機械人形は夢を見る

文月 翠

0話 旅立ったその先は

肌寒い朝に私は列車に揺られている、生温くなった紅茶を飲みながら何も無い草原に続く線路をガタンガタンと走っている、その間私は何もせずただぼうっと外を見続けている、懐中時計がカチカチとなっていてそれが中々心地が良いものだ。


この車両には私1人しか乗っていない、それもそのはず、私はあえて人が居ない後ろの車両の席に乗ったからである、別に人が嫌いな訳ではない、ただ1人でこの景色を眺めていたかっただけだ。



私は機械人形としてこの世に生まれた偽りの人間、生みの親の顔も知らない知らない、生まれてから容姿は変わらず、戦う事だけ教えられ、それを普通だと思っていた。だけど終戦を迎え、戦いが要らなくなった。


露頭に迷った私たち機械人形達は結局売られる形で世に出た、私を買った人はとてもよくしてくれた、どうしたらいいか、なにをして生きていけばいいか、そんな事を沢山教えてくれた、今思えば感謝しかない、この懐中時計もそのひとにもらった物だ、今もちゃんと動いてる、私の唯一の宝物。


この世界は生まれ変わり自由になった、昔の面影はもうない、鉄や火薬の匂いも、物や人が燃える匂いももう残っていない。


「そろそろ目的地かな。」

私は残っている紅茶を飲み干す。


西の国オーベスト、世界の国の中でも学問が発達した国、ここが私の一人立ちの出発点だ。

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