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第114回 ドクター・ホワイト 心の臨床 その2
第114回 ドクター・ホワイト 心の臨床 その2
続きです。
――「一億も保険を? あんなただのバーテンのジイサンに?」
「将貴さん、その言い方よくないです」
白夜にたしなめられた。――(ドクター・ホワイト 心の臨床 文庫版 P.152)
やはり野上には高額の生命保険が掛けられていました。この事実を知った時の将貴と白夜のやりとりです。
白夜も人の事を言えない空気の読めなさですが、今回は逆に将貴をたしなめています。野上とのコミュニケーションで特別な思い入れが生じたのでしょう。
――「教えてもらえませんか、その主治医……いえ、そうじゃなくて、朝絵さんが最初にALSの診断を受けた時の担当医を。その時の資料が見てみたいんです」
「どういうことかな、それは」
「それ、誤診かもしれません」
(中略)
「うむ。当時、ALSに関する世界的な論文を次々に発表し、まだ三十代の若さで教授に
「里中賢蔵」
(中略)
「高森総合病院の現院長です。ALSの権威で港医大附属病院の副院長だった。そして、野上さんがアセトアミノフェン中毒を起こす原因を作った人」――(ドクター・ホワイト 心の臨床 文庫版 P.158、P.159)
高森総合病院の院長、里中が朝絵のALSの診断をしており、どうやら誤診のようです。
またもや白夜が誤診を見抜きました。その原因となったのが「熱海プリン」です。
しかもそれだけではありません。野上の命を狙っている可能性も出てきました。とんでもない黒幕登場かと思いきや……
――「はい。運動を
白夜は、朝絵が「熱海プリン」をおいしそうに食べた事から、ALSが誤診である可能性に気付きました。
ここから第三章に入ります。第三章の章題は「権威という名の病」です。
――「医療のことはさっぱりだからな。ただ、お前はその里中って医者に会ってるんだろ。合ったお前の印象が、保険金殺人を喜んでやるような人間には見えなかったっていうなら、それは尊重するよ。お前が言うような理屈はおいといてな」
「まあ、なんでもいい。ともかく、いま一つ
「それは俺も一緒だよ。なんだろうな、この感じ。パズルのピースが一つ足りないような……」
「パズルのピースか……」――(ドクター・ホワイト 心の臨床 文庫版 P.200、P.201)
院長の里中が黒幕とはどうしても思えない将貴。パズルのピースとなるのが意外な人物です。
――「ああ、彼……水樹冬星こそが、この二つの保険金詐欺犯罪の真犯人だ」
(中略)
「誤診なの? ALSは……」
「たぶんね。それを材料に水樹は里中を脅迫したんじゃないのか。天下の海江田の娘を誤診で寝たきりにしたと世間に知られたら、彼は終わりだ。すべてのキャリアを失い、医学界から抹殺されると考えてもおかしくない」――(ドクター・ホワイト 心の臨床 文庫版 P.207)
里中は黒幕ではなく、副院長の水樹に脅されていたのです。
水樹はバランスのとれた人柄で、麻里亜からは院長の里中よりも信頼されていました。なんという意外な黒幕でしょう。
ALSの権威が誤診をしたとあっては面目丸つぶれです。そこに付け込んだ悪質な脅しですね。
――
いちかばちか。しかし他に手はない。
殺人未遂の真犯人が、命を狙っているターゲットの手術をする。しかも
ちょっとでも隙を見せれば、手術中の事故に見せかけて殺そうとするだろう。
それを阻止できるかどうかは、白夜の眼力にかかっている。
「やれるか、白夜」
将貴の呼びかけに白夜は立ち上がった。
「やれます。やってみせます」――(ドクター・ホワイト 心の臨床 文庫版 P.223、P.224)
野上がトイレで頭をぶつけ、急変しました。どうやら水樹と美保の思惑でそのような事態を引き起こしたようです。
他に脳神経外科手術の出来る医師がいません。
絶体絶命の大ピンチ。しかし……
――野上の手術は成功に終わった。
白夜の見立て通り、水樹の行った止血は不完全で、
白夜は、脳外科専門医の仙道に指示された事にして、水樹を見張っていました。
水樹は故意の殺人ではなく、医療事故に見せかけるために不完全な止血を行っていた事を白夜に見抜かれたのです。
そして、間一髪の所で仙道が現れ、事なきを得ました。
◇◇◇◇◇◇
読んでいただきありがとうございました。
次の第115回も引き続き「ドクター・ホワイト 心の臨床」の秘密に迫ります。お楽しみに。
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