第9話 血塗られたナイフに運命を


 入院していた丹野さんが挨拶に来た。長らく務めたメイドの仕事を引退する為だ。


「旦那様、本当にお世話になりました」


 目に涙を浮かべて最後の挨拶をする。


「代わりは居る、用事がそれだけなら、仕事の邪魔だ」


 その言葉にわたしは何かが切れた。広間にテーブルの上にあった、ナイフを手に取り。


 父親に突っ込む。


 あの夢はやはり真実であった。このまま、父親を刺して東京に逃げるのだ。


「ダメ!!」


 つばきが父親との間に入り。ナイフはつばきを刺してしまう。


「何故?一緒に東京に逃げるのでしょ?」


 リーン


 死の音色が聴こえる。これは父親ではなくつばきのモノだ。


「本当に困った子ね……父親を刺しても、傷つくのはもねの心なのに」

「嫌、消えないで、わたしの孤独を癒すのはつばきだけよ」


 光る砂の様になるつばきは満たされた表情であった。


 わたしがつばきを殺した。


 光る砂は風に吹かれて消えて行く。


「ふん!時間の無駄だったな」


 父親は逃げる様に去っていく。丹野さんと美穂に席を外すように頼む。


 また、一人になっちゃった。


 半年後


 わたしは稲荷神社に来ていた。


『もねちゃん』


 そうね、今日は九尾のつばきに会いにきたのである。つばきが鳥居を通ってやってくる。


 やはり、会えた。そんな予感がして早起きして待っていた。


 見えるのは青空であった。

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千の孤独~ガチ百合物語~ 霜花 桔梗 @myosotis2

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