第115回 ドクター・ホワイト 心の臨床 その3

続きです。


――「あなたはALSの研究に長く携わり、そのジャンルにおいては権威と言われている。そのあなたが、よりにもよって日本を代表する起業家である海江田誠氏の一人娘を、致命的な誤診で全身不随に追い込み、彼女の人生を台無しにしてしまった。そのことを海江田氏が知ったらどうなるのか。医療業界が知ったら、学会が知ったら、世間が知ったら自分はどうなるのか。それが怖かった。だから見殺しにした。もうこのままALS患者として亡くなってくれたらいいと、そう思ってしまった。違いますか、里中院長」

 里中は押し黙るだけだった。

 その沈黙がすべてを物語っていた。――(ドクター・ホワイト 心の臨床 文庫版 P.253、P.254)


 どんな天才でも、えらい人であっても、決して許される事ではありません。


 まさに、「権威という名の病」ですね。


 でも、里中は水樹の本心を知りませんでした。製薬会社との癒着を匂わせるような事を言われていたようです。


 この時点で改心して、警察の捜査への全面協力を将貴に誓いました。せめてもの救いですね。



――「白夜先生はなぜ、私なんかのために、そんなにも頑張ってくれるんですか。こんな、どうしょうもないアル中のジイサンのために、そんなに……」

「なんのためにって……野上さんが、私の患者さんだからですよ」――(ドクター・ホワイト 心の臨床 文庫版 P.260)


 カッコいいですね。ぜひドラマの続編を作って浜辺美波にこのセリフを言わせたい!


――この怪物を育てた土壌、つまり彼の生まれ育った環境にこそ、まだ何か警察すら知り得ない謎が横たわっている気がした。――(ドクター・ホワイト 心の臨床 文庫版 P.269)


 麻里亜から信頼される程の人格者の実態は、とんでもない化け物だったのですが、なぜそうなってしまったかは私も大変興味ありますね。


 凶悪事件が起こった時、その犯人の生い立ちにクローズアップされます。「三つ子の魂百まで」という言葉があるように、ある人がどのような人間になるかについて、幼い頃にどんな経験をしたかという事はとても大きな意味があるのではないかと思います。


 かくいう私も、幼少の頃の経験は今に多大な影響を与えている事を強く感じます。



――麻里亜の兄である天才外科医、高森勇気の神懸かったメスさばきが、また一人の患者を絶望のふちからすくい上げる。――(ドクター・ホワイト 心の臨床 文庫版 P.273)


 朝絵の手術について多くは描写されませんでしたが、いかに神懸った手術なのかがこの短い文章に集約されていますね。


――「朝絵さん、体調はどうですか」

「うん、だいぶ良くなってきたわ。今日はなんとか、歩行器を使って歩いてみたの」   朝絵の声は白夜にそっくりだった。――(ドクター・ホワイト 心の臨床 文庫版 P.275)


 しゃべれるという事は、病気は治ったのでしょうね。


 ひとまず良かったです。


 さて、ドクター・ホワイトシリーズは、これをもって完結なのでしょうか?


 朝絵が回復した事から、一区切りついたとも言えます。しかし、まだ海江田にクローンの話を持ち掛けた謎の組織の正体は不明なままですので、更に続編があるのではないか、というご意見もあります。


◇◇◇◇◇◇



 読んでいただきありがとうございました。


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 よろしければ、私の代表作「妻の代わりに僕が赤ちゃん産みますっっ!! ~妊娠中の妻と旦那の体が入れ替わってしまったら?  例え命を落としても、この人の子を産みたい」もお読みいただけると嬉しいです。

https://kakuyomu.jp/works/16816927860596649713



 次の第116回は「君の顔では泣けない」です。お楽しみに。

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