異世界ベスパ!!

えりまし圭多

第1話 ◆異世界ベスパ!!

 不意に感じた喉の渇きと空腹感で目が覚めた。

 足は汗ばむくらい暑いのに、上半身は寒い。


 ――ああ、コタツで寝ていたのか。

コタツに入ったまま、座椅子に座って眠いっていたようで、腰も背中も痛い。

 コタツの上のデスクトップパソコンの画面を見れば、昨夜記憶が途切れる直前までプレイしていたネットゲームの画面が見えた。

 所属しているチームのチャット欄にはチームメンバーのメッセージが残っていた。


 ――寝落ちはハゲ

 ――あけおめ、新年初寝落ち

 ――今年も安定の寝落ちエキスパート


 などと、ゲーム中に寝落ちした俺を弄るチャットログが並んでいた。


 昨夜はネットゲームの友人達と、ゲーム内で騒ぎながら新年を迎えた。

 その後、チームでわいわいと遊んでいて、途中から記憶がない。

 システムログを見れば、自分の死亡ログと復活時間切れによる復帰ポイントへの帰還のメッセージが残っていた。


 独身一人暮らしアラフォーサラリーマンの俺は、日頃から寝落ちの常習犯である。チームメンバーもすっかりそれに慣れてしまい、今日もいつものように煽りログが残っているだけだった。

 寝落ち後、ヒーラー様が手厚く介護してくれていた戦闘ログも残っていて、申し訳ない。


 時計を見ると朝の七時を過ぎており、窓の外はもちろん明るい。

 ログを見れば、チームメンバーは朝方まで遊んで皆ログアウトしたようで、チャットルームには寝落ちした俺だけが残っていた。

 今夜ログインしたら謝らないとな。新年早々申し訳ないことをした。


 ゲームからログアウトをして、のろのろとコタツを出て冷蔵庫を開けた。

 昨夜、インスタントの天ぷらそばを食べただけなので、腹が減っている。そして、コタツで寝落ちをしてしまったので、喉も渇いている。

 普段から料理はしない為、冷蔵庫の中はほぼ空である。ペットボトルのお茶があるだけだ。

 そのお茶で軽く喉を潤して、食べる物を買う為にコンビニへと行くことにした。


 ダウンジャケットを羽織り厚手の手袋付け、免許証と財布の入ったショルダーバッグを引っかけて、愛車の置いてあるマンションの駐輪場へと向かった。外に出れば、うっすらと雪が積もっていた。

 このくらいなら平気だろう。

 

 俺の愛車はベスパ。

 かれこれ二十年近く乗っているスクーターで、今ではヴィンテージなんて言われている。

 王女と新聞記者の休日を描いた、かの有名な映画に憧れて中古で購入した、薄い緑色のベスパ。それが俺の長年の愛車である。

 少し癖のあるこのバイク、俺がまだ大学生だった頃はちょっと流行っていた気がする。このレトロな感じのカラーと、丸っこいフォルムに魅せられて、老朽化による故障に悩まされながらも、今でも大切に乗り続けている。

 俺がこのベスパを買ったバイク屋も、主人が高齢を理由に少し前に店を畳んで、故障した時の修理に困るようになり、時間の流れを体で感じつつも、もうちょっとだけ、まだ動くうちは、と乗り続けている。


 寒い日のベスパちゃんは非常にご機嫌斜めだ。

 今日みたいな日は、キックレバーを何度蹴っても中々エンジンがかからない。チョークレバーを引っ張りまくるが、今日のベスパちゃんはとても不機嫌である。

 そんなとこも可愛いんだけどね。

 ようやくエンジンがかかった頃には、自分の体がすっかり温まって汗ばんでいた。


 エンジンがかかったのでコンビニへと出発。

 スクーターなのにオートマチックではないところも、ベスパちゃんの魅力である。

 ブレーキも右のハンドルとフットブレーキで少し癖があるし、アクセルは離しても自動で戻らない。

 そのおかげで半クラが楽だとか、走行中右手を離せるとか、ポジティブに考えると便利だと思える。

 そしてこのベスパちゃん、非常にグルメである。

 ガソリンを入れる時に、一緒に2サイクル用のオイルを混ぜて入れないといけないのだ。つまり、ガソリンを満タンで入れてはいけないのだ。オイルを入れ忘れるとエンジンが壊れてしまう。古いバイクなので壊すと修理に時間と金がかかる。

