第7話 作家を志す理由
私はそれから、何本も短編、ショートストーリーを書いた。
コンテストに出す予定のもの、出したものは表に出すことはできない。
書き続けたのは少しずつでも、成長していることを実感したかったからだ。
さらには連載を書き始めた。
『馬の見つめた先へ』
平安時代から鎌倉時代に移り変わって間もない頃を舞台に、仇討の代わりに仇の捕縛後出家をした主人公の話であるが、連載としては処女作である。
完結後、すぐ次の連載も書き始めた。
『カフェ フルール・ドゥ・スリズィエにようこそ』
カフェで、ボーっとしている間に思いついた小説である。
もし、カフェのスタッフが人ではなかったら? そんな設定の小説である。
どれだけ必死に連載などを書いていても、たまに訪れる物がある。
いわゆる『行き詰まり』だ。
そんな折である。
私はとある人物の講演会を知り、受講することにした。
オンライン配信もあったが、私は現地に向かい、講演を聞いてこよう。
そう思った。
ただ、我が家は遠方であった。
いっそのこと一泊して文学館を回り、さらに刺激を受けてスキルアップをしよう。
そう考え、感染者も落ち着いていたころに一人関東へ飛び出した。
到着した日、私は文学館に向かった。
芥川龍之介先生の資料などをメインとした展示を行っていたが、資料を見て思う。
やはり彼は繊細で、苦悩は多かった。
書かれた作品の展示や、様々な友人や最愛の恋人に送られた手紙の数々を見てきた。
書かれた作品の解説や裏側を見て、私はさらに刺激を受けたのである。
文学館の庭で、
文豪たちと所縁があるというので、なにかヒントになるだろうと考え、近場の寺にも行ってきたが、紅葉がとても美しかった。
そこで詩を考えたりもした。
だが、やはり急にたくさん歩くとなると、疲労も激しかった。
私はホテルで原稿用紙に詩を書く前に、いつの間にか夢の中にいた。
不思議な夢を見たのは、なぜかはっきり覚えている。
≪自己否定しなくていい! 書きたいなら自分の間隔で書き続けろ!≫
そう言って、頭を抱えて怯える自分の背を強く押す影がいた。
どこかで見た顔のようだが、それは思い出せずじまいだ。
だが、表情が優しく穏やかだったことはよく覚えている。
翌朝、私はまた別の場所へと向かった。
大好きな作家の一人の旧宅が資料館になっていたので、前々から行ってみたかったのである。
そこに着いた時、感嘆した。
とても美しい洋風のお屋敷だったからだ。
私は、資料を拝見すべくその中に足を踏み入れる。
彼の代表作の特集もじっくりと拝見させていただいた。
一番に目を引いたものはやはり、第三次新思潮の現物である!
作品が載っているページで展示されていた。
私はしばらく、第三次新思潮の前から離れられなかった。
その後も、また別の資料館へ足を運ぶ。
そして、書いた作家の思い、本の裏側などをそれとなく学んだ。
学んだ、というよりかは、感じた、と言うべきだろうか。
その夜、お目当ての講演を聞き、さらに気持ちが強くなった。
伝えたいメッセージとは何か?
文章から伝えるとは?
自分の中に、様々な宿題ができた。
帰りの夜行バスで、私は講演会で学んだことを考えた。
そして、一つの問いができた。
「自分のできることが誰かの応援になればどれだけ嬉しいだろう?」
改めて、小説やエッセイ、詩を書き続けるとはなぜか……。
延々と悩み続けることになるのだろう。
答えはきっと、その時によって変わってくるのだろうから。
5年後、10年後……、その問いを自分に投げかけたら何と答えるだろう?
ただ、今の私に一つだけ言えることがある。
『自己否定しなくていい! 書きたいなら自分の間隔で書き続けろ!』
この言葉は決して間違っていないし、私は書きたいからこそ書き続けようと思う。
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