ゾンビだらけの街の恋愛模様! 〜恋死た女は吸血鬼。愛死た男はガンスリンガー〜
愛善楽笑
たとえ君が、吸血鬼だったとしても。
結果を先に言ってしまえば、今まさに俺の街『コネルマ』は最悪の展開に見舞われていた。
俺の住む街は賑やかな街だった。毎年豊作続きの街名産の果物、『キュアの実』なんて、昨今導入された『ふるさとまっしぐら納税』の大人気返礼品にもなっている。
大きすぎる湖の中心にある街の外観は美しく、世界的には三大美しい街として知られている。
そんな俺の街は、王国住み疲れを癒したがる金持ちやら貴族やらが観光に訪れ、そして街にどっさり金を落としていく。おかげさまでここソメイ大陸の中の数ある街のひとつとしては、どちらかと言うとだいぶ裕福なものだった。
穏やかな毎日は平和そのもの。
……じゃあ最悪の展開ってなんだよって? それはいきなり現れた銀髪赤目の女の子が現れ、コネルマの街を襲ったんだ。
『今日からこの街アタシんだからッッ!!』
なんて言ってさあ大変。恐るべき魔法を駆使しながら街の人間達を噛みつき廻ると、一夜にして俺の街はゾンビだらけになる。そう、彼女は吸血鬼一族の末裔だった。
ゾンビが闊歩する日常となってしまった街で一人生き残ってしまった俺は、安心して眠れる日なんて一日たりともなかった。人間として生きていくにはサバイバルに長けてないと瞬きする間にゾンビに噛まれ、もれなく絶命。あるいはゾンビ化。
俺の住む街は一気に殺伐とした環境へと変貌する。
吸血鬼に噛まれると、非童貞非処女はもれなくゾンビとなってしまう。
童貞や処女はどうなのか? もし吸血鬼に噛まれたら『吸血鬼の仲間入り』になるのだが、ゾンビに噛まれたら最悪だ。
身体は腐り、意識を失って生ける屍と化す。
ちなみに俺の友人たちも、街の女たちも見事にゾンビ化。あー、だとか、うー、だとかしか言わねー。
そして残酷な現実が俺に突きつけられる。街の男衆が憧れる街のマドンナ、〝マリー〟は吸血娘に噛まれ、見事にゾンビへとクラスチェンジしていた。
マリー、非処女でした。
彼女を前にして、現在絶賛ゾンビぶっ殺しモードの俺は思いだしていた。
『彼氏いるの?』『好きな人いる?』
といった質問には決まって、
『そんなのいるわけないじゃないウフフ』
と、あどけない顔で首を傾げて言ってた美しい彼女のことを。
「おい、マリー……俺のことがわかるか?」
「あー……ゔぁあ……」
掠れて濁った声を出し、ぼろぼろになったスカートを引きずって俺の方へとのっそりと近づいてくるゾンビガール。
俺を襲ってくれるなら、生きている時かつベッドの上にしてほしかった。
「ゾンビになっても……君が好きだよ」
なんて、かっこよく綺麗事を並べ、涙を流しながら重たい銃の引き金に指をかける。『ズドンッッ!!』と彼女を弔う鐘の音を鳴らし、爺さんの形見のマグナム『ジャスティス』と『ジェノサイド』から放たれる1発、脳天一撃で〝マリー〟をぶっころしちゃう俺。
正確に言うと2発だけど。
ほんとうは……俺は自分の身体のマグナム的なやーつで〝マリー〟を天国へとイかしたかったのに、リアルマグナムで彼女を天国へと逝かしてしまったんだ。チクショウ、俺はまだ童貞の純情かつ純潔、未経験の聖なるってか性なるガンスリンガーチェリーボーイ。
……そんな感じで、いつしか俺の表情は眉間にシワをよせたサバイバルな毎日になる。気がついたら無表情で元人間、ウォーキングゾンビをぶっころしちゃう俺が出来上がってしまったのだった。
もはや涙なんてこれっぽっちも出やしない。なぜなら〝マリー〟が俺にゾンビとして襲ってきた時に、流した涙が人生最後。そして最後の男泣き。
