第5話 添い寝

「ちょっ」


 玄関の中に入ってくる沙織。


 めちゃくちゃ沙織に似合うパンツだったな。


「私、絶対に諦めないんだからね!」と沙織は玄関の鍵をガチャリと閉める。


 まずい、完全にやられた!

 逃げ場を無くしてしまったぞ。


「お、おい……」

 

 一体どうしてしまったんだ、昔から沙織はこんな感じだったか?

 いや、違うはずだ。

 たしかにわがままでうざかった。

 でも、こんなに自分から積極的に行動する人じゃなかったはずだ。


「私、たしかに勇作が嫌い。でも、身体は勇作が好きなの! だから、勇作……私としよ」とブレザーを脱ぎワイシャツの第二ボタンを外しだす沙織。

「まっ、待て! なんでどこから俺とするなんて結論になるんだ!」


 第二ボタンが外れ、ブラジャーの柄が見始めている。


 まずい、早朝からこんなシチュエーション。

 当然息子も黙っていないわけだ。


「仕方ないじゃない……私のアレも聞いているわけだしもう……お願いっ、私としよ」


 くそ、どうする。

 ここでするのもありだよな?

 沙織の同意を受けた上だし、するのもありだ。

 でも。


「すまん、俺は俺が好きと思った女子とするって決めてんだよ」


 やはり、そういうのはお互い好き同士でやるから価値がある。

 その場の流れでなんてやりたくない。


 それが俺、清水勇作だから。

 

「なっ、なんでよ」と第三ボタンを外し完全にブラジャーが露出してしまっている。


 キャミソールを着けるものだと思っていたため少し驚きだ。


 直でブラジャーなんだな。

 それにしても本当にデカイよな。


 見ればわかる、学年一デカいであろうたわわな胸。


 朝からほんと、俺は何を見ているんだ。


「ほら、私こんなにあるんだよ? ──勇作っておっぱい好きじゃないの……私のやつ好きにしていいんだよ? だから、付き合おうよ」


 本当、沙織というやつは。

 俺を舐めすぎだ。

 絶対にこのたわわな胸で理性を失ってしまってはダメだ。


「昨日も言ったが無理だ。お願い、わかってくれ」と俺は後ろを振り向き居間に向かう。


 きっとこの選択が正しいのだ、沙織は身体を使わなくても俺よりいい男と簡単に付き合える。

 そもそも俺と付き合ってたということ自体が奇跡だ。

 悔しいが俺なんかじゃ沙織とは釣り合わない。


「待ってよ……」


 ああ、なんか今日も学校休むかぁ。


 気分があまりよろしくない、元カノを泣かせるとか元カレ失格な気がする。


 とりあえず、二度寝するか。


 時刻は六時を迎えた頃、スマホのアラームで六時半とセットすると再度ベッドにダイブして眠りにつくことにした。


 起きた時の気分次第で学校に行くか決めるとしよう。


 瞼を閉じて俺は寝た。


 途中、誰かが中に入って来た気もするが多分気のせいだろう……。


 って、なるかよっ!


 しばらくして俺は目を覚ます。


 すると、隣には。


「くそ、まじかよ」


 下着姿の沙織が寝ていた。


 どうやら、添い寝をしてきたらしい。


 目を瞑りながら寝返りを決める。


 あ、あぶねー、一瞬こいつの寝顔でドキッと仕掛けちまった。

 めちゃくちゃ可愛いなおい!


 スマホを手に取り時間を見るとまだ十分ほどしか経っていなかった。


 どんなことをされようが俺は絶対にお前を好きにならないからな!


 立ち上がり、チャチャっと制服に着替えて朝ごはんを作るためにキッチンへと向かう。


 朝ごはん……食べてないよな。

 仕方ない、今日はこいつの好きな卵トーストでも作るとしよう。


 卵トーストを作り終え、居間に持っていくとその匂いに気づいたのか。


「卵トースト……」と目を覚ます沙織。

「ああ、そうだ。朝ごはんまだだろ? だから、これでも食べろ」

「──うん、食べるわ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る