑顔を浮かべる。

 鏡には「ニタァ」という効果音がよく似合う嫌らしい笑みが浮かび上がっていた。

 ……ふむ。まあ、人が変わればものの見方も変わるっていうしな。

 もしかすると、この笑顔が他の人には爽やかイケメンスマイルに見えるかもしれない。

 いや、そうに違いない。

 今日の放課後にでも、神月に見せてやろう。


 決心を固め、意気揚々と俺は教室へと戻った。



*********



 放課後を告げるチャイムが鳴り、次々と生徒たちが教室を後にする。

 それは俺の隣の席にいる神月も例外ではなく、早々に鞄に荷物を詰めていた。

 そんな神月を眺めながら、俺は朝の練習の成果を見せる機会をうかがっていた。

 笑顔を見せるにしても、タイミングというものがある。

 例えばだが、「ほら、これ見ろよ。コンビニで買ったアイス、当たったぜ」と言ってニッと笑われてもときめく人はいないだろう。

 つまり、ここぞという場面で渾身の一言と共に笑顔をみせることで、笑顔の効果は爆発的に上昇するのである。


 今か、今かと機会を伺っていると、遂に神月が席を立った。

 今だ!


「ちょっ、待てよ!」


 神月が俺の席の後ろを通過した瞬間に、神月を呼び止める。

 俺の背後には窓があり、そこから夕陽が差し込んでいる。神月から見れば、夕陽をバックに真剣な表情の男が自分を見つめているという、それだけで胸がドキドキするような状況のはずだ。


「何でしょうか?」


 無視されるかと思ったが、神月は足を止めて、こちらを振り向く。いつもの無表情だった。

 唐突に起きた教室内の出来事に、残っていた生徒たちも固唾をのんでこちらを見守っている。

 

 見てろよ神月。今から、皆の前でその顔真っ赤に染めてやっからよ!


「神月って、可愛いな」


 歯をむき出しにし、口角を吊り上げる。

 余りに完璧な笑顔。


「うわぁ」

「やば……」


 教室に残っている生徒たちも、俺のかっこよさに圧倒されているようだ。

 これには、神月も「そ、そんな可愛いなんて……! 恥ずかしいよぉ」と照れながらも嬉しそうに笑っているはず……!


 だが、神月はジト目で俺を睨みつけていた。


 あれれぇ? なんでぇ?


「……キモ」

「グハァ!!」


 神月がぼそりと呟いた一言が俺の胸に突き刺さる。余りの破壊力に、耐え切れず床に膝をつく。

 そんな俺に蔑むような視線を向けた後、神月はサッと身を翻し、教室を後にした。


 その後ろ姿を見つめながら、俺は静かに敗北を認め、瞳を閉じた。



*********



 敗北が己を強くする。

 その言葉を胸に刻み、我が家で笑顔の練習をした翌日、晴れやかな空の下、今日も元気に登校する。

 教室に着くと、既に神月は席について本を読んでいた。


「神月、おはよう! 今日はいい天気だな!」

「……そうですね」


 神月はチラリとこちらを一瞥した後、そう呟いた。


 おお!! 読書中にも関わらず返事を返してくれた! これは、かなり距離が縮まったと言えるのではなかろうか。


 ニヨニヨと頬を緩ませながら、神月の方を見ていると、唐突に神月が本を閉じ、こちらを見てくる。

 交差する視線。神月の無機質な瞳が俺を真っすぐ見つめる。暫くの間、沈黙が二人の間を流れていたが、神月が遂に口を開いた。


「今日の放課後、屋上に来てください」


 ……え?

 今なんて言った? 俺の聞き間違えじゃなければ、放課後屋上に来てくれって言ってたような気がするんだが……。


 呆然としていると、神月の表情が険しくなっていく。


「……普段、あれほど話しかけてくるくせに私が話しかけたら無視ですか?」

「あ、わ、悪い! 放課後に屋上だな! 何があっても絶対に行くぜ!!」

「そうですか。それでは、お願いします」


 俺の返事を聞くと、神月はいつものような感情の色を感じさせない無表情に変わり、再び本の世界へと入り込んでいった。


 それとは対照的に、俺は神月に初めての誘いを受けたことでテンションが上がり、その日は一日中頬を緩ませて過ごした。

 体育でバレーボールをしていて、足元のボールに気付かずに思いっきりこけ、おまけに顔面にスパイクをまともに受けてもなお笑顔という姿に、俺のクラスメイトは皆ドン引きしていた。


 だが、それくらい神月からの誘いというのは俺にとって、否、この学園において快挙であり、祝福するべきことだった。


 そして、とうとう放課後がやって来る。

 神月を待たせるわけにはいかないと、礼をした直後に教室を飛び出す。階段を一段飛ばしで駆け上がり、屋上の扉を開ける。

 当然ながら、神月はまだ来ていなかった。

 屋上から青空を見上げながら、神月に思いを馳せる。


 どんな話だろうか?

 友達になってくださいとかかな? いや、今度遊びに行こうととかかもしれない。

 もしかすると、こ、告白とか!?

 いやー! 神月、流石にそれは早すぎるよ! だって、俺まだ高校生だし? そりゃ、神月に「私を幸せにして」って言われたら、二つ返事で答えるけどさ、やっぱり段階ってものがあるんじゃないかなぁ?


「何を一人でブツブツ呟いているんですか? 不気味なので止めた方がいいですよ?」

「うお!? 神月、いつの間に!?」


 俺がウキウキで神月との未来を夢見ていると、いつの間にやら神月が屋上に来ていた。

 慌てて、襟を正し神月と向かい合う。


「やあ、神月。話って何だ?」

「そうですね。長く会話するつもりもありませんし、手短に済ませましょう」


 その言葉と供に神月の無機質で光の無い目が俺の姿を捉える。そして、神月は一切の躊躇いなく口を開いた。


「はっきり言って、私に関わられるのは迷惑です。二度と私に近づかないでください」


 冬の凍えるような風が屋上を吹き抜ける。

 一瞬、何を言われたのか理解できなかった。


「……え?」

「それでは、私はこれで」


 サッと身を翻す神月の姿を見てから、漸く自分が拒否されたのだと理解した。

 徐々に離れていく神月の背中に手を伸ばしかけて、止める。

 今まで、俺は何だかんだ言ってはっきりと神月に近づくな、とか、関わるなと言われたことは無かった。

 

 だからこそ、これが冗談ではなく本気の神月の拒否なのだと理解できてしまった。


「……まじかー」


 神月が扉から出て行った後、腰に手を当て空を見上げる。

 さっきまで明るく輝いて見えた青空は、夕方なせいか暗くなっていた。




**********



 

「なんでかなぁ」


 沈みゆく太陽を眺めながら、自宅までの道を歩く。

 言葉を漏らすと、口から白い息が漏れ出す当たり冬真っ盛りと言ったところだろう。

 ふと、周りを見れば街にはイルミネーションが乱立し、仲睦まじい様子のカップルたちが歩いていた。

 その様子を見て、もしかすると俺と神月にもそんな未来があったのかもしれないと思いながらも、屋上での出来事を思い出して肩を落とす。


 だが、正直あの神月の言葉に対して気になるところはある。

 それは、何故今更になって言ってきたのかということだ。

 一年と八カ月。高一の春に出会ってから、俺が神月と関わって来た年月がそれだ。

 関わるなと言うチャンスはいくらでもあったはずなのだ。なのに、何故このタイミングなのか。


「……まあ、長く関わったからこそ嫌なところが出たのかもなぁ。はぁ」


 ため息をつき、空を見上げる。

 空にはどんよりとした色の雲がかかっていて、チラホラと白い雪が舞い降り始めていた。


 ふっ。別れの季節にはピッタリかもな……。


「キャアアア!!」


 そんなことを考えている時だった、突然、辺りが明るくなったかと思えば女性の悲鳴が耳に入る。

 悲鳴のした方に視線を向けると、そこには何やら叫んでいる人たちの姿があった。

 そして、直後に背中から強い衝撃を受け、俺は意識を失った。




*********



「遂に、この日が来ましたね」


 電灯が一切点いていない、六畳一間の狭いアパートの一室の中で蠟燭の火が怪しく揺らめく。

 部屋の中央にいる少女、神月ヤミは一度目を閉じて思い返す。


 幼いころ、神月ヤミは大切な家族を悪霊に殺された。


 霊に殺されるなどと馬鹿らしいと思う人が大勢いるだろう。だが、この世界には紛れもなく霊が存在している。

 その中でも、憎しみや恨みといった負の感情を持ち、現実世界にさえ干渉する力を持った霊たちを悪霊と呼ぶ。

 悪霊が存在するならば、当然悪霊を祓う人々も存在する。更には、悪霊を消滅させる人々もいる。

 そして、神月ヤミは悪霊を消滅させるための力を身に付けた。

 全ては大切な家族を殺した悪霊をこの世界から消すためだけのために。


 身体を鍛え、悪霊と戦う術を身に付けた。

 それでも、まだ神月ヤミが狙う悪霊は倒せない。だからこそ、神月ヤミが選んだのは降霊術と呼ばれる儀式だった。


 一部の地域では神降ろしとも呼ばれるその儀式は、人一人だけで到底成し得るものではない。

 だからこそ、神月ヤミは時間をかけた。

 正しい儀式の方法を学び、呼び出す霊を吟味し、その霊を呼び出すための媒体を探し回った。

 

 例えばの話だが、かの剣豪・宮本武蔵の霊を呼び出したいと考えるならば、彼と縁が深いものを集めればいい。

 骨などの身体の一部が望ましいが、宮本武蔵が生前使っていたものなども媒体としては利用できる。


 そして、神月ヤミが選択した霊は平将門だった。

 日本三大怨霊の一つに数えられるほどの怨霊だ。かつて関東でその猛威を振るっていた平将門の武力、死して首だけになって尚、闘争を求めたという逸話がヤミに平将門を選ばせた。

 霊、特に怨霊は自身の深い憎悪から生まれるとされるが、彼らの力をより強めるのは生きている人の思いである。

 菅原道真、平将門、崇徳天皇。この三人は今でも日本三大怨霊として語り継がれる上に、彼らを祀る神社や祠も多く存在する。

 彼らに対する恐怖が、彼らを神にまで押し上げたと言っていい。


 怨霊としての格は紛れもなく世界の中でもトップクラス。

 問題はヤミがその霊を扱いきれるかだが、それもヤミには勝算があった。


「準備は整いましたね」


 ヤミの目の前には、奇怪な紋様と漢字が描かれた和紙とその上に乗る、平将門ゆかりの地の土や石、木片、そして平将門の首を納めていたと言われる首桶が鎮座していた。

 そして、最後に髪を一本ヤミは取り出す。

 それは、とある男の髪だ。

 その男は、驚くべきことに平氏の末裔だった。ヤミにとって、それは幸運でもあった。

 平将門を呼ぶ媒体としてはやや弱いが、使えないことはないからだ。


 暫くの間、その男と関わった。

 常に笑顔を浮かべているいけ好かない男だというのがヤミの感想だった。

 ヤミにとって、人生とは復讐そのもの。

 幸せなどもう諦めている。

 だが、全ての準備が整うまでその男と関わり続けてしまった辺り、ヤミはその男との時間をそれなりに楽しんでいたのだろう。

 

 しかし、遂にそれも終わりを迎えた。

 ヤミは今日、平将門の霊を呼び出し、復讐を果たすその日まで終わりなき戦いに身を投じることになる。

 だからこそ、縁を切った。ついでに、その男の髪も切った。


「まあ、嫌いではありませんでしたよ」


 少し硬さのある男の黒髪を手にポツリと呟いてから、その髪を血の様に赤黒い色をした紙に包み込む。

 そして、それを蝋燭の火に当てる。

 火を当てられると紙は肉を焦がしたときのような独特の臭みを持った煙を上げる。

 煙が部屋の中に充満していく中、ヤミは言葉を紡ぐ。


「対価は我の全てと闘争。我の望みは復讐ただ一つ。汝、我の望みを聞き届けるならば、今こそ我が前に姿を現せ」


 空から一閃。

 遅れて雷鳴が鳴り響く。

 フッと蝋燭の火が不意に消えた。


 ヤミが僅かに目を見開く。今この瞬間、紛れもなく目の前に霊がいることをヤミは実感していた。


「せ、成功した……?」


 確認するかのようにヤミは呟いた。

 確かに、霊はいる。それはヤミのこれまでの経験上、確信を持って言えることだった。

 だが、これがあの平将門なのか?

 その疑問がヤミの脳裏をよぎる。


 強い霊とは存在するだけで、強烈な圧を感じさせる。有名な心霊スポットで寒気がするのは、その圧のせいだ。

 だが、目の前の霊からはそういった圧が一切感じられない。

 寒気どころか、霊体から滲み出るはずの負のオーラさえ欠片も感じない。近所の野良猫の霊の方が、まだ幾分か怨霊らしい憎しみや世界への不満を持っていた。

 ヤミが困惑していると、目の前の霊が遂に口を開く。


「あれ? 神月さん? てか、ここどこ?」

「な、なんであなたが……?」


 ヤミの目の前に現れたのは、今日の放課後縁を切ったはずの少年、真田零士の霊体だった。




***************



 人生とは何が起きるか分からないものだ。

 勇気を出して話しかけた女性に無視されることもあれば、関わらないでと拒絶されることもある。

 トラックに轢かれて死ぬこともあれば、幽霊となって現世に留まることもある。

 九尾の妖狐に出会うこともあれば、霊と化した名だたる強者たちの弟子になることもある。

 そして、同級生の女の子の使役霊となることもあるのだ。


「もうすぐ一年かぁ……」

「どうしたのですか?」

「いや、あの日からもう一年経つなと思ってな」

「ああ、そういえばそうですね」


 俺が死んだ日からもうすぐ一年となる冬のある日、今日も俺はフワフワと神月ヤミの周りを漂っていた。


 あの日、俺は神月ヤミが行った降霊術にて呼び出されたらしい。

 神月曰く、俺が呼び出されることは予想外だったらしく、最初は途轍もなく落胆の表情を見せられた。


「あの時は驚いたなぁ。しかも、どうすればいいか分からない俺に『どこにでも行ってください』って神月も辛辣だったもんな」

「仕方ないでしょう。あの時は私も焦っていたんです。それに、あなたのような霊力を一切感じない霊を引き連れたところで苦しい思いをさせるだけだと思っていましたしね」


 とある廃墟ビルの屋上、日が徐々に沈んでいっており、神月の吐く息は白い。


「まあ、そうだな」


 神月の言う通り、あの時の俺は何の役にも立たなかった。

 それでも、数多の霊と人の協力を経て、俺は今こうして神月の隣にいる。

 自身の家族を殺した悪霊をこの世から消す。それだけのために生きている神月ヤミという少女の協力者として。


 最初こそは冷たい態度だった神月もこの一年、多くの人と霊と関わる中で徐々に柔らかな笑みを浮かべるようになった。

 一年前、学校で「闇の令嬢」と言われていたのが信じられないほどだ。

 それでも、彼女が心の底から幸せそうに笑っているところを俺は見たことが無い。


 だから、俺は――――。


「……そろそろ行きましょう」


 身を翻し、夕陽に背を向けて神月が呟く。

 ここからは闇に生きるものの時間。人々の恐怖心を掻き立てるものたちが蠢きだす時間だ。

 そして、今日こそ神月の復讐が果たされる日でもある。


 夕陽に背を向け、屋上を後にする神月の黒い髪が静かに揺れる。その後を俺は静かに追いかけた。



**********



 満月が夜空に浮かぶ深夜。

 霧がかかるような山の中に神月と俺はいた。神月の家族を殺した悪霊は神月に執着している、神月はそう語っていた。

 そして、神月は今日の夜に復讐対象の霊が神月を狙うように撒き餌を仕込んでいたらしい。

 恐らく、数分もしない内に来る。神月はそう言っていた。


「ねえ」

「ん?」


 今か今かと気を張っていると、不意に神月が口を開く。


「あなたはどうして霊になったのですか?」


 いつだか、神月が言っていた。

 霊とはこの世への未練の塊のようなものだと。

 それ故に、霊となるものは必ず霊となった理由が存在する。だが、俺はその理由を一度も神月に語ったことは無い。

 神月に聞かれたことが無かったからだ。


「神月は運命って信じるか?」

「運命、ですか?」

「そう。自分はこのために生まれてきたんだ。そう自信をもって言える何かを見つけたことはあるか?」

「それでしたら、私の運命は復讐だったということになりそうですね」


 神月は自嘲気味にそう言った。


「ま、神月にとってはそうなのかもな」

「それで、その運命がどうかしたのですか? まさか、あなたにとっては霊となることが運命だったとでも?」

「まさか。ただ、霊になったことで理解した。単純な話さ。俺はたった一人の人間が幸せそうに笑うところが見たい」

「……それだけですか? それだけのためにあなたは霊になったと?」

「それだけってことは無いだろうよ。人が一人の人間を幸せにするってのはとんでもないことだぜ」

「……そうかもしれませんね」


 神月はそう言うと、空を見上げた。

 一際強い光を放つ満月が一つ。


「復讐が終わったら、あなたは消えてしまうのですか?」

「さあな」

「……あなたさえよければ、これから先もずっと――」


 その言葉の続きは突如強くなった木々のざわめきにかき消された。

 山中の鳥たちが一斉に飛び立つ。

 それと共に辺りの気温が一層下がったような気がした。


 そして、霧の中から一体の霊が現れる。


「…………ヒャヒ」


 二メートルを優に越す巨躯にグリグリとした真っ赤で大きな目。

 異常に長い手足と灰色のハッキリと目に映る身体。

 血のような色の口が三日月形に歪む。


 そして、その悪霊は神月の姿を見た途端奇声とも言える声で嗤いだす。


 常人であれば、奥歯をがたがたと震わし腰を抜かしてしまうほどの強大な霊力。

 それでも、神月は一切怯むことなく目の前の悪霊を睨みつけていた。


「黙れ」

「ヒャヒ……?」


 悪霊が僅かに動揺を見せたような気がした。

 恐怖も悲しみも喜びも、時に怒りは、憎しみは全ての感情を超える。そして、今の神月は正しくその状態だった。


「この時を待っていました。お前をこの世界から消す、この時を!!」


 次の瞬間、神月は悪霊の目の前にいた。

 突然の出来事に固まっている悪霊に神月が事前に準備していた札を放つ。


「ヒギャアアア!!」


 札を受けた悪霊の全身を雷撃が襲い、悪霊が悲鳴を上げる。

 そして、神月と俺の最後の戦いが幕を開けた。




***********



 戦いは熾烈を極めた。

 それは予想通りだった。いくら悪霊といえど、人を殺すほどの力をもつ者は極わずかだ。

 その中でも、神月の復讐相手は悪霊と化してから数百人は殺したといわれるほどの強大な悪霊。通常であれば、名の馳せた霊能力者が最低でも三人以上は必要な相手だ。

 霊になって一年の雑魚霊である俺と神月の二人がかりで敵うような相手ではない。

 予想外だったのは、悪霊の耐久力だった。

 それでも、勝機はあった。

 その勝機こそが神月の憎しみだ。


 霊との戦いは意志が全て。恐れた方が負ける。

 つまり、神月の憎悪が悪霊に恐れを抱かせたとき、神月は悪霊を消すことが可能となる。

 そして、彼女はそれを可能とするべく一本の刀を手に取った。

 その刀こそが妖刀だった。

 数多の人を斬り殺し、人の憎悪に塗れたその妖刀は霊でさえ恐れるほどの強大な霊力をその刀身に宿している。

 その刀を神月が制御し、刀に宿る憎悪も神月が抱く復讐相手への憎悪に乗せることが出来た時、神月は悪霊を消すことが出来る。そう神月ヤミは考えていた。


「神月! 今だ!!」


 一瞬、零士が悪霊の全身を羽交い絞めにして動きを止める。

 その隙に神月は腰に下げていた妖刀の柄に手を触れる。その瞬間、妖刀から伝わる憎しみ、妖刀を手に取ったことで殺人鬼と化した人の悲しき叫び、妖刀に切られた人々の嘆き、そして妖刀への憎しみ。それらを超越する妖刀の叫び。

 


 斬れ。斬れ。

 この刀に斬れぬもの無し。生物も無機物も、この世の全てを一刀に斬り伏せろ。


 ああ、斬ってやろう。

 だが、これはお前の戦いじゃない。これは私の戦いだ。私の憎しみだ。


「私は絶対にあなたを許しません」

「ヒャヒッ!?」


 その瞬間、神月ヤミの持つ妖刀が黒い光を放つ。

 そして、神月ヤミの憎しみを乗せた刃は悪霊を一刀両断した。


「はぁ……はぁ……」


 終わった。

 神月はそう思った。そして、その場に膝をつき妖刀を地面に突き刺す。


「神月!!」


 焦りを含んだ零士の声に神月が顔を上げる。


「ど、どうして……?」

「ヒャヒヒ」


 神月ヤミは悪霊を斬り、この世界から消したはずだった。

 それにも関わらず、悪霊は依然として口を三日月形に歪め、神月を嘲笑うかのように見つめている。

 まるで、神月ヤミなど初めから恐れていなかったかのように。


 化け物……。こんな相手に、敵うはずがない……。


 その姿を前に、神月ヤミが抱いた感情は恐れだった。

 そして、それは悪霊にとってこれ以上ない好機となる。


「ヒャヒヒヒヒヒ!!」

「あ……」


 膝をつき、動けない神月の頭に悪霊の大きく開かれた口が迫る。

 真っ暗で何もない悪霊の口の中を神月はぼんやりと眺めながら、自分がここで死ぬのだと悟った。


 だが、彼女の頭が悪霊の口に納まることは無かった。


「ふざっけんな……!!」

「え……」


 悪霊は霊体だ。

 人の身でその身体に触れることは出来ない。だが、霊同士であれば接触可能。


「生きろ! 神月! どんだけ苦しくても、辛くても、死にたくなるような現実しかなくても……! 足掻いて、もがいて、生きろ! 生きて、生きててよかったって、笑顔で言って見せろよ!!」


 神月ヤミの目の前には、肩に悪霊の歯を突き立てられながらも悪霊の顎を全身で止める零士の姿があった。

 

「ヒャ」


 邪魔だ、そういうかのように悪霊はより一層零士の霊体に歯を食い込ませる。

 既に零士の霊体は消えかけており、悪霊にその全てを食らわれるのも時間の問題だった。

 それでも尚、零士は叫び続ける。

 神月ヤミという少女に生きろと言い続ける。


「ふざけんなよ……! 納得できるかよ。仕方ないの一言で終わらせられるかよ……!! 俺の好きな人の運命がこれで終わりだなんて認められるはずがないだろ――」


 バクン。


 悪霊の口が完全に閉じられ、神月ヤミの視界から零士は消えた。


「あ」


 失った。

 神月ヤミが大切に思って来たものは、皆消えていった。


 家族も彼女の友人も、そして、彼女が傍にいて欲しいと願った一人の霊も。


 全ては目の前の悪霊の仕業だった。

 神月ヤミという少女が全てに絶望したところを食らう。その目的のために、彼女と親しいものは全て消えていった。


 運が悪かった。

 神月ヤミという少女が悪霊に目を付けられてしまったことも、神月ヤミが美人で周りから好かれやすかったことも、彼女の家族が温かく、優しかったことも。


 人生とはそういうものだ。

 何が起きるか分からない。良いことも悪いこともある。時に、悪いことが重なることもある。


 結局、全て無駄だったのだ。

 これなら、初めから諦めていれば良かった。

 復讐など考えず、私が大人しく悪霊にその身を捧げていれば、少なくとも彼の魂も安らかに眠れたはずだ……。

 私の運命は最初から決まっていたのだから、諦めればそれで――。


『ふざけんな!!』


 神月が何もかもに絶望して、全てを諦めようとした時、その声が響いた。

 その声は悪霊の身体の中から響いていた。


「ヒャヒ……!?」


 突然の出来事に、神月ヤミは動揺していた。

 彼女の目の前で絶望の象徴だった悪霊が突然苦しみ出したのだ。腹を抑えて、うめき声をあげている。


 霊同士の戦いは魂の戦いだ。負けた魂は消滅するか、勝利した魂に食われる。

 そして、食われた場合、その魂は勝利した魂の霊体内に納まる。


 それは悪霊にとっても初めての体験だった。

 完全に吞み込んだはずの魂が自らの体内にある別の魂と共鳴し、力を強めている。


 最強の霊とは何か?


