第8話 結論

講演会から帰宅後、親が私に問いかけた。


「なぜ、数年は書いてみるということをやめろって言ったかわかるか?」

「離れてみたからこそわかる、って事じゃないの?」

「そういうことだ。書きたいものは見つかったか?」

「それはこれから。でも、誰かが笑顔になれる物か、励ましたり、応援できるもの、ケンカした人と仲直りになるきっかけになるような物は書きたいな」

「そうか」


一度離れさせたものの、そのままやめるか、戻るか……。

戻るのならば、本当にやりたい、やるべきことだ、と感じているのだろう。

そう言った意味合いで、親は一度私を書くことから遠ざけたのだ。

今となっては、書き続けられるのもおかげでもあるだろう。


最初の話で触れた幼馴染とは、やはり縁が離れた。

連絡も取っていないが、私がこうして色々書いている。

これを知ったらどう思うだろうか。

密かに考えていたりするが、まあ彼女が読むことはないだろう。


だが、19歳の時以来、彼女を通していつも以上に一つ気にすることが増えた。

それは、「言葉」だ。

言葉の矢は、時として人を深く傷つける。

時には、人生を変えることすらあると思う。

私は誰かをいたずらに傷つけたくないから、言葉はより気をつけようと思う。

それは、これからも変わらないだろう。


話は変わるが、実は今年になって親友と電話越しで話した。

彼女に言われたことである。


『書く物ができた時と、連載とか書いてる時期と詩を書きたいって言ってる時、一番イキイキしているよね。目の輝き方が違う気がする』

私はその言葉に一瞬キョトンとした。

「その自覚はなかったなぁ。ただ、書いてると悩むことは多いよ。それでも書いてる時が一番楽しいんだ!」

『また原稿チェックとか言ってね。楽しみだから』

「うん、もちろん! また書いたらお願いするよ」

『応援しているよ!』


私は電話後、上機嫌で椅子に座った。

そして、いつも通りパソコンの電源をつける。

「さあ、今日はどんな物語を綴ろうか! 誰かが喜んでくれますように」

いつもの執筆の時間が始まる。

                                   ≪終≫ 


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作家を志す理由 金森 怜香 @asutai1119

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