キンさんは学ばない。

 魔王城には、様々な人…………方がいます。というか、王城とほぼ変わらない役職しかありません。騎士、騎士団長、シェフ、庭師、メイド、侍女、宰相、執事、宮廷魔法術師、宮廷魔法術師長……などなど。

 そして、この魔王城で一番権力のある方はもちろん魔王さん…ではなく。


「ふふふ、美味しいかしら?ユズちゃん」


「はい!7日分の疲れが少しずつ浄化されています!!」


「良い笑顔ね〜。ね?キン」


「この世で最も素晴らしいと思います」


「ふふふ、キンさんったら!クッキーでも如何?」

「そういえば、甘いもの好きだったものねぇ?」


「いやっ、おれ甘いモンむりっ———!?」

「「遠慮しなくてもー」」


 魔王城で一番権力のある方は、今、一緒にお茶をしてる魔王妃、サミュリスさんです。


「何故、また何も連絡せずに仕事を持ってきたのだ…」


「バカだからじゃないですか?異次元の」


 そう、このキンさん馬鹿は、またもや勝手に仕事を持ってきたのです。

 せっかく、今日は読書をしようと思っていたのに…何をしてくれてんですかね、この人。


「もががもがもが……」


「どんな内容だったかしら」

魔花マカの植え替えですね。大量らしいので、私は多分、傍観するしかないです」

「魔花の?なら、ユズちゃんが主力になると思うわよ〜?」

「そうですかね?」

「ええ。だって、この時期でそんな大規模な植え替えをする必要があるのって、アルラウネの幼体だけのはずよ」

「あぁ、アルラウネですか………」

「ふふっ、モテるものねぇ」


 魔花マカというのは、簡単に言うと花の魔物のことです。と言っても、ほとんど花の見た目で、さらに魔物といっても、魔花はその場でくねくね動くだけなのです。ですが、アルラウネだけは移動ができるのです。それは幼体でも変わらず、見た目も、攻撃性の高い見た目をしています。

 そして、私は何故かアルラウネに、と言うよりも賢い生き物にとても好かれる体質をしている様で、物凄く絡みつかれるのです。


「まあ、それなら早く終わりそうですね。では、そろそろ行きますね」

「頑張ってね」

「はい、ありがとうございます。また、お茶しましょう」

「そうね」


 いまだにもがもが言ってるサミュリスさんに手を振って、キンさんをレグさんが引きずって出発します。


「レグさん、目的地はここからどのくらいでしたっけ」

「前にもらった魔道車で40分くらいだな」


 意外と遠いようです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

レグさんとキンさん、頑張ります。byわたし 不定形 @0557

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