第7話(沙織視点) ずっとこんな関係が続くと思っていた

 十五分間、私はある夢を見た。

 

 その夢は昔、勇作と付き合っていた頃のものだった。 

 私にあの時の勇作への思いを全て投げかけるような夢だった。


 ああ、本当にもし戻れるならあの頃に戻りたいって身体が言っている。

 ああ、私、これからどうしよう。



 放課後、新学期、桜の木下で──。


「勇作」

「ん? どうしたんだ、沙織?」


 一年前の春、私は。


 よし、言うんだ。


 手をグッと握り、勇気を振り絞り言った。


「私、勇作のことが好き。だから、私たち」


 すると、勇作は右手をピンと伸ばし、赤面した顔で。


「ちょっ、ちょっと待て。そういうのは男の俺が言っていいか?」


 その時私はわかった、ああ、告白は成功で終わるんだなと。


 先ほどまでガクガクと少し震えていた足が止まり、ホッとする。


「水瀬沙織」

「はい」


 先ほどまではドクンドクンと鳴っていなかった心臓が鳴り出す。


 わかっていてもいざとなるとかなり緊張するものなんだなぁ。

 ずっと、ずっと、勇作と付き合えるなんて夢見ていた。

 その夢がついに叶うんだ。


「俺、沙織のことが好きです。こんな俺と釣り合うとは思っていない。でも、俺でよければ付き合ってください」


 勇作は頭を下げ、私に向かって右腕をピシッと伸ばす。


 私はその手を握り。


「こんな私でよければ、喜んで!」と微笑んだ。


 ボワッと同時に風が吹き桜が綺麗に舞う。

 まるで私たちを祝福しているみたいだ。


 それと同時に、私のスカートが。


 慌ててそっぽを巻く勇作。


「ちょっ、沙織ッ!」


 めくれ、パンツが……はぁっと急いでスカートを両手で抑える。


 勇作に見えてしまったのだ。

 恥ずかしさのあまり、私は赤面して。


「みっ、見た……?」

「あ、はい。……綺麗な白……」

「やっ、やめて──!」


 普通、こういうシチュエーションの場合、『見ていない』が選択として正しいだろうに、彼は私に素直に言ってくれた。


 ああ、素直な清水勇作が私は本当に大好きだ。



 帰り道、私は勇作と手を繋ぎながら、学校の坂道を降りる。


 とても暖かくクリームパンのように女の子らしい手だった。


「……ねえ、勇作。勇作、いつから私のことが」

「ん? 初めて会った中学一年の頃からずっとだよ。初め目にした時にこんな可愛い人と会えるなんてって驚いたよ」


 私は勇作の方を見て、ニヤニヤと笑いながら。


「ふふ、ありがと! 私もだよ、勇作。初めて会ったあの日からずっと、好きだったよ!」


 理由はわからない、でも、きっと彼に私の身体は彼となら幸せになれるとずっとずっと、一緒にいられると考えたのだろう。


 生まれて初めての恋だった。


 自分で言うのは少し嫌だけど、私はこう、可愛い。

 それは昔から同じで小学生の頃から、すでに私はいろいろな男子に告白を受けていた。

 けれど、どんなに顔が良くても性格が良くてもドキドキしなかった。

 すなわち、恋というモノを味わうことがなかった。

 きっとそのせいだろう、だから、私は彼を好きになったんだ。


 ──理由はそれで十分だ。


「少し照れるな……それ。つまり、俺たちは」

「そう!」

「「初めからこうなる運命だったんだよ!」」


 ハッと、シンクロした言葉にお互いそっぽを向く。


「あ〜沙織とずっと一緒にいられたらなぁ〜」

「私も……」


 大丈夫、きっと私と勇作はずっと一緒にいられるはずだ。

 これからもずっとずーっといられるはずだ。


 しばらくして気づいたことがある。


 それは、勇作といると何故か心が安心してホッと温かいということだ。

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アパートの隣の部屋から喘ぎ声が聞こえるので注意しに行ってみたら元カノだった さい @Sai31

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