異世界催眠チート転生美少女抜き世界荒廃
稲荷竜
催眠チート転生末期感マシマシ美少女抜きハッピーエンド添え
転生チートで催眠スキルをもらった!
これで異世界美少女にエロいことし放題だ!
「おお、我が希望の子……人類最後の赤ん坊よ……このような時代にお前を誕生させてしまった父を許しておくれ。
もはや我らは滅びるのみ。
なぜなら魔王がすべての女性を連れ去り、隠れ潜んでいた我が妻もお前を産む大役を果たした安堵からか、死んでしまった。
もはや人類に希望はなく、お前の健やかな成長だけが、我ら最後の希望なのだ……」
おぎゃあ。
◆
異世界チート転生美少女抜きを始めてはや五年。
マジで一人も女の子が存在しない世界に生まれた『人類最後の男子』である俺は、自分を鍛えに鍛える毎日を送っていた。
なぜなら━━女たちは魔王に連れ去られたのだという。
つまり、女性は滅んでいないッ!
魔王を倒せば帰ってくるッ!
まだ軍隊を持てたころの人類が、まだ上質な鉱石が手に入った時代に、まだ絶滅していなかったドワーフの打った武器を装備してなお勝利できなかった『魔王』。
これをたった一人で倒すのは、かなりの難易度であるように想像できた。
しかも鍛錬は地道でキツい。
お手軽レベルアップ! みたいなものはない。ひたすら剣に見立てた棒切れを振り、乏しい魔力を練り、走り込みをするだけ……
転生前の俺は怠け者で、『数年後を見据えての努力』なんてものができる精神力がなかった。
そこで催眠スキルだ。
「【自己催眠・精神高揚】!」
みなぎってきたァァァァァァ!
催眠により無理矢理に高められた気持ちで肉体を動かすことにより、限界を超えた鍛錬が可能になる!
まる一日鍛錬をしててもまったく飽きないしつらくもない! 催眠ってすげえ!
「最後の子、我が子よ……もう、いいんだ。人類は滅びる。お前は納得できないかもしれないが……」
異常な鍛錬をする我が子を心配して、異常に老けた父が声をかけてくる。
世界は真っ白い雪が常に降り続いていて、この五年間、晴れ間がさしたことは一度だってなかった。
農作物は当然実らず、野生の草花も枯れ果て、それを食糧にする動物さえも気配を絶やして久しい。
どうにか備蓄を細々と食いつないで生きているのが現状ではあるけれど、それは遠からず尽きるようで……
もはや若者も子供の殺され尽くし、俺以外には中年と老人しかいなくなってしまったこの世界・この集落において、どうやら大人たちが自分の食べるぶんを削って俺へ回しているようだった。
そのせいだろう、俺の父親はまだ三十代にもならないというのに老人のように老けこんでいた。
それは父だけの特徴ではなかった。
絶滅を控え、ただ滅びの前に残されたわずかな時間を生きている人々の中にはもう『希望』というものが残されておらず、それは言動や顔つきに深い無気力感と絶望感を常に濃くにじませていた……
見ているこちらの気が滅入る。
だから催眠で元気になってもらうことにした。
【他者催眠・精神高揚】!
「我が子よ! 魔王をぶっ殺そうな!」
「ああ! がんばろうな父さん!」
集落全体に催眠をかけた。
こうして『魔王ぶっ殺す』の機運が高まっていく……
◆
そこから二年の月日が経ち、俺たちは対魔王の軍を起こした。
『魔王ぶっ殺す』という信念を掲げた俺たちの軍はたった二年で急速に肥大化していた。
それはやる気を出した集落の人々がよその集落に呼びかけたからであり……
絶望しきっていた他集落の人たちに【精神高揚】をかけまくったからだった。
おそらくもっともっと時間をかけることができれば、もっと強い軍にすることもできただろう。
けれど俺たちには『食糧事情』という無視できない問題があって、それが軍の結成と行動を焦らせていた。
とはいえ、俺たちに『魔王に立ち向かうこと』への不安はなかった。
催眠がかかっているから。
決戦前夜━━
拠点となる村に集められた男どもは、わいわい騒ぎながら『最期の日に飲むために』と残していた酒を放出し、宴会をしていた。
食べ物はもうなかった。
けれど、空腹により士気が落ちている様子もなかった。
もはや空腹は感じない。【不調遮断】の催眠が全員にかかっているから。
俺たちに細かい作戦などなかった。
『真っ直ぐ駆け抜けてぶっ殺す』。これがすべてだったのだ。
だから細かいブリーフィングなどはない。