そんなわけで、俺は十代前半にして『ヴァンパイアハンター』あるいは『ゾンビバスター』としてなんとか生き抜いて、この街を脱出しないといけない状況にいる。
ぶっちゃけて言おう。厳しい……厳しすぎる。
……マグナムの威力はハンパない。死んだモーロックス爺さんは元銃職人だった。知る人ぞ知る名工。銃には魔力の込められた弾を使用できるし、なんなら攻撃魔法が使えようもんなら弾なんかなくても、自らの魔力を弾に変えて発射することもできる優れ物だと爺さんは言っていた。世界最強、最高峰のマグナムだと。
が、しかし。
残弾少ない上に、俺は攻撃魔法なんてこれっぽっちも使えない。このままでは凶悪な街のゾンビたちにぬっ殺されちゃうし、俺自身のマグナムはソーセージとしてゾンビに召し上がっていただく羽目になる。
となれば……俺はどうやってこの死地を潜り抜け、生き延びたら良いのかと足りない頭で考えた。すると、答えは一つ見つかった。
「俺も吸血鬼になればいいじゃない」
銀髪赤目の女子にちょちょっと首筋噛んで貰えばいいじゃないか……こう……かぷっと。だって俺、童貞だもの。
しかし、その為にはゾンビ街を脱出し彼女が住まう屋敷へと辿り着く必要がある。その前にゾンビに噛まれたら俺は童貞のまま死んでしまうか童貞ゾンビになってしまうだろう。
ちょ、そこはかっこよく吸血鬼討伐しないんかい!!
はあ!? んなこと言われてもよぉ! できるもんならやってるっつーの! 残弾少ねえんだよッ! このままだと間違いなくゾンビに殺されるんだよォ! 何度も言わせんじゃねえ!
……この状況、もはや童貞を捨てる為なら吸血鬼になろうが構わない。しかしゾンビはムリ。臭いし醜悪だ。こう言ったらなんだが、俺はそこそこの見た目だと自負している。
それならば……吸血紳士として生まれ変わり、女の子の血を吸う方が素晴らしいってもんさあ!!
それにせっかく男としてこの世に生まれたってのに、一度も女性を抱けずに死んで堪るかッッ! シャオラァッ!!
『ズドンッ!!!!』 俺は近づいてきたゾンビ一体を撃ち殺す。迫りくるゾンビ達をぶっ殺し続けながら、俺は叫んだ。
「たとえ吸血鬼になったってかまわない! せめて童貞捨てないと死んでも死に切れないッッ」
歪んだ決意を胸に秘め、ぶっとんだ考えの俺は壁からゾンビ達をチラ見し、銃を構えながら勢いよく飛び出していったのだった。
◇
──どらきゅりーなセレンの屋敷にて。
(なんなの? この男は……!)
(見た目はまぁまぁ良いケド……なんだか残念な男ね)
それが吸血鬼の屋敷へ突如現れた俺に対する……おっぱいぷるんのセレンが抱いた印象だった。
彼女ら吸血鬼は闇の眷族であり、いわゆる魔族だ。そんな吸血鬼にとって俺の持つマグナム、通称『聖銃』とは、神聖魔法という恐ろしい力を込めた弾をぶっ放してくるわ、法儀礼済みの銀弾を打ち込んでくるわで、最悪の存在として闇の眷族界隈では有名であった。
俺そんなん知らないけど。
特にこの『ジャスティス』と『ジェノサイド』は、魔物の暴虐に対抗する為、俺の育ての父親とも言える銃職人だったモーロックス爺さんが精魂込めて創りあげた最高の逸品だ。これ以外にも銃をこさえ、各地のヴァンパイアハンターや冒険者達の御用達となっている。
絶大なダメージを魔族に与え、魔法の詠唱を必要としないからだ。
ゆえにセレンは強く深い恨みを持っていた。吸血鬼一族を滅びへと追いやった爺さんとその銃に。
セレンはどこで知ったか分からないが、率いたゾンビで恨みのある爺さんとこの街の人間を全て挽肉にしてやろう、そして根絶やしにしてやる! と画策し、攻めて来たらしい。
おかげで爺さん既に寿命で死にそーだったのに、コイツのおかげで俺はゾンビとして復活してしまった爺さんをマグナムで引導渡してしまったわけだが……!
……そうしてこの街に現れたセレンは、見事に街を制圧し、住人をゾンビにして悦に浸っていた時にだ。
俺がセレンの前に突然現れ、銃を構えながらかっこよくこう言い放ってやったのである。
「俺を吸血鬼にしてくださいッ!」
……最初、セレンはその言葉の意味が分からなかったし、気持ち悪がっていた。何しろ銃を構えているくせに「貴様を許さん!」とか「眠るがいい吸血鬼よ!」とかデフォルト発言をしないものだから。
その意味を吟味するよりも先に、銃を向けられたことで怒りの感情が大炎として燃え上がっていく……!
「人間風情がこのわたしに銃を向けるな!!」
吸血娘が咆哮を上げる。
彼女は吸血鬼一族の末裔としてひっそりと生きていたものの、ふとしたある日、爺さんの銃を持った『ヴァンパイアハンター』に襲われ、命からがら逃げ出したのだそうだ。
そうして失意のズンドコならぬドン底に追い込まれた日の怒りと悲しみを思い出しながら、吸血娘セレンは銃を構える青年に魔法を打ち込もうとした。
だが、しかし。
「俺を吸血鬼にしてくれなきゃ銃は下ろさないもんッ!!」
「えっ?」
──その瞬間、沈黙が流れた。
なぜなら青年がバカみたいに放った一言は彼女にとって意味不明だったからだ。
セレンは目をパチクリとし、やがてふたたび怒鳴り散らす。
「はあぁぁあ?! お前、気でも狂ったのか?!」
驚愕の声を上げる美少女吸血鬼が白い腕を持ち上げ、指を差す彼女に俺は声を荒げる。
「狂ってんのはこの街だ!! ゾンビばかりでどうやって俺は童貞を卒業したらいいんだ!? 教えてくれよぉッ!!」
「いや、そんなの知らんし……」
むせび泣く俺。美少女は蔑む目で俺を見ていた。もしも俺がドMならご褒美目線だが、違う。断じてMではない。
とはいえ……俺は次第に怒りと性欲が溢れてくるのを感じていた。湧き上がるリビドー……久しぶりにゾンビ以外の女の子を前にして、俺の二丁拳銃はいつの間にか三丁になっていたのだ。
仕方ないじゃないか、男だもの。こちとらずっとゾンビをバスターしてたんだからよぉッ!!
「はあ!? ふざけんなし!! テキトーなこと抜かしやがるなら俺のマグナム(股間ではない)をぶち込んでやるああああッッ!!」
その発言に呆然とする吸血娘。俺は銃を構えながら悠然と彼女に歩み寄りながらこう告げる。くどいようだが俺のマイサンもちょっとだけ反応していて我ながら情けないと思う。
すると、セレンは冷ややかに言った。
「ふん、私と殺り合うつもりか?」
「えっ……その……! はい! ヤりたいです……ッ! その……俺初めてなんで、優しくお願いしますッッ!!(ドキンコドキンコドキドキドキャアアンッッ)」
「お、お前、何考えてるんだこの変態がぁッ!」
抑えきれない胸の鼓動、反響する吸血娘の叫び声。いつの間にかパンツいっちょになっているガンスリンガーチェリーボーイ。
かくしてこの日、荒れ果てた屋敷にて吸血鬼セレンと、ガンスリンガー・俺ことロランの戦いの火蓋が切って落とされたのだ。飛び交う弾丸と、彼女から怒涛の如く打ち放たれる攻撃魔法。
戦いの中で俺は考えた。マグナムから発射した弾丸の数だけできることなら何回でも彼女とヤりたいと。
目の前の美少女と……発射だけに。
そして……やがて残弾が尽きる俺、魔力が尽きるセレン。呼吸を荒げる俺と彼女は気がつけば二人ともあられもない姿になっていたのだ。──まぁ俺はパンツいっちょだったんだけど。
「……はあはあ、お前、人間のくせになかなかやるね」
「……ふぅふぅ、君もなかなか強いじゃないか」
「ねぇ、本当に吸血鬼になりたいの?」
「男に二言は無い」
「ふうん、じゃあなってみなよ」
俺にゆっくりと歩み寄ったセレンは、優しく俺の首筋に噛みついてきた。唇の感触が柔らかくて気持ちがいい。
かぷりっ……!
あぁ……俺、童貞を卒業する前に人間卒業してしまうんだ……。と、吸血娘セレンに優しく噛まれながら、吸血鬼へと変貌する感動に打ち震える。
だがしかし、俺は知らなかった。まさか俺には吸血鬼変化に抵抗のある、奇跡の血液型の持ち主であったことを……!!
◇
セレンに吸血鬼化を願ってから一か月。結果から言うと俺は吸血鬼になれず、童貞のままセレンの館になぜか滞在していた。
最初は首筋をかぷりと噛まれた時に、あぁもうこのままセレンを押し倒したい! と考えた俺ではあるが、ぐっと堪えているとだ。セレンの顔つきは明らかにどんよりしていた。吸血鬼のくせに。
どうしたんだとセレンに聞けば、なんとも俺のプライドを傷つける言葉が返ってくる。
「くっそ不味い……おぇ」
「ちょ、ひどくない!?」
「今まで飲んだ血の中で、最強に不味い……もしかしてあんたさぁ……」
「……なに? なんだよ??」
口元を左手で拭うセレンに対して微妙なエロスを感じながらも、俺は困惑していた。
「先祖に誰かいない? 勇者とか聖女とか?」
「……は? そんなの聞いたことありませんけど」
「うーーん、じゃあ親が聖騎士?」
「俺に親なんていない、いるとしたら育ての爺さんくらいなもんだが」
そんな先祖がいるなんて聞いたことは無いし、俺に両親などいない。……なんせ俺は捨て子だったからな。爺さんに拾われて、今まで爺さんの息子として生きてきたんだ。
つーか勇者とか聖女とか聖騎士だとか御伽話だろ。いつの時代のこったそりゃ。何言ってんだこの女。馬鹿じゃねーの?
まったく何を考えてんだよ、どーでもいいからとっととこの俺様を吸血鬼にせいやこのおっぱいやろう! と思っていると、セレンが気まずそうに声を出した。
「……あなたは吸血鬼になれない。御先祖さんから引き継いだであろう……そのくっそまずい聖者の血のせいでね。だから闇の眷族としては生まれ変われないよ」
「はあ? んじゃ何!? 逆に聞くけど、君に噛まれても闇の眷族にならないってことは……俺はゾンビ噛まれてもゾンビにならないって、そうゆーことなのかッ!?」
「平たく言ったらそうなるかも。うんうん」
理屈っぽいことを言ってやると、セレンは大げさに頭を上下に頷くのだった。
ははは……じゃあ俺はなんの為に命がけでサバイバルをしていたんだ。この屋敷に到達するまで貴重な弾薬を使い、塞がれた道を突破する為に頭を働かせてギリギリの戦いに身を委ね、そうして俺はようやく辿り着いたと言うのに。
俺は一体、何をしていたのだろう。
どうにかして脱童貞を目指し、吸血鬼にすらなろうとしていたのにまったく意味のないことをしていたんだ。
◇
ところで、吸血鬼は災害級モンスターに指定されている。ゆえにヴァンパイアハンターによって駆逐され続け、絶滅の一途を辿っていた。それもあってか生存を確認されることなど皆無と言っていい。
そんな彼女は自分が一族最後の吸血鬼として、ひとりぼっちで彷徨ながら……流れ流れて放浪するうちに、やがて魔族にとって凶悪的な武器を開発したモーロックス爺さんの情報を掴んで、ようやくここまで来たのだそうだ。
恨みを晴らし、この美しいコネルマの街をセレン色に染めてやろうと。それこそが私の復讐なのだと。……ゾンビだらけの街がセレン色なのは最悪だが、そこは俺は突っ込まなかった。
「ヴァンパイアハンターに復讐しに行けばいいのに」と俺が問うと、このドラキュリーナは頭のイカれた発言をする。
「は? あたしがヴァンパイアハンターに負けたらどうすんのよ? 一族が死に絶えるわよバカね」
「いや負ける前提かいッ」
そう、この世界では魔族は生きていることは許されない存在だった。
人ならざる、この世ならざる存在で人類に仇なす魔族という種を俺たち人間は基本的に忌み嫌い、そして殲滅する。それが吸血鬼一族の中でもレアなドラキュリーナならなおさら彼女を討伐しようとする者もいるだろう。
そんなドラキュリーナ、セレン。「吸血鬼にしてください」と俺に言われた時、彼女は実のところ戸惑いよりも先に喜びがあったとやがて俺に言ったんだ。
そして、
〝もうひとりぼっちじゃなくなるかも……〟
と。
◇
──なんやかんや紆余曲折を経てセレンとの共同生活が始まった。
世界中の屈強な戦士たちが美しいコネルマの街を取り戻そうとしてセレンを討伐しようと訪れる。が、俺と彼女はそれを返り討ちにしていく。
あとなんか知らんけどセレンは自身の魔力を込めた『魔弾』なる魔道具を俺に提供してくれた。俺の聖属性の銃にそんなもん使えるわけねーだろ! ぷんすこッ! と言ったものの、何故か使うことができた。
後になってわかったのだが、それは彼女が俺に対する想い……愛のせいだろうということだった。愛は聖なる感情、魔族ですらそれを持ち合わせているのだ。その感情を『ジャスティス』と『ジェノサイド』は受け止めてくれたのだった。
「ねえ、なんでわたしを助けてくれるの……? 人間のくせに」
「?? 誰かを助けるのに理由がいるのか?」
「…………」
そう言うとセレンは真っ白で雪のような顔を赤く染め上げる。いや──この時俺も、恥ずかしながら彼女に対して恋をしていたんだ。もちろん下心もいっぱいあったけど。
彼女に惚れていた。
だから彼女を守ろうとして俺は人間なのに、人間と戦い続けた。
最終的には精鋭ばかりの王国騎士団やら飛び抜けて強い冒険者なんかが俺に対して『人族の裏切り者』だとか、『変態』、あるいは『童貞』と言って喧嘩売ってくるものだから俺はムカついて銃をぶっ放すし、セレンは全員噛みつきまくってゾンビにしちゃうといったかわいいイベントがあったりしたけど……なんやかんや俺とセレンは仲良く過ごしている。
「──あっ、ロランおかえり~っ!」
「あぁ、セレン。ただいま」
人族を返り討ちにした俺がドアを開けると、たわわに実った二つの山脈が大地震でも起きたのかと言わんばかりに揺れていた。俺の元へと駆け寄るセレン。血の通わぬ冷たい身体を押し付けてギュっと抱き付いてきた。
……冷たいけれど、なんだか暖かい。
最初は頭のイカれた魔族のやべー女だと思っていたが、俺の愛はやがて種族の垣根を超え、仲睦まじく暮らしている。
世界では至るところで争いがあるけれど、俺と彼女を見習ってぜひとも仲良くして欲しいところだ。
それにしても、俺は人間……彼女は何百年も生きる吸血娘。
いつか俺は彼女より先に命を落とすだろう。俺はセレンが淹れたコーヒーを飲みながら、そんな未来に溜め息をひとつ吐いた。
「なぁ、セレン。俺は結局……吸血鬼にはなれない。君とどこまでもずっと一緒にいたいが、いつか俺は老いて先に死んでしまうだろう……」
「……ロラン。あんたが魔族に生まれ変わって、いつか逢いに来てくれると信じてる。……ずっと待っているわよ……ずっと……」
冷たい身体の魔族の彼女の心は俺に対してどこまでも暖かく、そして優しさを感じさせる声色で告げ、俺の手を握りしめる。
俺は少し寂しそうな表情を浮かべた彼女の頭をくしゃくしゃと優しく撫でながら言った。
「セレン、俺は君に誓うよ。俺の命が尽きたとしても……必ず生まれ変わって君に逢いにくる! ……そうだな、今度は吸血鬼として……!」
ゾンビだらけの街の恋愛模様! 〜恋死た女は吸血鬼。愛死た男はガンスリンガー〜 愛善楽笑 @sibayou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます