第5話 エンディング

四角く指を囲いフレームのようにして空を映す

でも今はしっくりこない・・・

だって・・・

「なんか・・・うん・・・なんか・・・ね・・・」

四季は幾度か入れ替わり

私も年を重ねた

今も空は青い・・・

でもあの時みたいに本当に真っ青かどうかは・・・

もうわからない・・・

どこかすこし影を落としたような気がするのは

私が大人になったからなのか?

それともただ本当にそうじゃないのか・・・

あの時と同じ風景

同じ場所なのに・・・

違うのは

そこに彼がいないことだ

「彼・・・元気かな・・・」

懐かしくなり言葉もらした

そしてあの時つないだ手に視線を落としてふと

「今日も・・・寒いね・・・」

とあの時の感触を懐かしむ

お互いにずっと一緒だって

すれ違いなんてないって

思っていた・・・

でも社会に出ると違っていた・・・

会社に行くこと

仕事をすること

それらはなれない私たちに疲れとしてのしかかって

お互いに会うことでその疲れはまた増してしまう

そんな日々が続いた

相手がいるから生まれる隙間

たぶんだれもいなかったなら思わなかっただろうけど

それを感じてしまった

その隙間が悲しさと寂しさを胸に募らせてしまう原因だった

辛かった・・・

たぶん彼も・・・

そうして違う道に進むことを選んだのだ

お互いに・・・

数日は後悔とかいろいろ悩んだ

けど彼がいないことで隙間がなくなった

悲しさがすこし止んだ

感じる時間をつぶした

そうやって今

ここに立っている

「ふー・・・」

今なら大丈夫と思ったけどやはり思うことはいろいろある

そういろいろと・・・

「あの?」

「え?」

突然声をかけられてつい振り向く

そこには同じ年くらいの男性がたっていた

そして

「よかったらモデルになってくれませんか?」

ああ、これはナンパ?

何となく感傷に土足で踏み入られた気分

「いいえ」

冷たく言い放ちその場から立ち去ろうとした

そのときに

「ですよね・・・でも、なんか絵になっていてこの風景、空、そしてあなたが」

とカメラを胸にかかげて苦笑いで話した

・・・

言葉にできなかった

やはり感傷にふれてきた

でも、それは・・・

「わかりました」

「え?」

「モデルやりますよ」

「ほんとですか!?」

「ええ」

笑顔になる彼そしてファインダーをみる


カメラのファインダー

そのフレームにはどんな風景が写っていますか?

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フレームの中の青空 ta-KC @take0520

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