夜の蝶ラブの観察日誌

たから聖

第1話 わたくし夜の蝶です。

わたくし…夜の蝶ラブと申します。以後…お見知りおきを。 お決まりのセリフと名刺を渡す…。 『今日は…どうしたの? 』と私が、新規のお客様に訪ねると、やはり新規、わたくしの真っ赤なボディーラインが…丸わかりなドレスにスリットが深く入った洋装を目の当たりにし、その新規の男性客は…目のやり場に困っていた……… 『ふふっ。どうしたの?』と私は…その態度を見つめて…再度、男性客に問う。 『あ、あのっ。僕。キャバクラなんて初めてで…で…。う~んと、ボウイさんから、話を聞いて…。それで………』 話がまとまらない様子を、ラブは慣れた様子で見つめていた。 ラブが、見つめれば、見つめるほど、 その客は緊張を隠すかの様に、 バーボンをロックで一気に流し込んだ。 『ふふっ。ばかね♪』 ラブは男性客に近寄りもせず、男性客は、どうやら何か理由があって… この店に来た様子なのね。と長年の感で…感じとっていた。 『わたくしも何か頂ける?……』と話をすると、男性客は少し酔いながら名刺を眺めていた。 ぼ~っとした男性客は…『ラブさんの好きなモノ頼んで?……』 手をあげて…『いつものをちょうだい…。』 ボウイが、キンキンに冷えたレモンの炭酸水を1本シャンパングラスと共に、もってきた。 『じゃあ。頂くわね♪』 いきなり男性客は……悩み事をぶちまけてきた。 ラブは、話を聞きながら足を色っぽく組み直した。 『俺。好きな子ってか。好きな人に嫌われないか?告白出来ずに居るんすよ。ラブさんは…何とも思ってない男から、告白されたら、どうします?俺……もう苦しいんだよ。』 ラブは、レモン炭酸水を飲みながら…シャンパングラスを左右にふっていた。 『そうねー。わたしなら、少しだけ返事を待っててもらうわ。どんな女性なの?……』 男性客は…今度は、店内の異空間ぶりに、我に帰り、自分の放った悩み事を、『やっぱり……』 『いいから教えて?…』 ラブが押しの言葉を言い放つ…。 『別に、私があなたと、どうこうしようとは……思ってないわ。友達感覚で悩みをいって…?』 男性客が、意を決した様に話す。 『ラブさんには…敵わないな?(笑)俺の完璧な片思いかもしれないんだ。せっかく店に来たのに…。ゴメン。好きな相手は…。俺の元カノなんだ。元カノは…料理が上手で…俺達は…いや。俺は少なくとも結婚を前提に付き合ってたんだ。だけど、急に……会えないって、俺…アイツの事しか考えられないし、何でラブさんには…話せれるのかな?』 とまくし立てて男性客の雅也は…一点を見つめてぼんやりとしていた。 『ふぅん。まぁ。察するところ……雅也くんの存在が、重くなったんじゃない?』 とラブが突き放した言い方をした。途端に雅也は、顔を赤くしていた。店であばれる訳でもなく、恥ずかしい位図星だったからなのだ。 『あなたは…好き、愛してる。を軽く考えてないかしら?…わたくしなら、特別な時しかいって欲しくないわ……ふふっ』と小悪魔的な笑みを、ラブは雅也に向けた。『やっぱり……俺……重いんだ。そっか。』雅也は、酔いながらも落胆していた。 『本当は…ここに来て…女の子捕まえれば、元カノがヤキモチ焼くんじゃないかなって、俺…甘かったかもな…。ありがとう。ラブさん。』 雅也が、帰りにラーメン一緒にどうですか? と聞いてきた。ラブさんは姉さんみたいで、何だか何でも話せちゃうよ。 と……ラブはいった。 『ふふっ。いいよ……アフターもサービスのうちだからね♪特別に今回だけよ?……』 ラブが意味深に、笑っていると……雅也は、 『なんだよ?ラブさん。俺。話をしたら、吹っ切れたよ(笑)さぁ、店終いまで飲むぞ~~。』 ラブは、レモン炭酸水をクイッと飲み干すと…… 『次回から、指名してねっ。ふふっ。』 ラブ的には…ちょろいお客様なのだが…その純粋が故に、重たい存在を…今後は…警戒せざるにいかなかった。 『客商売は大変ねっ💋』と…ラブは雅也とラーメンを食べに行ったのだが……当然、体の関係は持つ事はなかった。 危ない橋を渡るほど……ラブはバカじゃなかった。 タクシーに雅也を乗せると…そこでラブはお別れした。 『わたくしなら、告白よりバラの花束をくれたら考えるわね。ふふっ』 夜の蝶……ラブは自宅マンションへ1人で帰ると…タバコを1本もって火をつけた。 ふーーーっと吐息を吹くと…煙がベランダから…夜の空の空気と同化していった

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