砂と岩と水と……。

筒井康隆氏の『旅のラゴス』や椎名誠氏の『アド・バード』を連想するような世界観の物語である。西洋風の世界観ではなく、どこかエキゾチックな砂と岩て水の世界に秘めている少年の冒険心がくすぐられた。こういう世界観のファンタジー作品は珍しいのではないだろうか。得がたい魅力がある。

聖なる酒を巡って砂漠を旅する一行は、一種の通過儀礼(イニシエーション)の最中であり、族長の血統に当たる者が難題を乗り越えようとする様は、一種の貴種流離譚を思わせる。この作品はどちらの要素も兼ね備えている。ファンタジー作品として魅力となる要素が丁寧に整えられているといえる。

通過儀礼と貴種流離という要素を踏まえながら、今後の展開を予想するのも一つの楽しみ方である。もしかしたら、想像を超えるような展開が繰り広げられるのかもしれない。或いは王道を往く重厚な物語として収束していくのかもしれない。いずれにせよ、先が気になる作品である。