第2話 リビングデッド

 私の趣味は人形を作ること。

 人形に服を作ることも大好きだ。

 だが、その人形の種類で家族と折り合いがつかない。

 自分で言うのもなんだけれど、人形や服の完成度は高いと思う。


 父はフィギュアが好きで改造している。母は着せ替え人形が好きだ。姉は三等身のブライス人形を集めている。祖母は市松人形を可愛がっていた。

 それなのに私だけ集めた人形と共にアパートで強制一人暮らしさせられた。

 みんなが集めている人形にはやっぱり一体くらい動きそうなものもいるのに。


 まあきっかけは理解しているつもりだ。

 私の部屋は普段鍵がかかっているのだが、鍵が開いているときはドアが開けっぱなしになっているのだ。

 中学高校は少なかった人形の数が、社会人になった頃に飛躍的に増えたことが原因だ。職場でのストレスを人形作りに没頭することで昇華していたからだろう。


 増えに増えた人形を見て、一体の市松人形を大事にしていたお祖母ちゃんが腰を強く打って入院した。その衝撃で大事な市松人形の首がもげてしまった。


 すぐに修理に出されたものの、大事にしていた子供を失ったお祖母ちゃんは一気に老け込んでしまった。


 この大惨事に私の部屋を確認しにきた家族は、『私とは気が合わない』とアパートを用意した。引っ越し費用を負担し家具家電も買いそろえてくれる至れり尽くせりだ。


 今は人形たちと一緒にいられるから幸せだ。


 私が集めている人形はリビングデッドドール。

 中学の時にネットで見かけて一目ぼれした。

 彼女らはとても愛しい。


 同じ趣味の友達も見つけた。とても気が合うが、彼女はどうしても部屋から出たくないらしい。

 どうしても会いたかった私は彼女のSNSアカウントを見つけ、人形の綺麗な瞳に映った彼女の容姿を特定。大体住んでいる場所までは見つけた。


 会えない、とはっきり言われた後つい勢いで作成した彼女を模した人形。彼女からも「かわいいですね」と反応が来たのに、それから連絡を取ることはできなくなった。


 しかし、彼女のSNSをこっそりのぞいてみると、どうやら学校に通いはじめたらしい。

 外界を毒素の海と呼んでいた彼女……、もしかしたら私の作った人形を見て勇気が得られたのかもしれない。


 私は自分がとても誇らしくなった。

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