AfterStory:#4「Adventure」

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 ◇


「うわぁ……! すごいな、帝都ってこんなにもいろんなものがあったんだなぁ……!」


 幽体になり、帝都で今まで行けていなかったところをくまなく冒険することができるようになった。町並みを人間ではあり得ない速度で飛翔し、商会の倉庫に入ってみたりして楽しく遊んでいた。


 しかし誰に手を振っても、行く手を阻んでも、反応の一つすらしないことには少し寂しさを覚えてしまう。だがワクワクする冒険の前ではすぐに忘れ去るものだった。


「あっ、そうだ。帝城に行ってみようかな? 権力もこの身体の前じゃ効かないからね!」


 我ながらナイスアイデアだと思う。なぜなら大帝国の城を見に行く機会などないのだから。


「帝城は目立つから分かりやすくて良いね! 行くぞ!」


 何があるのだろう、という期待感で胸がいっぱいになり、飛翔の速度も先程よりも早いものとなった。もはや看板の文字も目では追えない。そうして全てが線のように見え始めた頃、大きな壁を通り抜けたのが分かった。恐らく帝城だ。


「最初に何を見ようかなぁ……やっぱり皇帝陛下の部屋かな? 皇帝のプライベートって一度は見てみたいよねぇ……!」


 それは日本においても同じ考えな気がする。人々はいつだって富豪や権力者の暮らしに憧れ、どういうものなのかと自らの夢を思い描くのだ。

 ならば僕の考えも至極当然と言えるだろう。


「えーっと、ここらへんかな――っと。皇帝陛下を発見だ~」


 そこには、椅子に深く腰掛けて書類に何かを書き込んでいる皇帝がいた。僕が興味深く見ていると、おもむろに深呼吸を始め、遠い目をしながら独り言のようにつぶやき始めた。


「――来訪者か。茶も出せないがゆるりと過ごすがよかろう。どうせ貴様は危害を加えるつもりなどないのだろうからな」

「も、もしかして僕の事が見えてっ!?」


 だとしたら恐ろしい。この世界の管理者が与えた幽体――それを見破るなど人間にできるはずがない。しかし抵抗をしたいわけでもないし、皇帝の言う通り僕は危害を加える訳では無い。軽く胸をなでおろし、返答を待つ。


「私は様々な事を知っているのだ。しかし貴様の声も姿も私には分からない。男か女か、人か悪魔か天使か。もしかしたら龍なのかもしれぬな。ただ私には分かるのだよ。この世界の行く末を――辿るべきだった道を。それを語るのはまた次の機会に。貴様が姿を見せるまでは私も話さぬ。また来るが良い。待っておる」


 その言葉に、僕はなんとも言えない複雑な感情を抱いた。それは恐怖かもしれないし、興奮かもしれない。あるいはその両方か。

 まぁ、結局のところは姿を見せなければ話が進まないのだということに帰結するのだ。気にせずに帝城見学をするとかにしたほうが良いかなぁ……。


「来訪者よ。好きなだけ帝城を見て回れば良い。どうせ私以外に貴様を感知できる者はおらんからな」

「……では、お言葉に甘えまして。失礼します」


 姿は見えてはいなくとも、礼儀は尽くすべきだろう――というか、今のが演技で見えていた時が一番怖い。皇帝ともあろう人が嘘をつかないわけがないのだ。

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異世界転生したら神以上に強くなってしまったんだが? ねくしあ@『暗殺者』毎日投稿なう! @Xenosx2

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