 セルフのガソリンスタンドだといいが、たまに有人のガソリンスタンドに入った時に、「ガソリン満タンにしないで少し少なめで」と言うと不思議な顔をされる事もある。

 しかも俺のベスパはガソリンメーターが付いていない。ガス欠が給油のお知らせである。

 そんな少し手間のかかるレトロなベスパちゃんだが、手間がかかるほど可愛いと言うか、うちのベスパちゃんが一番可愛い。もちろん異論は認める。


 ちょっとわがままで手間のかかるベスパちゃんに乗って、コンビニへ買い物へ。

 朝方まで雪が降っていたのか、車道には雪は積もっていないが、氷が溶けた後のように固形物混じりの水が残っている。

 少し怖いのであまりスピードを出さずに行こう。

 俺のベスパちゃんのブレーキは、お世辞にも性能がいいとは言えない。フットブレーキは急に強く踏みすぎると後輪がロックして非常に危険だ。故にエンジンブレーキを多用する。つまり急ブレーキが苦手なのだ。

 今日みたいな、路面に少し水が残っている日は特に気をつけなければならない。


 のんびりとした速度で住宅街の道を走る。半ヘルなので冬の空気の冷たさを人一倍感じる事が出来る。ようするに寒い。それもまた悪くない。


 冬の冷たい空気を感じていた俺の目の前に、突然トラックが建物の陰からバックで出て来た。

 アッと思ってブレーキを掛けたが、トラックは目の前だった。

 急ブレーキのせいでエンジンが停止する。これもうちの古いベスパちゃんではよくある事だ。そして、急なブレーキで後輪がロックして、水が残る路面の上をスリップしてそのままトラックの前輪と後輪の間へと突っ込んだ。


 あ、これ死ぬんじゃね?







「いたたたたた……えぇ!?」

 手を突いて体を起こすと、ぶつけたような痛みが体に残っていた。そして地面が柔らかい。

 道路をベスパで走っていて、確実にトラックに突っ込んだと思った。

 アスファルトの上でこけたのなら、地面が柔らかいはずはない。そして、視界が緑である。

 見慣れている光景は、コンクリートの建物が並ぶ灰色っぽい光景だ。だが目の前は緑である。すごく緑が溢れまくっている。

 コンクリートの建物なんかどこにもない。目の前にあるのは緑溢れる森である。

 あるぇ? トラックにぶつかって、緑地公園に吹っ飛ばされたか? そんな場所近くにあったっけ?


 あっ! ベスパ! 俺のベスパはどこだ!?

 トラックにぶつかったんだ、俺だけ運良く投げ出されて助かったとしても、ベスパちゃんはダメかもしれない。

 もう古くて修理の部品も取り寄せるのも時間がかかっていたので、今回の事故で廃車だろうなぁ。

 少し痛む体で立ち上がり周囲を見回すと、俺のベスパが倒れて転がっていた。

 なんと、トラックにぶつかったはずなのに、原形を留めている!!


 え? ていうかベスパごと吹っ飛ばされたのか!?

 周囲は森しか見えない。

 俺の周りの木々は背が高く、その隙間からマンションや住宅と言った建物を見ることはできない。

 違和感しかない。

 体を起こした時に地面が柔らかかったのは、地面が草に覆われているからだ。芝生ではなく背の低い草だ。

 そして、雪の降っていたような様子はなく、気温も先ほどまでより随分と暖かい。


 俺がいる場所は、少し開けた広場のような場所で、木々の隙間には人が通れそうな道のような空間がある。

 どこだ、ここ? 近所にこんな場所があったとは記憶はない。


 混乱しながら倒れているベスパのところまで行き、車体を起こして事故の影響を確認する。

 トラックにぶつかったはずなのに、ベスパはほぼ無傷である。

 少し草が付いているだけで、新しい傷は増えていないような気がする。

 キーは刺さったままなので、エンジンがかかるか確認しよう。


 キックレバーを蹴ると、いつもの不機嫌さが嘘のように一発でエンジンがかかった。

 それと同時にスピードメーターの上にホログラムのような青っぽい半透明の画面が浮かび上がった。

「は!? 何だこれは!?」


【ベスパ125】

→150にアップグレード可能


 意味がわからず思わずその画面に触れてしまった。

 ピロンっとゲームで決定ボタンを押した時のような音がして、ベスパからシュワンと光の靄が出た。

「え? 何だ!?」

 光っただけで見た目はあまり変わっていないが、画面の表記が変わっている事に気付いた。


【ベスパ150】

▶装備可能

 □75㎜無反動砲


 俺のベスパは確か125だったはずだが、150と見える。免許は大型まで持っているので150でも問題ないが、無反動砲って物騒な単語が見えるぞ!?

 いや、そんな事はどうでもいい、一体どういうことだこれは!?

 このホログラムのような画面はなんだ! 俺のふっるいベスパにそんな機能があるわけない!! そもそも何もないところに、こんな画面が出てくるなんて非現実的過ぎる!!


 つまり、これは夢だ!

 コンビニに行く途中事故った俺は、そのまま死んだか死にかけて夢を見ているんだ!!

 いや、もしかすると事故ったのすら夢かもしれないぞ!!

 そうだ、昨夜寝落ちしてそのまままだ寝てるんだ!!

 初夢で事故なんて嫌な初夢だな、おい。

 あ、初夢は一日の夜に見る夢だからこれは初夢じゃないからセーフ。


 まぁ夢なら気にすることないかー。よぉし、この無反動砲ってボタン押しちゃうぞー!!

 ぽちいいいいい!!


 ドンッ!!


 ベスパの座席部分から長い筒が生えて来て、フロントを突き抜けていった。

 そして、車体の後部の左右に短めの筒が三本ずつ、合計六本現れた。


 ええ、なんだこれ。無反動砲ってことは無反動砲だよな!?

 こ、これは、自走砲して名高い、バズーカベスパと言うやつでは!?

 凄く頭悪そうな見た目だが、コスパが良く性能も悪くない、ベスパ乗り憧れの伝説の浪漫兵器。

 やだ、格好いい。


 や、シートの下に砲身があるとか、男として不安しかないな。

 夢だから平気なのか!?

 でも、これどうやって撃つんだ?


【ベスパ150】

▶装備可能

 ■75㎜無反動砲(6/6)

  ・簡易操作OFF


 ここの簡易操作ってとこをONにすればいいのか?

 何だかゲームみたいだな。とりあえずポチっとな。

 おお、右のハンドルにボタンが生えて来たぞ。つまりこれを押せばいいのかな?


 ちょっと撃ってみていいかな?

 うん、ベスパに無反動砲が生えて来るとか夢でしかないし、撃っても問題ないよな!?

 跨がって撃つのは怖いから、降りたまま撃ってみよう。少し距離も取った方がいいのかな?


 ポチッ。


 直後、轟音と共に正面の木が吹き飛んで、爆風と破片がこちらまで飛んできた。

「ヒェ……、恐ろしい威力」

 もう少し離れて撃たないと危なそうだな。

 それにこの威力、夢の中とは言え、絶対に人に撃ってはいけないな。もちろん、動物に撃ってもいけない。





 なんて事を思った時が俺にもありました。

「うおおおおおおおおお!! 熊さん足速すぎね???」

 今、俺は、大きな熊のような生き物に追いかけられ、ベスパに乗って絶賛逃走中だ。

 熊のようなであって、熊ではない。

 熊を大きくしたような体をしているのだが、頭部が鳥の頭である。フクロウ? ミミズク? なんかこう猛禽類っぽい頭をしている。


 森に無反動砲をぶっぱなした後、その音に反応したのか、この熊っぽい生き物が現れた。

 びびって思わず無反動砲を撃ち込んだけれど生きていた。

 ええ、強い。

 そのせいで熊を怒らせてしまったようで、思わずベスパに乗って逃げした。

 そしてそのまま、現在進行形で追い回されている。夢の中とは言え、熊に襲われるのは怖いので仕方ない。


 無反動砲を積んでいると、その重さと大きさのせいで速度が出ないので、半透明の画面から装備を解除すると、普通のベスパちゃんに戻ってくれた。

そんなわけで、奇妙な熊から逃げているのだが、この熊、思ったより足が速い。

 スピードメーターは六十を超えている。なのに一向に振り切れない。


 森の中なので道は悪いが、ベスパで走れるだけの幅はある。

 逃げるんだよおおおおおお!!

 無反動砲を撃ち込みたいところだが、その為には車体の向きを変えなければいけないし、先ほど避けられているので、無理に攻撃しても効かなかったら、その後が怖い。

 やはり、逃げるに限る。


 って、まじかあああああああああ!!

 い き ど ま り ! !


 森が突然途切れ開けた場所に出たと思ったら、目の前には岩肌が剥き出しの横幅が広くて高い崖がそびえ立っていた。

 まずい、非常にまずい!! いや、夢だからそろそろ覚めてもいいんじゃないかな!?

 そんな事を思うが、一向に目が覚める気がしない。

 無反動砲ベスパは浪漫の塊でワクワクするが、この状況は嫌だ。

 これが寝落ちの代償か!? もう寝落ちしません!! 寝落ちしてヒーラー様に介護して貰うような事はしません!! だから許して!!


 なんて事をお祈りしても目が覚めない。

 夢の中とは言えば熊に襲われて食われたりするのは嫌だ。

 

 崖の手前で横に曲がり崖と併走するように走り、ユーターンして向きを変え、追ってきている熊もどきの方……ではなく熊の進行上の崖へと車体を向けた。

 ウインドウを操作して無反動砲を装備。


【ベスパ150】

▶装備可能

 ■75㎜無反動砲(4/6)

  ・簡易操作ON


「いけえええええええええ!!」

 ドーンッ!

 と爆音をさせて、熊が走ってきている手前の壁に弾を撃ち込んだ。

 爆音と爆風で熊が怯んで立ち止まった。

 パラパラと崖から小石が崩れて、熊もどきの上へと落ちる。

もう一発。熊ではなく崖に撃ち込む。

 ドーンッ!

 再び爆音が盛りに木霊する。


 ガラ……ッ!


 よし来た!

 無反動砲で弾を撃ち込んだ辺りは大きく抉れ、崖が上の方がバラバラと崩れ始めた。

 ひとつ大きく崩れたら後は早い。

 ガラガラと大きな音を立て崖の一部が崩れ、その落下地点にいた熊もどきの上へ、岩が降り注いだ。

 巻き込まれてはたまらないので、ベスパの向きを変えて崖から距離を取った。


 崖の崩落が止み、熊は完全に埋まってしまった。

「倒した……かな?」

 念の為にもう一発撃ち込んでおこうかな。

 熊が埋もれている瓦礫にドーンッともう一発撃ち込んでおいた。


【ベスパ150】

▶装備可能

 ■75ミリ無反動砲(1/6)

  ・簡易操作ON


 無反動砲と書いてある横の数字が残弾数なのだろう。一発撃つごとに減っている。

 残弾は後一発だ。何とか倒せたようでよかった。


 カラ……ッ!


「え?」

 何か音がしたような……。熊の埋まっている場所を見ると、岩がガタガタと動いている。

 マジかよ!!

 ガラガラガラガラララッ!!


「グオオオオオオオオオオッ!!」


 生きてるうううううううう!!!

 ボロボロになっているが、まだ生きている熊が崩れた岩の中から立ち上がった。

 嫌だもう! 夢ならそろそろ覚めてくれ!!

 と思ってもやっぱり覚めてくれない。

 くっそ!

 ならば最後の一発。俺が死ぬか、お前が死ぬかだ!


 立ち上がっていた熊もどきは前足を地面に付き、四本の足でこちらへ走ってくる。

 走って来る熊の正面って、急所を狙いにくいんじゃなかったっけ?

 そんな不安な事が頭を過るが、細かい事を考えている余裕などない。

 最後の一発を撃ち込むしかない。大は小を兼ねる。無反動砲さんなら、どうにかなるかもしれない。

 倒せなかったら俺が死んで、夢から覚めるだけだ。


「うおおおおおおおおおおお!!」

 ボタンを押すだけなのに、声を上げて気合いを入れながらポチっといった。


 ドーンッ!!


「名前は知らねーが、お前は強かったよ」

 舞い上がった砂煙が収まった後には、頭が吹き飛んだ熊もどきが転がっていた。

「ただ、俺のベスパがもっと強かっただけだ」

 夢の中だから恥ずかしいセリフだって言えてしまう。

 いや、ホント熊さん強かった。正直勝てる気がしなかった。

 そしてうちのベスパちゃん強い! 最高!! かっこいい!!!


 ピロンッ!

 電子音がして、半透明の画面に文字が流れた。


【ベスパ150】

▶装備可能

 ■75ミリ無反動砲(6/6)

  ・簡易操作ON

→新機能追加可能

 ・簡易ショップLv1

 ・簡易収納Lv1


 なんだろう? よくわからないけれど追加出来る物なら追加してしまおう。

 お腹すいたし、ショップって何か食べ物売ってるのかな。 

 新機能追加可能の文字を触ると、画面に簡易ショップと簡易収納の文字が追加された。 簡易ショップの文字を触るを画面が切り替わり、商品リストが出て来た。

 コンビニみたいな品揃えだな。値段もコンビニっぽい。右上にある数字は俺の財布の残高か?

 とりあえず腹が減ったので食い物を買おう。フライドチキンと弁当とお茶だな。

 商品名を触ると右上の数字が減った。

 あれ? 物はどこから出てくるんだ?

 と思ったら、突然ベスパのシートがパカッと開いて、弁当と袋に入ったフライドチキンとペットボトルのお茶が出て来た。

 夢の中だというのに普通に暖かいし、味もする。


 飯を食いながら、半透明の画面を弄る。

 簡易収納ってなんだろう。

 ポチッと触って見ると、いつもベスパに積んでいる2サイクル用オイルと計量カップの文字が見える。右上にはやはり俺の所持金らしき数字がある。

 その下にオウルベアーいう赤い文字が点滅している。

 何だろう。とりあえずポチ。

 ポチるとオウルベアーという文字は他の文字と同じ白色になり、そのオウルベアーという文字の横に「解体」と書いてあるボタンが出て来た。

 よくわからないけど、ポチ!

 オウルベアーがオウルベアーの肉とオウルベアーの皮とオウルベアーの魔石に分裂した。

 魔石の横には使うというボタンがあるのでこれもポチ。

「うわっ!」

 いきなりベスパから光の靄がでてびっくりした。


【ベスパ150】

▶装備可能

 ■75ミリ無反動砲(8/8)

  ・簡易操作ON

 ■簡易ショップLv1

 ■簡易収納Lv1


 おお、弾数が増えたぞ! そして毛皮と肉の横には「売る」というボタンがあるので、ポチってみたら所持金らしき数値が増えた。

 なんかゲームみたいで面白いな!

 ところでオウルベアーってなんだ!?


 ふと気になってさっき倒した熊さんを見ると、その死体が消えていた。

 ええ? さっきの熊さんがオウルベアさん!?

 何だかよくわからないけど、熊さんを倒したらベスパの機能が増えて、お金も増えたって事?

 マジでゲームみたいだな。

 まぁ、夢の中ならそういうもあってもいいな!

 せっかくだから、目が覚めるまで遊び尽くそう!!


 俺の可愛いベスパちゃんは、もっと機能が追加されて強くなったりするのかな!?

 なんだかワクワクして来たぞ!!





 これが夢ではなく異世界だという事に、俺が気付くのはもうちょっと先の話。



 そして、この世界でベスパに乗れるのは俺だけと知るのは更に先の話。

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