第6話 好きだから

 食器を洗いながら俺は問う。


「沙織、お前は一緒に登校──」と。


 頼むしないでくれ。

 これ以上俺の人生に加わるのはやめてくれ。


 沙織は笑顔で。


「もちろん、一緒に登校するに決まってるでしょ」


 そ、即答!

 くそ、そうなることぐらいわかっていたけどそれでもくそ!


 ここまでの出来事を整理するとしよう。

 まず、二週間三十分による喘ぎ声が隣から聞こえ、苦情を言いに行ったらそれが俺の元カノである水瀬沙織のオ○ニーによるものだと言うことが判明。

 それがバレてしまった沙織は突如、俺ともう一度付き合いたいなんて言い出して来た。


 ……いやいや、まじかよ。

 これが今の彼女を見る限りガチっぽいんだよなあああ!

 改めて整理してみて思う。

 まずい、非常にまずいと。

 俺はもう彼女が好きというかそもそもそういう次元になくて大嫌いだ。

 ワガママでうざくて本当に大嫌いだ。

 そんなやつと付き合えるかっつーの。


「ああ、わかったよ。なあ、登校の時にもう少し詳しく俺のことが好きな理由を教えてくれ」

「わ、わかったわ……勇作がそれを望むなら」

「頼んだ」


 とりあえずはもう少し沙織のことを知るとしよう。

 普通、別れたのにもう一度付き合うなんて考えるものなのか!?

 それもあれから全く喋らない俺たちだぞ!


 ということで俺たちは支度を終え。


「行ってきます」と玄関を出る。


 少し朝から色々とありすぎてまだ朝かと思ってしまう。

 そのくらい濃い約一時間だった。


 ギシギシと今にも崩れそうな錆びついた鉄製の階段を降りる。

 ちなみに俺の部屋は二階だ。

 まあ、最初は少し警戒していたがもう慣れた。


 ここから青木高校までは徒歩十五分といったところだ。

 なんとしてもそれまでになんで好きになったのかしっかり理解しなければ。


「……それで、なんで俺のことを好きなんていうんだよ」


 別れてからLINEですら話してない俺のどこに惚れたのかわからない。

 わかる方がすごいだろう。

 

 自分で言うのもあれだが、俺はめちゃくちゃ普通といったルックスだ。

 惹かれるようなルックスではなく、何故好きになるのかさっぱりわからん。


 モジモジと頰を赤く染め、チラチラと俺の方を見ながら。


「そっ、そんなの勇作がカッコいいからに決まってるでしょ!」


 や、やめろ、その可愛らしい仕草めちゃくちゃ心臓をうるさくさせるんだよ。

 大丈夫、こんなやつ可愛くないからっ!

 絶対に落ちてたまるかよ!


「すまん、俺と話すこともなかったのになんでいきなり俺のことが好きなんて言いだすんだよ?」

「それは……ああ、もう聞かれたんだしっ」


 沙織は俺の右手首を強く掴むと、早歩きで近くの人気のない薄暗い裏道へと行く。


「まっ、待てよ。なんでこんなところに」


 沙織は俺の背中を壁にやり、髪を払う。


 ……なんだなんだ。


「いっ、いいから──っ。他の人には見られたくないし」


 そのまま、スカートを少しずつ捲り出す。


 まじでこの人何してるんだよ!

 人がいないからってここでそういうことするやつなのか!?


 俺は慌てて。


「ばっ、馬鹿野郎! こ、こんなところで──」


 だが、時はすでに遅く。


「ほ、ほらっ。なんでか、勇作といると胸が締め付けられそうに痛くなって……」


 はあはあとつらそうに息を吐く沙織。


 なんすかめちゃくちゃエロいんだが。


「シミまでできるしまい……一人の時もなんでか毎回勇作を想像しちゃうの。そこでわかった。あ、私、勇作のこと好きなんだって」


 おお、こんなルックス完璧な美少女のオカズに俺を選ぶとはなんかあざす!


「今だって……身体が燃えるように熱いのっ。勇作のことが好きすぎて死にそうなの!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る