11.凸凹二人組、外に出る
約束通り、昼食を終えた午後の自由時間。ボスとその子分は『外』にいた。
……いた、のだが。
「普通に遊園地の中じゃねーかよ!!」
「外、ですよ?」
そりゃあ確かに
「そうじゃなくってオレは敷地の外にだな!!」
ご丁寧に説明するのも馬鹿らしくなって、ボスはベンチでうなだれため息を吐いていた。
素行不良少年とVIP待遇の少女が連れ立ってセンターの玄関から堂々と突破できたのもそのはずで、二人がすっかり見慣れたセンター職員の何人かが、付かず離れずの距離から二人を見守っていた。
完全に「監督の下で友人との交遊で出かけるならOK」という扱いだ。これで敷地外に出ようとすれば監視役の職員に全力で止められるのは明白だった。
「期待して損した……」
「?」
うなだれるボスを見て、イノは不思議そうな顔で首をかしげる。
「もっと、外に行きたいの?」
「ああそうだよ、こんなところで大人しくしてられねえんだよオレは」
「大人しく……?」
実際は外に出たいと大暴れしていたように思うが。
「故郷に大事なダチどもがいるんだ、少しでも早く帰ってやらねえと。……オレたちの居場所を守るためには一人でも多くの戦力がいらうんだよ」
「それで、外で剣を振るったか」
うなだれるボスに声をかけてきたのは、イノの見知った顔だった。
「カグヤ!」
「仕事中はマサムネ、で頼むぞ」
「いや誰だよてめー。つーかなんでそれを知ってんだ」
思ったよりも早い再会にイノが目を輝かせている一方で、怪訝そうな顔をする。
「シュヴァリエントのしがない剣客の一人、そちらの娘さんのちょっとした知り合いさ。君の素性については単なる憶測だ。彼女とこの短期間で知り合いここへ遊びに来るような仲になるということはおおよそセンターの関係者、しかしどう見ても職員ではないし問題行動で保護観察中の剣人だろう。そして、君のような年頃の剣人の『問題行動』となるとほぼ一つだ」
「……チッ、当たってるってのが腹立つぜ。で、それはそうとなんでキャストがわざわざ声かけてきたんだよ」
「いやなに、昨日ニホンに来たばかりの娘さんが翌日に遊園地デートするようなお相手について興味が出ただけのこと。こちらからも問おう。二人はどういうご関係かな?」
「この人が、私のボス。子分はボスの言うことを何でも聞くって」
「おおっと?」
少女の即答に、カグヤは少年のほうを見やる。「意外にやるな」と言わんばかりのその意味深な微笑に、少年は相手が『その約束』にどういう想像をしたのが思い当たってしまう。
「ち、違えぞ!? 別にこいつを女としてどうこうとかそういうのは一切だな!!」
「ははは、まあ最初はみんなそう言うものだ。しかし『お友達から』というのはこういう自然な入りがベストだぞ、よくやったな少年」
「ちーがーうー!! そもそもここに連れてきたのはコイツの方でだな!!!!」
「ほほう、向こうから誘うように仕向けるとは、なかなか駆け引きが上手いじゃないか」
もはやカグヤは二人の関係性についての推測が勘違いであると薄々察したうえで、あえて少年をおちょくり倒していた。少年がそれに黙っていられるわけもなく、いよいよカグヤに殴りかかりそうになった――その時。
「見つけましたわよ、マサムネ! まぁた庶民の女に手を出していますのね!!」
どこか高いところから、高圧的な婦人の声が降ってきた。
「他の女が目に入らなくなるよう、徹底的に教育してさしあげなければいけませんわね!!」
「やれやれ。今日は俺が標的なのか、ご令嬢?」
そのヒステリックな声に、カグヤ――もといマサムネは大げさにため息を吐くと、肩をすくめるのだった。
剣爛テヱマパーク-異世界でなくても剣に生きるのは楽しいです- 王子とツバメ @miturugi
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