最終話 打ち切りの怪談、そして…
小林の話が始まる前に、
俺こと甲斐篤志は大暮先輩に一言行ってトイレに行った。
大暮先輩は不満げだったが、話を代わりに聞くことと次の日の焼肉おごりで話をつけた。
正直陰気な怪談話ばかりで俺は疲れが出ていた。
トイレに行くのは俺の嘘だ。
このまま適当にばっくれようと思う。
先輩には適当な怪談話でもつけて家に気がついたら居たとでも言えばいい。
怪談話なんてそんなものだ。
ありもしない本人だけの体験談をそれっぽく話を盛り付けるだけでも出来る。
連中の話なんてそんな物だと俺は思う。
そんなことを思いながら、俺は1階に行くための階段に降りる。
エレベーターは節電のため夜は休止中だ、階段しかない。
明日は焼肉代いくらになるか考えながら、めんどくさい部のイベントを納得させるシナリオを考える。
階段を下りていく。
そういえば今何時だったか、先輩が代わりに録音することになった代わりに戻ってきた俺のスマホを見る。
階段を下りていく。
「深夜四時か普段の俺なら寝てるな」
俺は一人でボソッと思わず口にして、そんなことをぼやく。
階段を下りていく。
一つ気がついたことがあった。
怪談話が行われた階は二階だ。
すぐに階段を上がればつくほど近い。
階段を下りていく。
だんだん不安になり、なんとなく気を紛らわすためにスマホを見る。
「深夜四時のままだ」
階段を下りていく。
怖くなり階段を下り続けた。
階段を下りていく。
いつまでも一階が見えてこない。
後ろから寒い風が吹く。
まるで冬のように寒い風だった。
振り向くのが怖い。
階段を下りていく。
階段を下りていく。
階段を下りていく。
いつになったら一階につくんだ?
だが、わかったことがある。
後ろの気配に振り向きたくない。
階段を下りていく。
※
どれだけ時間がっただろう。
俺は階段を下りることも忘れて、その場でしゃがみこんだ。
後ろから風が吹き続ける。
振り向いた先に見えたのは…
※
大学新聞
二日前から行方不明の学生
我が校の歯学部1年の甲斐篤志を見つけた方は至急○○教授のところへ連絡下さい。
一人で深夜に無断で大学へ入っていった姿を目撃した情報有り。
その後、守衛が探すも血液が大量に付着したスマートフォンが教室に置かれていた以外手がかりがありません。
警察も今朝から捜査に出ていますが、未だに発見できていません。
見つけた学生の方は○○教授に連絡してください。
~完~
大学生にあった怖い話 碧木ケンジ @aokikenji
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