学園ホラー好きにぜひ


「本当に怖いことなんてそうそう起こらない」

このような書き出しではじまる物語ですが、本編は『怪底奇譚』のタイトルにふさわしい怖いことばかりで、思わず笑ってしまいました。
物語の舞台は、失踪・飛び降りなど怪奇事件が起こる開帝高校。私たち読み手は、生徒たちの少しねじれた(と表現させていただきます)心理描写を読みつつ、事件の真相を追う学園ホラー小説です。

私がこの物語を「面白い!レビューを書きたい!」と思った魅力ポイントは二つあります。

一つ目は、登場人物一人ひとりの気持ちの深堀が楽しめる点です。
登場人物は十人弱。そのうち何人かにフォーカスがあたり、一人称で物語はすすみます。登場人物たちは深く悩んだり、行き過ぎた感情を抱えています。これらを登場人物の視点で読み手は事件を体験するので、好き嫌いはともかく、それぞれに対し、私は感情移入ができました。

この群像劇のような手法は、アメリカドラマ好きと相性が良いと思いました。
私はアメリカドラマ好きなので、物語の進め方にわくわくどきどきしました。(ちなみに私が好きだったキャラクターは序盤中盤終盤で活躍しつつも深堀はありませんでした。残念です)

二つ目は、後半の怒涛の謎解きとバトルが面白かった点です。
上記にも書いたように、キャラクター視点で物語が進むので、中盤までにおおまかに登場人物の背景がわかります。それを踏まえた上で、後半はキャラクター同士のぶつかり合い(物理的・精神的のどちらも含む)が楽しめ、それが本当に面白かったです。

また、「このキャラクターはここで接点があったのか」と点と点がつながる場面は、とても爽快感がありました。後半は序盤と雰囲気がらりと変わり、躍動感ある物語が楽しめました。

 もし、この小説の難点をあげるならば、人にすすめるときのキラーワードに困ることかもしれません。というのも、学園ホラーモノだと私は思うのですが、それにしては登場人物の内面の深堀にも重点が置かれています。好みの話になりますが、ここが深く刺さった!というより、全体的に面白いと思う小説でした。ホラーと人物の心理描写といった大きなテーマが2つ抱えるには、文章がやや物足りないのかもしれません。

全体的にとても楽しめました。次回作にも期待しております。