やることは【精神高揚】の重ねがけ、そして決戦用にとっておいた【疲労無視】【痛覚遮断】【脳リミッター解除】……
それから。
「では、明日だ。ぶち殺すぞ、魔王を」
当年とって七歳となる『対魔王同盟』リーダーである俺の言葉。
【精神高揚】をかけ続けられてなにがなんだかわからなくなってるハイテンション集団のみんなは、俺の言葉にただただ静かにうなずいた。
異常鍛錬でも食糧不足で筋肉が肥大化することもなく、頬はこけて目は落ち窪んだ印象の彼ら。
しかし瞳にはギラギラした輝きがあって、数千のそれがいっせいにこちらを向く。
【恐怖無効】をかけている俺からすれば、頼もしくてたまらない、大事な仲間たち━━
明日失敗すればきっと、本当に人類は絶滅するのだろう。
けれど、俺たちに不安はなかった。【精神高揚】状態なので……
◆
「進軍! 進軍! 進軍!」
魔王の拠点は割れていて、その周囲には軍勢があった。
しかしそれは俺たちを止めるほどのものではなかった。
手足がちぎれても、血をドクドク吹き出しながらでも、仲間が真横で殺されても、いっさいかまわず走り続ける血走った目の男どもが、木製の武器だけで挑みかかってくるのだ。
おそらく【恐怖無効】がかかっていなければ、相当怖い光景だろう。
雪景色の中、おぼろにたたずむ石造りの禍々しい城が見えてくる。
魔王城━━
ある日唐突に現れ、人類の軍勢という軍勢をその優れた魔法の力で撃滅させ、金属を奪い、女を奪い、人類の牙を抜きゆるやかに
順当に行けば軍勢や兵器、そして生きる希望を奪われた人類は絶滅したことだろう。
だからか人類への監視はほとんどなかったし、俺たちの反抗の準備が邪魔されることがなかった。
っていうか━━
女という女をさらいつくしたんなら、ハーレム活動で忙しくて、残った男どもの監視なんかしてるヒマなかったんだろうなァ!
うらやましいなァ!
ぶっ殺す!!!!
対魔王軍の気持ちはみな同じだった。
魔王ぶっ殺す。
作戦もなく隊列もなく用兵さえない軍隊が、我先にと魔王城に呑み込まれていった。
先行して城に入った男どもの雄叫びは、城の入り口に近付いてもまったく聞こえない。
外はこれだけむちゃくちゃな戦闘が行われているというのに、吹雪の中におぼろに浮かぶ石造りの城の内部はあまりにも
でもこっちには催眠がかかっているので恐怖はないし……
今日ダメなら人類絶滅。上等! の気持ちなので、今日逃げ延びて生きようという男も一人もいない。
勇士たちはガンガン城に吸い込まれていき、七歳児である俺が城の入り口にたどり着くころ、軍の半分ぐらいが城に吸い込まれ、その雄叫びを途絶えさせていた。
そして城に入った俺は、魔王城入り口で待ち受けるデストラップを目の当たりにする。
そこにはいわゆる『四魔将軍』が勢揃いしていたからだ。
まだ人類が健康だったころ、対魔王への遠征は何度も行われたが……
その中で魔王の手足となって人類軍を蹂躙した将軍たち。その四人の指揮官を四魔将軍と呼んだらしい。
老兵の口から語られた過去語り。そこにあった四魔将軍と、目の前にいる四人の特徴は合致していた。
火、水、風、土……
四属性を思わせる四種の色合いの衣装をそれぞれまとった━━
人間にはない身体的特徴を備えた━━
美女たち。
そいつらが武器を、あるいは爪牙を構えてこちらに狙いを定める。
彼女らの周囲には先行して城に呑み込まれた男たちの死体が積み上がっており、この四人が城門に入った男たちをぶっ殺したのは誰が見てもあきらかだろう。
そのうち一人、赤い瞳の片目隠れの女が口を開いた。
「あら、まだこんなに若いボウヤがいたのね……ということは、魔王様から隠れていた女がいたということ? ……理解できないわ。ここは女の楽園だというのに」
また別な一人、青い髪の子供みたいな体格の女がため息をつく。
「……この年齢の男を見るのも久しいのう。まあ、男は苦しんで絶滅すべき。子供とて例外ではないぞ?」
さらに別な、緑の服をまとった背の高い女が笑う。
「ま、殺すのは決定だけどさ。ちょっとぐらい遊んでもいいんじゃないかな? 子供のうちはかわいいものだよ、男だって」
そして最後の一人……黄色い杖を持った、メガネをかけた女が冷たく言い放つ。
「甘く見てはなりません。絶滅を。すべての男に苦しみと絶望を。それこそが魔王様の決定。ならば━━若い芽こそ確実に摘むべきです」
よし、全員、言語を操る知性があるな! 【他者催眠・絶対服従】!
催眠はチートであっても万能ではない。
俺がかけた催眠の意味を理解できる知性が最低限必要らしい。
さっき知ったのだ。
なんでって、魔王城の周囲には魔物どもがひしめいていて、そいつらに催眠をかけようとしても通じなかったから。
だから催眠にはかけられる側にある程度の知性が必要なんじゃないかと考えたわけですね。
今までは野生動物さえいなくて確認できなかったからね。
「よし、四魔将軍、俺に従え。魔王をぶっ殺すぞ!」
「「「「魔王、ぶっ殺す!」」」」
新たな心強い仲間を得て、俺たちは魔王の待つ場所へと駆け抜けていく……
◆
……長かった。
母親の顔さえ知らない俺が小麦粉を溶いた汁を乳の代わりにして育ち、己を鍛え、人を巻き込んで魔王退治に乗り出した。
その総決算……
『異世界美少女と催眠でエロエロ』という夢がもうじき叶う。
興奮する。緊張する。
精神高揚を重ねがけしているはずなのに、そんなものさえ関係なく、まっとうにプレッシャーを感じている。
これが、『己の夢を懸けた大一番に挑む』気持ち、か。
「ご主人様、こちらが魔王の待つ『謁見の間』でございます」
ここまで魔王城内部を散策した結果、城門すぐに待ち受けていた四魔将軍に加え、十二魔人、魔流技百八派などを催眠で仲間に加えたので、俺の軍勢は合計百二十四人増えていた。
その全員が美少女・美女であり、魔王に対するヘイトは仲間を増やすたびに上がっていった。
もうじきこの全員とさらわれた女性のみなさんが俺の催眠ハーレムに加わるのだ。変な汗出てきたな。うまく会話できるだろうか……不安。
謁見の間の巨大扉が開き、黒を基調とした豪奢な内装があらわになる。
つやめく漆黒のカーペットが真っ直ぐに伸びた先、数段の段差の上には玉座があって、そこには魔王が腰掛けていた。
魔王は━━
美しい、女性だった。
「……女?」
てっきり世界中の異世界美少女をさらってるっていうから、男とばかり……
「よく来たな男よ……って待て待てなんだ後ろのは! 全部私の部下じゃないか!?」
「言葉が通じる! 【他者催眠・絶対服従】!」
「ご主人様いらっしゃいませ!」
魔王は倒された。やったぜ。
「そういえばなんで女をさらって男たちの抵抗力を削いで絶滅なんてさせようと思ったの?」
玉座にとことこ近付いていって魔王の膝にこしかける。
どかして座るのも面倒だった。俺は七歳なので大人の女である魔王の膝にちょうどおさまるサイズ感なのだ。
すると魔王は俺の頭をなでながら言う。
「私には愛してる女性がいました」
「続けて」
「しかし、それはある日、男に奪われたのです。……いえ、それ以前に『やっぱり女同士はダメだよね』なんて言って……私を捨てたんです。だから、私は思いました。『この世界に男なんていう選択肢があるから悪い』と……それで、男を苦しめ、絶滅させてやろうと……」
「なるほど……」
百合のあいだに挟まると死刑だからな……
人類は絶滅しかけてるけど魔王には同情の余地が……いや、ねぇよ。やりすぎだよ。当事者二名だけで抑えてくれよ復讐。
「まあしかし、終わったことだ……男なら自害を命じたけど、綺麗な女の人だから生かそう……俺、催眠で異世界美少女とエッチなことするためにこの世界に生まれた生命体だから。女の子には甘いんだ」
こうしてるあいだにも催眠により正気を失った男たちが魔王をぶっ殺すべく突撃してきてる気がするが……
まあ途中にいた魔王軍はだいたい催眠で服従させて連れてきてるし、謁見の間に来たら男たちも催眠にかけて戦闘をやめさせたらいいか。
「ご主人様」
魔王とその元部下たちが催眠にかけられた人特有のとろけた瞳で俺を見ている。
女の子に囲まれてこういう目を向けられると『そうだよ、これだよ。こういうのがいいんだよ』という気持ちになる。
今まで男にしかこの目を向けられなかったからな……
「なにかな、魔王」
「ご主人様がお望みのことなら、なんでもいたします」
夢にまで見た展開だ。
だから俺は、転生前に持っていた知識を総動員して、ここにいる美女たちをどうエロい感じにしてやろうかを考える。
考える。
考える、のだけれど……
七歳なので。
しかしここでなんにも要求しないのもな……格好がつかない。
いっしょうけんめい考えて、ぼくはこう言う。
「じゃあ、魔王……ぼくが大人になったら、結婚しよう」
「はい……!」
それから━━
世界を閉ざし続けていた雪はただの異常気象だったので、魔王軍と協力してこれを解決するために研究を続けた。
そうしていく中で魔王と普通にいい感じになったので約束通り七年後に結婚し……
夢にまで見たハーレムは俺のおちんちんが一本しかない都合上『相手が多すぎる』としか思えなかったので、絶対服従を解いて解放した。
今ではだんだんと雪の日も減っていき、魔王は催眠で人々に許され、俺たちは世界の片隅の田舎でひっそりとリタイアライフを送っている。
この年齢になると最高の楽しみは孫がたずねてくることで、俺たちは孫が来るたび喜んで精一杯のおもてなしをする時、『ああ、まだまだ死ねない』と思うのだ。
ここ数十年、催眠スキルは使っていない。
そんなものを使わずとも、俺は幸せを手に入れることができたのだから……
異世界催眠チート転生美少女抜き世界荒廃 稲荷竜 @Ryu_Inari
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます