新生物の夜明け

高黄森哉

新年


 それは年明けのことだった。地球はまるでヒビが入ったかのように、北アメリカ大陸とユーラシア大陸の丁度、真ん中に地割れが起きた。海水は深い深い割れ目へ、なお流れ落ち、水蒸気を発生させ続けている。そのため全土は、今日も雨になる予報だ。


 次の異変はアメリカのニューヨークで起きた。一夜のうちに、巨大な手がエンパイアビルの隣に、突然、屹立したのだ。


 ほぼ同時刻の日本で、スカイツリーの真横に右手が生えた。真っ白い石膏やコンクリートで出来たかのような、作り物染みた腕だった。手は、親指を天に向けたグッドだった。


 それらの異変が起きた次の日にブラジルにある競技場から足が飛び出した。大根のように純白の、大根のような太い脚だった。


 そして同時刻のオーストラリアでは、シドニーのオペラハウスから足が伸びた。オペラハウスの帆は、脚と合わさって、まるで飛び込んだ人が飛沫をたてているかのように見えた。白い素肌が、帆と調和し、それほど悪くないとの評判だ。


 それからしばらくして、科学者はこの地球が生き物の卵であるという研究を発表した。その日は四月の一日であったので、ほとんどの人は何かの冗談だと思った。四月には、あの騒動は芸術家の仕業だと信じられていたのだ。


 科学者は決死隊を募って、地球を殺すことにした。生き物というのは、生まれたときが一番、柔らかく傷つきやすいのだ。この作戦は、動物愛護団体や環境保護団体に目を付けられないように秘密裏に行われた。


 地球のヒビに、ゴミや放射性廃棄物を入れると、みるみる内に白かった各地の手足が黒くなってきた。それはまるで熟しすぎたバナナだ。とても臭うのでアメリカを除いて速やかに撤去された。アメリカは、保護団体に因縁を付けられたらしい。


 人々はすっかり事件について忘れてしまった。新聞もインターネットもテレビも雑誌も皆、新しい事件を報道している。


 新たな異常が観測チームによって発見されたのは、騒動から一年たった、年明けのことだった。それは、人々に大きな衝撃を与えた。


 早朝、人々が新たな年を迎えるために外に出ると、初日の出の太陽に手足が生えていたのだ。おまけに中央に顔があるのである。不満げな顔をした太陽はこう言った。『

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新生物の夜明け 高黄森哉 @kamikawa2001

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