 霊力が強いものか? 生前、名を馳せた英雄の霊か?

 否。

 最強の霊とは、諦めの悪い霊だ。


 自分が満足するまで、何度も霊として蘇る。

 そんな傲慢で、愚かで、醜く、泥臭い魂こそが最強の霊となる。


『生きろ……! 神月、生きやがれ……っ!!』


 はっきりと悪霊の体内から声が響く。

 だが、今度は声は一つだけでなかった。


『ヤミ、生きて』

『僕たちは君の幸せを願っている』

『お姉ちゃん、死なないで』


 それは悪霊に呑まれた神月ヤミの家族の声だった。

 強い魂の輝きは時に、魂の共鳴を呼ぶ。今、この瞬間、零士の魂が『神月ヤミの幸せ』を願う思いが、悪霊の体内で神月ヤミの家族と共鳴し、悪霊の動きを止めていた。


 生きろ。

 その三文字がヤミの心に重くのしかかる。


 まだ生きろというのか。お父さんもお母さんも、妹も、そして、零士も、私の大切な人はもう誰もいないのに、それでもまだ生きろと言うのか。

 

「ヒギャアアア!!」


 悪霊は恐れていた。


 零士がそれを知っていたかどうかは定かではないが、この悪霊の最も恐れることは無視されることだった。

 まるで、自分など初めからいないように扱われる。

 生前の記憶から、この悪霊はそれだけを恐れていた。

 誰かに見て欲しい。自分だけを見つめ続けて欲しい。純粋な思いは人の悪意に晒されたことで歪み、霊と化してから更に醜いものへと変貌を遂げた。

 だからこそ、神月ヤミではこの悪霊を倒せなかった。

 神月ヤミがこの悪霊に向ける強い憎悪は、悪霊にとって歓迎するものだったから。


 だが、今この瞬間、悪霊の体内で呑まれ、永遠に悪霊を恨むことしか出来ないはずの魂でさえ零士という一人の男の魂の輝きに魅せられ、神月ヤミという一人の少女の幸せを願っている。

 あれほど悪霊を憎んでいた神月ヤミでさえ、その意識は悪霊からそれていた。


 取り戻さなくてはならない。

 ボクを見ろ。ボクだけを……見ろ!!


 悪霊の腕がヤミに伸びる。

 

『俺の、俺たちの最後の望みだ、神月。生きろ』


 俯くヤミの耳に零士の声が響く。

 そして、ヤミは傍らに立つ妖刀の柄に手をかけ、目前に迫る悪霊の腕を斬り落とした。


「ギャアアアア!!」


 腕を斬り落とされ悲鳴を上げる悪霊。

 その悪霊の前で神月ヤミの頬を流れる雫が月の光を反射する。


「……あなたは最低です。そんなこと言われたら、生きるしかないじゃないですか」

「ア……アア…………」


 悪霊が一歩後ずさる。

 もう既に、ヤミの瞳に悪霊の姿は映っていなかった。


「さようなら」


 別れの言葉と供にヤミが妖刀を振り下ろす。

 悪霊の断末魔が響く中、ヤミが最後に見たのは微笑みを浮かべる彼女の家族と一人の男の満足気な表情だった。



「……バカ」



 ポツリと呟く彼女の表情に笑顔はまだ無かった。




***********




 目を覚ますと、チャラチャラした見た目の怪しげな姿をした人物が目の前にいた。


「やあ。久しぶり。二度目の死を体験した気分はどうだい?」


 ああ、そうか。

 そうだったな。


「……まあ、悪くはない」

「それは、君の目的を果たせたからかい?」

「ああ。お前にも感謝――いや、神様にも感謝しないとな。ありがとうございました」


 その言葉と供に、俺は目の前の神に頭を下げる。


 そう。俺は俗にいう転生者という奴だった。

 初めて死んだ後、俺の魂はこの空間に連れてこられた。何でも今目の前にいる神様が暇つぶしで俺の魂をこの空間に呼び寄せたらしい。

 そして、ネット小説でよくあるような転生をさせてもらえることになった。


『転生させてもらえるなら、俺の好きなアニメの世界がいい』

『へぇ。理由を聞いても?』

『……一番好きなヒロインがいたんだけどさ、その子は救われないんだ。その子が救われないことで、主人公の成長に繋がったり、後の展開に大きな影響をもたらしたりするらしいんだけどさ、俺は納得できなかった』

『アニメの展開を変えたいっていうのかい?』

『いや、たった一人、彼女の運命だけ変えることが出来ればいい』

『それが世界を変えるってことなんだけど……まあ、いっか。君の望みを叶えることは出来る。だが、責任は取れるのかい?』

『責任?』

『元々のアニメの展開を変えるということは世界の運命を捻じ曲げるということだ。捻じ曲がった先の世界がどうなるかは誰にも分からない』

『神を名乗るお前でもか?』

『君たち人間はペットの金魚が泳ぐ水槽にカエルやら虫やらを入れることは出来るが、そいつらが一日後に水槽内でどうなってるかを完璧に当てることは出来ないだろう? それと同じさ』

『つまり……俺の存在によって変わった世界に対して責任が取れるかってことか?』

『いいや、違う』

『違うのか?』

『世界に対して責任は取れなくてもいいが……まあ、いいや。これも君自身が気付くべきだ。それじゃ、いってらっしゃーい。あ、前世の記憶は消しとくね。その方が面白そうだから』


 そうして、俺は転生し、あの世界を生きて、また死んだ。

 この空間に戻ってきて漸く全て思い出した。


 心残りがあるとすれば、神月ヤミの心からの笑顔が見れなかったことだが、彼女が死ぬ運命は避けることが出来た。

 彼女ならこれからきっと幸せを掴めるはずだ。


「何勝手に終わろうとしてるんだい?」


 不意にかけられた声に頭を上げると、神は呆れたような表情を浮かべた。


「君さ、僕が言ったことをもう忘れたの?」

「言ったこと……?」

「責任を取るって話さ」

「いや、でも俺はそこまで世界に干渉はしてなかったけど……」

「がっつりしてるよ。その影響が早速出てる」


 そう言うと神は俺の足元に視線を向ける。つられるようにそっちに視線を向けると、俺の足元には不可思議な紋様が浮かび上がっていた。

 そして、その紋様は神月が俺を呼び出した時のものによく似ていた。


「え……? こ、これって……」

「君の魂はまだあの世界に縛られている。だから、ここに来るのはまだ早い。しっかり責任を取って来るといいよ。それと、君の二度目の人生は中々に面白かった。もっと面白いものを見せてくれるならご褒美も用意しておこう。頑張りな」

「え……? えええええ!?」


 最後に俺の目に映ったのは、どこか楽し気にこちらを見る神の姿だった。




**********




 一人のバカな男がいた。

 一人の少女が幸せになるところが見たいと願い、霊と化して、そして霊としての死を迎えたバカな男だった。


 バカな男はバカ故に、自分の役割を全うしたと思い込んだ。

 だが、これは一つの節目に過ぎない。これからも神月ヤミの物語は続いて行く。

 そして、バカな男の物語も――。


「あれ? ここどこ?」

「こんばんは、名も無き霊よ。私は過去の勇猛なる霊を従えてこの腐った世界を変える。そのために、君の力も使わせていただこう」

「え? おっさん、何言ってんの? 中二病?」


 ――一人の少女が幸せを掴むその時まで、終わることは許されない。




*******************


 最後まで読んで下さり、ありがとうございました!

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死して尚、君の幸せを願う わだち @cbaseball7

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