恋占魔女とやり手な王子。
コウサカチヅル
本編
「だから、何度も申しあげているでしょう、王子。わたくしでは貴方様のお相手は告げられぬ、と」
とっても見目麗しいこの国の第二王子であるジュード様に向かい、『
対するジュード様は、猫っ毛な金髪をさらり、と揺らしながら
「こちらも
「〜〜っ」
言えるわけ、ないでしょう!
わたくしは目の前の淡く光る水晶を、
(貴方様といろいろ相性バッチリな運命のお相手は……わたくしです☆なんて!!)
✿✿✿✿✿
今年で十九歳になるジュード王子は、十年前にわたくしの元へ初めておいでになった。そのときわたくしは十二と、まだまだ幼かったけれど、
占いの結果がなによりも重要視されるこの国で、中でも『恋占』は人々最大の関心事だった。運命の相手との出会いは、自分の生活が栄えて
それが国の
(王子を占ってわたくしが映ったときは、目が点になったわよ! 無理無理、王族にお嫁入りとか!! わたくしは人々の恋をにまにま眺め、応援するだけの出歯亀でありたいのよ……!)
それからわたくしは……しらばっくれることに決めた。
自身の能力が疑われては困るので、“わたくしの口からはとても申しあげられない相手”とだけ述べ、以降
王子はそれでも、公務の合間に我が屋敷へ訪れる。正直、週六ペースっていかがなものだろうか。どんだけお相手気になるの??
それから十年、わたくしはつきまといの刑に
わたくしがむーっとむずかしい顔をしていると、美貌の王子は不意に、
「ねえ、こんなにお願いしているのに……あまり焦らさないでよ?」
「ぴぎゅ……ッ!?」
「あはは、かわいい鳴き声。メイヴィス、僕は本当に、どんな相手でも構わないんだよ。運命の相手や、運命の恋ってモノを味わってみたいだけ」
ずりずり、と甘えるように指を這わされ、彼はやっぱり、どこまでも楽しそうに笑みを深める。
「ジュード様!
わたくしが涙目かつ真っ赤になって
「えー? これは誠意だよ? だって、かわいい女性には尽くさなくてはじゃない?」
そう、からからと無邪気に述べたのち、甘い顔立ちをした王子は身を乗りだし、わたくしの耳元で囁いた。
「いい加減、楽になろうよ……そうしたら、いっぱい安心して、気持ちよくなれるんじゃないかな……?」
「ぴええ、色気の
もう日に日にいかがわしくなるし、勘弁してー!!
✿✿✿✿✿
魔女の屋敷を後にしたジュードは、外で控えていた
「魔女様からお答えはいただけましたか?」
「いや全然。ただ、『おねだり』はされたかな。くれぐれも他の恋占師は訪ねてくれるなと」
その言葉に、グレゴリーは気まずげに視線を落とす。
「それは……」
「ふふっ。国の恋占師に総当たり済みなんて知ったら、彼女、どうなってしまうのだろうね」
――震える彼女もそそるだろうから、ぜひ愛でたかったのだけれど。
歌うように語ったのち、ジュードは熱にとろけた瞳で屋敷を
「僕の運命の
急に変化した底冷えするような
本来ジュードは、とても冷酷な王子だ。
常に最大限の利を求め、何事も冷静に判断し、国政に関しては国王からの信頼は、第一王子よりもよほど上――。
ただ、彼には決定的に欠けているものがある。それは、『情』だ。
繰りかえすが、ジュードは非常に冷酷な面を持つ。興味のない者にはどこまでも冷たく、容赦がない。それゆえ、メイヴィスだけが知らないことだが、彼はメイヴィス以外からは常に怯えられ、畏怖されていた。
『恋占』も、過去の彼にとってはより国が豊かになるための
しかし、ジュードは出合ってしまった。自身の運命を知る『恋占』を担う、本来はそれだけの女。なれどひと目見ただけで、恋に落ちてしまったのだ。彼の本能が、告げている。
――この少女は、僕のためのモノだ!!
彼女は結局、『運命』を
彼には何もかも『わかっている』ので、真実を
一応の確認のため足を運んだ他の恋占師だって、こぞってメイヴィスの名を挙げる。あとは、本人が
「君だけなんだ。君の前でだけ、僕はただの『
それはそれは
【終】
恋占魔女とやり手な王子。 コウサカチヅル @MEL-TUNE
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。