Chapter 1.31 卑屈
Chapter 1.31
卑屈
支部から東部記念病院までは車で行くとそれほど時間はかからず、およそ三十分程度で到着した。
車から降りた三人は病院受付で事情を説明すると、一度主治医と話をすることとなった。
三人は以前ルクスとリアがきた時と同じ間取りの部屋に案内され、そこで主治医がくるのを待っていた。
「実際さ」
ルクスがおもむろに口を開く。
「カナデさんの力でこの異変の正体が
「そうなったらその
リアがルクスの問いかけに答える。
「どうやって?」
「まずはセイクスの言う通り、異変被害にあったロイド氏と書類窃盗の件の調査だろうな。増援の
「カナデさんの
顔をカナデの方に向けたルクスはそんな質問をする。
「い、一応できます。
「・・・なんか、言い方悪いけど犬みたいだな」
ルクスは言いづらそうにしながら口を開いた。
「まあ、そうですね。正直、私もそう思ってます」
カナデは苦笑いしながらそう返事をした。
「じゃあ、この異変の
「過去に一度でも
「間違えることは?」
「経験上、ないですね。育成校で自分の
「そりゃあすごいな。一度も間違えることなくか?」
思わずリアも感嘆の声を上げる。
「はい。言葉で表すのは難しいんですけど、何かこう、明確に違うんです。香りもそうなんですけど、それ以外の、こう、なんと言うか、重さとか広がり方とか。わかります?」
「・・・ルクス、わかるか?」
「ごめん、さっぱりわからない」
「ですよね・・・。ごめんなさい」
心なしか、カナデの声がしょんぼりと小さくなる。
「けど正答率百%はすごいな。これでロイドさんから
「えへへ・・・。ありがとうございます。役に立てたみたいで安心しました」
小さくなっていたカナデが笑顔になる。
すごく可愛い。
「ああ、本当に役に立っている。俺たちの百倍は役に立ってる」
「何も言えねえ」
今度はルクスがしょんぼりと小さくなった。
「今回俺たち迷惑しかかけてないもんな」
「疫病神と言われても何も言えん」
「いやいやいや! そもそもこの異変に気付いたのはルクスさんとリアさんなので! それが一番の収穫ですよ!」
卑屈になった二人をカナデが必死の思いで励ました。
「優しいなぁカナデさんは」
そのいたいけな様子にルクスは内心癒されていたりする。
そんな会話をしていると部屋のドアが開き、ノットが部屋の中に入ってきた。
「すいません、お待たせしました」
「お忙しいところ、時間を作っていただきありがとうございます」
リアはそう感謝の言葉を口にする。ノットはそれに対して軽く礼をしながら椅子にゆっくりと腰掛ける。
「さて、調査に協力してほしいと受付のものから話を聞きましたが、詳しく説明をしてもらってもよろしいですかな?」
「はい。説明させていただきます。実は−−−」
リアはこれまでの経緯をノットに向けて説明する。
「−−−なんと。このカルーアで被害者が八十名も?」
ノットはリアの説明を聞き、共学の表情を浮かべる。
「そうです。調査からもれた者を含めるとその総数は百名を超えると思われます」
「まさか、そこまで大きな事になっているとは・・・」
「現在、この異変の原因を調査しています。その一環として今日入院されたロイド氏と面会させていただきたのです」
「面会・・・ですか。まあ、ご家族の了承が得られればこちらとしてはなんの問題もありませんが」
「では今、
「ええ、構いませんよ」
ノットの言葉を聞き、リアは謝意の言葉を口にすると、腕に巻いてある
「リア、ロイドさんの家族の連絡先とか知ってんの?」
ルクスはリアに小さな声で耳打ちをした。
「ああ、家族が病院に来た時に念のため確認しておいた」
さすが、信頼における同僚である。
その後、ロイドの家族と連絡が取れた一同は事情を説明し、面会の了承を得ると、ロイドの入院する病棟へと足を向けた。
Chapter story 佐乃原誠 @sanoharamakoto
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Chapter storyの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
魔術師と吸血鬼と毒林檎最新/詠
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます