アノ小説はなぜドラマ化・映画化・漫画化されたのか? ~あんな事、こんな事が書かれてた! あの人気作はこんなにエッチ?! これであなたの小説も映画になるかも!
第113回 ドクター・ホワイト 心の臨床 その1
第113回 ドクター・ホワイト 心の臨床 その1
「ドクター・ホワイト 心の臨床」は、樹林伸の小説です。
以前レビューしましたパートⅠ、Ⅱの続編です。本作はパートⅢに当たります。
「ドクター・ホワイト」(文庫版は「ドクター・ホワイト 千里眼のカルテ」)
https://kakuyomu.jp/works/16816927859434938319/episodes/16816927862608266566
「ドクター・ホワイト 神の診断」
https://kakuyomu.jp/works/16816927859434938319/episodes/16817139555714333066
浜辺美波が主演したドラマ版は、小説のパートⅡまででした。もし続編があるとすればこのパートⅢからになるでしょう。
――「もう私に出来ることは、一つだけだ。残る時間を娘と一緒に過ごすことだけなんだ。ただ、それだけになってしまったよ」――(ドクター・ホワイト 心の臨床 文庫版 P.17)
プロローグはかなり深刻なお話でスタートします。
ALSに冒されている朝絵は、安楽死を望んでいました。
第一章の章題は「ドクター・ホワイトの帰還」です。
――「それ、誤診です」
いつのまにか患者のベッド脇にいた白夜が、おもむろに立ち上がりながら静かに言った。――(ドクター・ホワイト 心の臨床 文庫版 P.46)
ドラマ版ですっかり浜辺美波の名言となったこのセリフ。健在ですね。
今回は一見アルコール中毒に見えたバーテンダーの野上が、とんでもない計画に基づいて殺される所だったという、物騒なストーリーです。
野上の容体が急変した所に、ちょうど将貴と白夜が久しぶりに高森総合病院を訪れており、研修医の誤診に気づきました。
しかもこの野上の話は、もう一人の白夜(?)とも言える朝絵の話とも深く関わっているのです。
――「薬剤性肝障害……アセトアミノフェン中毒だと思います」――(ドクター・ホワイト 心の臨床 文庫版 P.50)
アセトアミノフェンという名前が、アセトアルデヒドに似ていますね。これは悪酔いや二日酔いの原因物質で、アルコールが肝臓で分解されたときに発生する毒性物質です。
それで症状が悪酔いに似ているのでしょう。誤診しやすい要因があったのですね。
――「アセトアミノフェンは一般的な風邪薬にも含まれている成分です。鎮痛解熱剤としてはもっとも安全な部類に入る薬に、実は肝不全を起こして死に至る副作用があるなんてことは、かなりネットで調べたりしなければ簡単にはわかりません。誰かが教えたか、あるいは
「自殺教唆か、殺人未遂……ってことか」
思わず将貴が口を挟む。
「はい」
白夜がぼろりと呟くと、その場にいた全員の表情が
野上の命を狙う人間の使った方法は、かなり用意周到に、かつ医学的知識がなければ実行不可能な計画に基づいていました。
白夜がいなければ、犯人の思惑通り野上は命を落とす所だったのです。
――美保は震える声で、電話口の男に告げた
「生きてるのよ、彼。どうしてなの? 死ぬって言ったじゃない」――(ドクター・ホワイト 心の臨床 文庫版 P.95)
いや~恐ろしいですね。美保は野上に高額の保険金を掛けており、今回の件で野上が死なずに生きていた事に驚いて、黒幕に電話していました。この黒幕はとても意外な人物です。
ここから第二章に入ります。第二章の章題は「命の値段」です。
――「大変な副作用?」
「はい。薬剤性肝不全。つまり肝臓が壊れてしまって機能を失い、助けるにはもう、肝移植しかなくなってしまうという、非常に恐ろしい副作用です」
「……つまり、死ぬところだったんですか、私は」
「はい。正直に申し上げて、危ないところでした」
(中略)
「野上さん、あなたは殺されるところだったかもしれないんです」――(ドクター・ホワイト 心の臨床 文庫版 P.111~P.113)
白夜はだんだんと社会性を身に着けていましたが、やはりまだまだ一般の人に比べると空気が読めない所があります。
なんと野上本人に、命が狙われている事をストレートに伝えてしまったのです。
さて、いったいどうなるのでしょうか?
◇◇◇◇◇◇
読んでいただきありがとうございました。
次の第114回も引き続き「ドクター・ホワイト 心の臨床」の秘密に迫ります。お楽しみに。
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