第2話
独白
嘘は溶けてなくなったりはしない。嘘をついても現実がなんら変わらないように。
そんなことをアイスキャンディーを食べながら冷蔵庫の中で考えた。春子は泣き虫だから、これで脅かすのは最後にしておいてあげよう。
素直に謝れば良いのに私は冷蔵庫の中でめちゃくちゃに暴れた。その音を聞いて春子が叫び声を上げる。静寂が訪れる。
「お姉ちゃん? お姉ちゃんなんでしょ」
私はその問いに黙っている。私も死んでしまったのだから色々思うところぐらいはあるのだ。妹が幸せそうにしているのを眺めるのはとても嬉しいし、私だけが大人になることもできないまま、彷徨い続けるのだって別に構わない。でも、ちょっぴり恨めしさもある。
私は見つけて欲しかったのだ。それが私のわがままであることなど知っている。それでも見つけて欲しかった。そうして私のわがままで春子を困らせた。取り返しのつかないことを春子にさせてしまった。春子が怖がりだということを知っていたくせに。
「私のわがままで困らせてしまったけれど、許してほしいの。私があなたをかくれんぼに誘わなければこんなことにはならなかった。あの世で姉はしっかり反省しています。だからどうか許してほしいの」
もう渡すことのできないバニラアイスをポケットに感じながら、私はそう言った。
雪の中のかくれんぼ サトウ @satou1600
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