第6話 〜聖遺物はここにありますか?〜

 英雄堂では古美術品、骨董品の他に特別な力を持つ聖遺物も保管してある。


「すいません、いらっしゃいますか?」


「はい!すいません、奥で商品の整理をしていて」


「いえいえ、まだ時間が早い様でしたね」


「鑑定依頼ですか?」


「そういう訳ではないんですよね」


「そうなのですね、何かお探しの品ですか?」


 その綺麗な白銀の様な髪の女性が微笑みながら


「聖遺物ってご存知ですか?」


「……聖遺物ですか?私も実物を見た事は無いですけど歴史のある教会などが所有している様な物なので私には」


「ふふふ、アメリカのヴァルキリーから聞いていますよ」


「…アメリアの知り合いですか?」


「その様な所ですね」


「…では奥の部屋へ」


「わかりましたわ」


 普段はお客を入れない部屋へと案内する。


 アメリアを知っているという事はそれなりの立場なのだろう。


「ここです」


「あら、何も感じませんわよ?」


「結界を張っているので外に漏れる事はありませんよ」


「なるほど、確かに優秀な方のようですね」


「どうぞお入りください」


 ドアを開けると明らかに建物の奥行きとは違う空間が現れる。


「広すぎじゃありませんか?」


「ここの部屋は空間拡張と結界によって外と隔離されてますから」


「ヴァルキリーのいう事もあながち間違いでは無いようですね」


「それでお探しの物は?」


「聖遺物の中でも癒しに特化した物を探していますの」


「癒しですか…因みにどの程度ですか?」


「死にかけていても助かる程度の代物を」


「残念ながらそこまでの聖遺物はありません」


「!どういう事ですの!ここにはあるって」


「…聖遺物が欲しいのですか?それとも誰か助けたい人がいるのでしょうか?」


「…後者ですの」


「ここにはありませんが、私個人の所有する中には存在します」


 明仁はその銀髪さんに何か事情がある事を感じ、そんな提案をした。


「でしたら、それを譲ったいただけますか?」


「残念ながら気難しい奴の上高い素養が無いと扱えません」


「私ではダメなのですね…」


「はい、なので一緒にその方の元に行ってもらい治すというのはどうですか?」


「分かりました、お願いします」


「では応接室でお待ちください、すぐに準備します」


 二人で部屋を出ると


「明仁様お待たせしました」


「大丈夫だよ、それより彼女を応接室に」


「かしこまりました、お客様どうぞこちらへ」


 銀髪さんとレティスは応接室へと向かった。


「あの貴方は?」


「失礼しました、明仁様の元で侍女をしています。レティスと申します」


「私は…」


「明仁様が聞いていないのにお客様の素性を聞くわけにはまいりませんので…紅茶をどうぞ」


 紅茶を飲み切る頃に明仁は部屋へと来た。


「すみません、遅くなりました」


「いえ、紅茶をいただいておりました」


「レティス、ありがとう」


「いえ、当然の事です」


「それでこれから向かっていただけるのですか?」


「すぐに向かいたいと思います、お手を」


「えっ、な、何を考えていらっしゃいますの!と、殿方の手を」


「すみません、転移の為にお客様に転移場所のイメージをお借りしようと思いまして」


 銀髪さんはさらに驚く。


「て、転移ですって!そんな」


「急いだ方が良さそうなので」


「そ、そうですね、でもお付きの」


「終わったらまた戻ってきますので…レティス、お店の事任せたよ」


「いってらっしゃいませ」


 銀髪さんが転移を思い浮かべると明仁と二人は消えてしまった。



「ここは、おと」


「あの方ですね」


 明仁は目の前にいるベッドに横たわる男性に向けて杖を向ける。


「ちょ、ちょっと!何をしますの!」


「治療ですよ、これがアスクレピオスの杖です」


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名称:アスクレピオスの杖

製作者:アスクレピオス


 医学、薬学の神と言われたアスクレピオスが生前まで使っていた杖。

 アスクレピオスは死者蘇生まで出来る力を得たが実行した事によって罰を受ける事になってしまった。


しかしその力は杖にも宿り全てを癒し、死者さえも蘇らせてしまう力を持つのである。


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「そ、そんな!神話級の聖遺物ではないですか!」


「内緒にしてくださいよ、それが今回の報酬という事で」


「わ、私が誰か」


「お互いの為に聞かないでおきますよ」


 明仁は杖を向けると緑色の光が寝ている男性を包む。


「これで明日には目が覚めるでしょね」


「ありがとうございます」


「では戻りましょう、お客様」


 部屋からまた帰る二人であった。



「おかえりなさいませ、明仁様、お客様」


「ただいま、レティス」


「お客様、どうかいたしました?」


「レティス、疲れたようだから休んで貰って…」


「どうぞ、お客様」


 明仁は応接室から出て、レティスと銀髪さんが二人になった。


「レティスさん、明仁さんって何者なのでしょうか?」


「明仁様の事を話す訳には参りませんので」


「ごめんなさい、紅茶をいただいても」


「勿論です、お客様」



 その後銀髪さんは帰って行った。



「明仁様、あの方はどなたなんでしょか?」


「欧州の聖女じゃないか?彼女のお父さんを治してと頼まれた」


「流石明仁様、わかるとは」


「まあ、名乗られたら後々厄介な事になるからね」



 銀髪さんが訪れて、1ヶ月後


「明仁様、お荷物が」


「何だろ…」


「それは、ホーリーナイトの証ですね」


「俺はホーリーナイツには入るつもりは無いから返さないとな」



 送り返したらまた聖女に会う事になる明仁であった。

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英雄堂〜古物・珍品・アーティファクト扱ってます〜 遊遊 @yuyu68

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