第28話「パーフェクト・ケア」
アメリカの後見人制度にかなりの問題がある事は、ネットの記事にも散見される。特に驚いたことは、本人の同意を得ず、医師の診断を受け、裁判官が決定し後見人を指名し、後見人の命令下におかれることだ。
この映画でも、高齢者が、本人の同意なしに後見人を指名され強制的に施設に入れられ、自由を奪われ資産管理もされることを衝撃的に描写されている。日本では、高齢者が介護が必要になるとケア・マネージャーを指名し、相談しながら身の処し方を決めていく。明らかにアメリカの後見人制度とはまった違うのだ。
そもそもこの映画のヒロインである後見人は、赤や黄色といった原色の服をまといハイヒールで闊歩する、自信に満ちたキャリアウーマンのように振る舞う。彼女の信念にもとづく行動は、高齢者の介護ではなくビジネスとしてお金を搾取することを続けてきたのだ。彼女の信念によって、成功を手に入れた姿を彼女の表情・服装・ライフスタイルから読み取ることができる。
J・ブレイクソン監督は、頭およく度胸もある勝組の彼女に強烈な一撃を与える。彼女をはるかに凌駕する強力な敵を登場させ対決させるのだ。敵があきらかに巨大でつ強いゆえに、彼女の信念に同意できない私がいつのまにか彼女に感情移入し応援しているのだ。という事は、映画は見事にハラハラドキドキの活劇風エンターテインメントになっている。J・ブレイクソンの脚本と演出にまんまとやられたという想いであった。しかし、それだけで終わらせないのが、この監督の凄みだ。
特に終幕に向かって彼女と敵の関係が一転するくだりは、終着点をそこに持ってくる意外性に驚かされた。そしてラストシーン彼女が身をまとっていた真っ白なシーツ、この色にも意味を持たせていた。
人の信念にとやかくいう資格はない。しかし、アメリカの後見人制度に問題がある事を監督は、見事に提示している。弱者を助けることが本意であり、決してビジネスにしてはならない、真に弱者に寄り添うよう法の改正に向け一石を投じた映画であった。
サラリーマンの「真剣映画評論」 @masareds
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