【完結済】エリート騎士が変態だった模様。恥ずかし気もなくグイグイ迫ってきて私を溺愛しようとするんですけど

うらひとちゃん

第1話

うららかな春の日差しが差し込む季節


今年も沢山の下級魔術師がこの国に誕生した。


新人下級魔術師達に挨拶をしている魔術師団長のずっと後ろに控えて下級魔術師達を見下ろす。


「今年は凄い逸材が入って来たから実習がやりにくいわーあいつには当たりたくない。」


隣にいた同じ上級魔術師のステラ姐さんが私に呟く…


「アイツ??姐さん、えっと誰でしたっけ?」


「はあ?クランは知らないの?新人の下級魔術師達が並んでいる右側の後ろの方にいる背の高い黒髪の男。ジュードよ。堂々としているから目立ってるでしょ、第二騎士団の副団長だったんだから!!」


「第二騎士団にいるジュード?知ってますよ。まだ若いのに、人を圧倒する剣術と統率力で既に次期騎士団長になるって噂を聞いた事がありますけど、えっ?その彼がっ?」


「そうよっ!副団長まで登りつめたのに、急に魔術師を目指すから騎士を辞めますって辞表を提出したって大騒ぎだったんだから!!別働隊の団長や総長まで巻き込んで引き止めて、保留にしたみたいだけど…」


「へぇー凄いですねー皆が引き止めるって相当期待されていたのに魔術師になろうなんて勿体無い。」


「そうなのよね。騎士で魔術使う人は一定数いるし、花形の騎士職を蹴って魔術師になろうなんて余程バカか天才だわ!」


「ああ確かに…いましたねー。伝説の上級魔術師レオンハルトは騎士団長でしたもんね……ジュードも天才かもしれないですよ」


「バカかもしれないわよ」


「あははは」


「クランも笑ってないで、上級魔術師としてあいつに当たったらしっかり実習しなさいよ!私はもっとウブで可愛い子を優しく実習したいの。クランを担当した時もそれはそれは美人で可愛くて嬉しかったわーウフフッ」


「姐さん…相変わらず見た目が初心そうで磨けば化けそうな子を可愛がるの好きですねー私の事も可愛い可愛いって言ってくれてましたけど、その割には実習内容えげつなかったですよ。もう無理だって何度も思いましたもん。」


「あらっ?可愛いからって実習は公平に判断するわ。クランはその時無理だと思っても、それを努力に変えて今こうして上級魔術師になっている。それが貴女の実力だわ」


「ステラ姐さん……私を育ててくれてありがとうございます。そういう所尊敬しています」


ステラ姐さんは「いいのよ。私も教え子のクランが上級魔術師になってくれて鼻が高いわ」と言ってまた下級魔術師達を物色し始めた。

それに釣られて私もジュードというウワサの人物を探してみる。


あっいた!なるほど、背も高いし身体の鍛え方が凄いのか、姿勢がすごぶる良い。


あれっ今なんか目が合ったかな?

気のせいか…


他の魔術師達も眺めながら、自分を恨んで生きる人達が今年はどのくらい増えるのだろうと私はフーッと静かに溜息をついた。




ここはライトパープル連合王国という魔法が発達した国。



昔から周辺国との地下資源を巡り、戦争と小競り合いを繰り返している為、大国から攻められないように騎士と魔術師を育て上げ何とか維持している国でもある。


比較的仲が良かった隣国同士の小さな3国が、大国に攻められない様に1つの連合王国となった経緯があり、その時の3国の旗の色が赤、青、白だった為、そのまま混ぜて国の名前になっているのだ。


式典が終わると、副師団長が順番に上級魔術師を呼び、団長の部屋に案内していく…「次クランお嬢ちゃん」

副師団長のバータ爺が私を呼んだ。


「ありゃ、クランお嬢ちゃんと言うなって今日は言わんのかあ?」


「止めてって言っても止めないんで諦めました。私もバータ副師団長の事をバーダ爺と言い続けますからね!!」


「あっひゃっひゃっ!あークランは面白い」


バータ爺が大笑いしながら私を部屋に招き入れてくれた。何だかんだ言って上級魔術師達は仲が良いし、私もこの雰囲気が好き。


部屋の中にはエシレ師団長が待ち構えていた。


「クランの今季最初の実習指導の下級魔術師はジュードになった。しっかり指導に努めてくれ」


とエシレ師団長が私に言った。



あの副団長だったジュードを私が担当するの?!


「えっ騎士団の副団長だったジュードですか?とても優秀だと聞いてますので、彼の実習が私に努められるでしょうか…」


別に自分の実力がないとは思わなかったけれど、他にも優秀な上級魔術師がいる中で私が担当するなんて少し心配になってしまった。



「こちらも調整が難しくてな…それに実は騎士団の方から魔術師裏試験を不合格にさせてジュードを騎士団に返して欲しいとまで言ってきているのだよ。

流石に如何なる時でも平等である実習という名の裏試験を裏で合否を操ったりできると思われるのに腹が立ってな……騎士団と魔術師団の上層部がケンカしてしまったんだ。

魔術師団側はカンカンに怒っていて、上層部の上級魔術師達がジュードを担当したら絶対合格をくれてやる勢いの奴らばかりになってしまって逆に担当しにくくなってしまった」



凄い!!騎士団も魔術師団も上層部は精神的にも成熟されている方が多くてあまり怒ったり、ケンカする事なんてないのに……



「そんなにケンカする程、優秀な人材なんですね」



「ああ……逸材だと思う……下級魔術師試験も非の打ち所がないぶっちぎりのトップ通過だ。あの伝説の騎士団長でえ上級魔術師だったレオンハルトの再来かと試験官が騒ついた程だ」


「凄いじゃないですか!でも何故……?騎士としても有望だったのに魔術師なんかになりたくなっちゃったんでしょうね……」


「魔術師なんかとはなんだ!!

まぁ……な。

そう疑問に思う気持ちも分からんでも無い。

普通は騎士と魔術師両方の能力があれば騎士を希望するだろう。

騎士は魔術師の能力を持ち合わせている人間が多いからな。騎士団長クラスは殆どが魔術師としてもやっていけるだろう。

騎士になりたくてもなれない奴が次に来る所は魔術師団だ。

魔力があれば魔術師ならばと志願してくる」



「ですよね……」



「そうだ。だからこそ実習という名目で魔術師裏試験がある、騎士なら体力、精神力をかなり鍛えられているから、1人で捕虜になっても壊れる事がないが、魔術師は能力が高いだけの奴は体力も無いし精神力もないからな。


捕まって死んでくれるならいい。

が、精神が影響されやすく洗脳されたらこの国にとっても最悪だ。

ジュードは実習しなくても合格だろうとは思うが、クランなら歳も近いし逆にジュードから学ぶ事もあるだろうと思い選んだ」


「でも実習担当なら適任はステラだっていたでしょう?」


「ああ、あいつは最初に断ってきてな。お前を推薦してきたんだぞ」


ステラ姐さん…師団長の要請を何断ってるんですかー…しかも私を推薦って…なるほどそれでしっかり実習しろよっか…


「ではクラン頼んだぞ」

「はい…承知致しました。」


ふうー

まさか私がジュードの担当とはね……魔術師の能力は今の所私の方が上かもしれないけれど、総合能力だったら私より高い可能性もあるのよね……


下級魔術師は中級魔術師の試験を受ける前に実践実習として必ず先輩である上級魔術師と一緒に仕事をしなければならない規則になっている。


名目は実習だが……

実際には魔術師裏試験である。



師団長の言った通り精神が弱かったり、何かトラブルがあった時にうまく回避できない人はここで魔術師を諦めさせる目的があるのだ。


先輩は身体的に大怪我さえさせなければどれだけいたぶってもいいとしている。

だから後輩に性的に迫ってもいいし、敵を丸投げしてもいい。

そんな先輩からの攻撃に後輩はどうするか……


そのまま受け入れてもいいし、嫌なら先輩に嫌われないよう上手く回避すればいい。


要は魔術師が捕虜として捕まった時の事を想定している。


だから何をされても精神が壊れず、上手く立ち回れという事を裏試験でみているのである。


そして、この実習の魔術師裏試験という本当の目的は本人が上級魔術師となった指導側に回って初めて知らされる。


だから中級までの魔術師はこの実習を「最低最悪」や「理不尽」と先輩を恨みながら涙を流す事になる。


担当になったジュードはそんなにいじめ抜く必要もない優秀な相手だから案外楽な担当になったのかもなぁ…


と思いながら私は明日からの仕事に備えて眠った。



ジュードは満面の笑みで私と会った。


「クラン先輩 お会いできて光栄です!!私はジュードと申します。少し前まで第二騎士団に所属しておりましたが、クラン先輩に憧れに憧れて魔術師になろうと心に決め試験を受けました。実習で先輩が担当になったと知らされた昨日は大喜びでまさかと自分のほっぺをツネってみたら痛かったです。今日を楽しみにし過ぎてドキドキワクワクがとまらず、眠れない夜を過ごしましたが大丈夫です。一周回って頭が冴え渡っていますし、クラン先輩を前にして…」



「ちょっちょっと待って待って、ジュード君落ち着いて」




「はいクラン先輩 私は至って落ち着いておりますし、冷静です」



「ジュード君ってこんなにお喋りな人だったんだね。私の名前は知っているみたいだけど一応自己紹介するわね。クランです。上級魔術師になって3年が経ちました。ジュード君がもし副団長のままだったら私の方が敬語を使わなくちゃいけないのにごめんね。えっと、ジュード君の歳は…」



「私は25歳です。クラン先輩は16歳で下級魔術師に、17歳で中級そして19歳で上級魔術師になられ3年が経ちましたので22歳、私の3つ年下に当たります。

歳も丁度いいと思います。」




「あっえっ!丁度いい?殆ど年齢が変わらないのに副団長だったなんて凄いのね…それにしてもやけに私の事詳しいのね…」



「ファンですから…ブロマイド写真も何枚も持ち歩いて大切にしています。できれば今、私の眼球がカメラでしたらこの様なシャッターチャンスに恵まれ何千枚も撮れたのにと、悔しい気持ちでいっぱいになっており…」




「ジュード君、落ち着いて!」




「はい クラン先輩 落ち着いています。むしろクラン先輩はいつもより脈が早いように見受けられますね」




「クッ」




困ったわ……ジュード君は私にはやりにくい相手みたい……そしてやたらグイグイ私に絡んでくるわ……


チラっと木陰の向こう側でステラ姐さんも後輩と挨拶しているのが見えた。

ああ……ステラ姐さんのあの顔は「この子可愛いわぁ」って顔しているわ……ステラ姐さんの希望通り育てがいがありそうな子に当たったみたいでちょっと羨ましい。


「クラン先輩?何処見てるんですか?ああ…ステラ・マージですね……とても優秀だと聞いております。

……クラン先輩はあの様な方が好みですか……?」


「えっ?ああそうね……とても尊敬しているのよ。それに普段からお世話になっているんだよね」


「何だとっ普段からお世話だとっ!……っと失礼しました。何でもございません。私もクラン先輩にこれからお世話して頂けると思ったら胸の高鳴りが止まりません。何でも申し付け下さい。どんな事でも致します。」


「ええっ?ジュード君は私にそんなにお世話にならなくても大丈夫だと思っているのよ。正直私より魔術師の実力も上かも知れないしね!」


「何を言っているのですか?実習をクラン先輩は疎かにするつもりなんですか?それは先輩魔術師としてあってはならないと思います」


「ジュード君、向上心が高くて素晴らしいわよ。勿論しっかり指導もさせて貰うね。明日から実践実習が始まるから頑張ろうね」


「はい宜しくお願いします」

「此方こそ宜しくね」


こうしてジュードと私はご挨拶代わりにどんな食べ物が好きか?などとたわいもない事から、魔術の得意な技を見せあったりと仲を深め合った。


それからと言うもの、ジュードはやりにくい相手だと思っていたのは大きな間違いだった。


彼ははっきり言って凄い。

噂通り剣術は凄いし、魔術は敵を察知する能力にたけていて、早急に回避できている。他の誰よりも現場把握能力がずば抜けている。

それは次期騎士団長って言われるのも頷けるし、騎士団や魔術師達がザワつく気持ちが分かった。


そして把握能力が凄いせいか「先輩、そっちは危ないので肩をもう少し私の方へ寄せて下さい」と肩を抱き寄せたり、町を歩けば「離れると今は危険です」と言って手を繋いで離してくれない。


私ってそんなに弱そうに見えるかしら……。一応この国の上級魔術師で貴方の先輩なんだけど……。


「ジュード、そんなに私に媚びなくても貴方は優秀だったと報告できるから安心していいわよ」と言ったら、ジュードは目をギロッさせて


「先輩って本当に分かってないんですね。さっきから先輩を狙っている人達がウヨウヨいたんですよ」


「えっ?私も常に気を配っているけど、殺気は感じられなかったわよ」


「まあ……殺気ではないですが、危ない気配はしてるんですよ。先輩気をつけないと……」


そう言ってジュードは私の腰をグイグイと引き寄せてまた自分身体に近づけた。


ジュードは現場把握能力が凄いから、やっぱり自分以上に何かの気配に気づくのかしらね。




私もジュードのそういう所を見習わないと……。






「ジュード、今日は遠征になってしまったわね。部屋が一室しか空いて無かったようだから、一緒の部屋で我慢しましょうか」



「先輩勿論です。むしろ望みが叶ったような…夜に先輩からの要求があれば全部答えられる様にしてありますので」



「えっ?明日はまた仕事があるから、今日は早めに寝ようね。ジュード」



「……はい…」



ジュードは急に静かになりベッドに横になったのて、私ももう一つのベッドに寝る。



そしてジュードが寝静まったかな…と思った頃に私は起きた。


やっぱり性的な攻撃も不意打ちのいたぶりもやらないといけないよなぁ……正直しなくともジュードは精神力も強いから私なんかで壊れる事もないだろうけど……


特に女性に性的な要求を仕掛けると、精神的に崩れやすい子が多いんだよね。

最後までやらないけど、ショックでボロボロになる子もいる。


もしくは、喜んで楽しむ子もいる。


男の子だって精神的に崩れやすい子もいるが……逆にそれをバネに誰よりも結界作りが得意になった魔術師もいたわね。


ああ…アデル君だ。誰にも壊せない様な結界を作って上級魔術師を大いに驚かせ、最速で中級になった子。

今はその特技を活かして国境の結界を補強してるっていう話を聞いたわ。



そうそう…今はジュードの事を考えないと。

やるしかないか……今は寝てるけれど、私がいきなり攻撃を仕掛けても彼なら直ぐ気がつくだろう……



まあ…一応結界が張ってあるか確認…んっ??全く警戒心がないのかしら?


結界を張ってないで寝てるじゃないの……



とりあえず拘束呪文で身体を動かせないようにしてから……よしっ……彼を起こすか……



「ジュード?起きて……ええっ?!」



ジュードを起こそうとして呼んでみたら、ギラギラした彼の目と私と目が合い逆にビックリしてしまった。



「先輩…身体が全く動きません…だからこれから先輩にいやらしくて性的な事をされても文句はいいませんので……やって下さい……さあ」




「起きてたの?今目が合って本当にビックリしたわよ。ジュードは結界も張らずに警戒心が無かったのは迂闊ね。貴方らしくないミスをどうしたのかしら?」



「ミスです……うっかりしていたのです。困ったな……はあ……先輩の拘束が全然解けません。いやらしい攻撃をするのは甘んじて受け入れます……さあ」



「いやいや……ジュードちょっと待って!!簡易拘束だから貴方なら簡単に解けるでしょう?早く拘束解除して……そうしないと触手を使ったりスライムを使って直接触ってしまうのよ?」



「ああ……幸せ……はい……お願いします」



えー??お願いします???

っておかしいんだけどな……




寝ぼけてるのかしら?……スライムを使って目を覚まさせて貰うか…



私はジュードにスライムを放った。スライムは服の上からでも刺激を与えるようでそこは膨らみ、彼のあれがガッチガチに持ち上がっているようだ。



あれっ?

ジュード??

何故拘束をとかないの?



そう私が思っている間にもスライムはジュードに刺激を与えているようだ。



「ハ…ア…アア…ハンア……クラン先輩にこんな姿を見られているなんて」



「ジュード……目が覚めてきたかしら?そろそろ拘束解いてくれないと貴方の評価が悪くなっちゃうわよ」




「ハアハア……拘束…無理です……ああ……先輩が無理矢理……仕方がない事なので、このままで……そのまま続けて下さい……さあ」




「ええっ!!……そ、そんなあ……」




大体これっ!!ただのスライムよ!!



魔力がない子供でも捕まえて遊んだりしている魔物だと言うのに……



私はスライムがジュードを攻撃しているのを見ながらどうして簡単な拘束をジュードが解除しないのか焦っていた。




「ハア…先輩先輩…苦しいです…先輩が……スライムに攻撃されている私を見ていて……ああ振り解けないです…ハアハア」



「ジュード……もう起きてるでしょ。拘束解いて!!」



「先輩……攻撃……やめないで……下さい」



「…貴方……喜んでるよね……」



「い、いえ……そん……な事は」



「……」



私は呆れてスライムを引っ込めた上でジュードに正座しろと命じた。


すると、ジュードは素直に従い息をするように簡単に拘束を解き正座をした。



ほらっ!!やっぱり拘束は直ぐ解けるじゃないのよ!!



ジュードは興奮しているせいか顔を真っ赤にさせながら、残念そうな表情で正座をしている。



エリート騎士が真夜中に顔を真っ赤にさせながら正座をするというシュールな絵面である。



「あのね、ジュード……貴方じゃなくても解ける様な簡単な拘束なのに何故直ぐに解かないの?

そんなんじゃ捕虜になったら何でもされちゃうでしょう?駄目だよ。

貴方は騎士団の副団長になっていたのだから、魔術師の実習の本当の意味も分かっているのよね?

これじゃ魔術師裏試験通らないのよ?分かってる?」




「知っていたからこそです」



「はあ???」



正座したままのジュードは顔を真っ赤にさせたまま私に丁寧に説明してくれた。



「副団長になった時、下級魔術師が行う先輩方との実習の本当の目的が魔術師裏試験という事が分かりました。

性的な事もされるかもしれないと……それで副団長を辞職して下級魔術師試験を受けたのです。辞職は止められましたけど……」



「ええー?」



「辞職を保留にする代わりに私の実習の担当はクラン先輩が担当しろとの要求が通りまして……この様な機会を頂き感無量です。クラン先輩ずっと前から好きでした。恋人になって下さい。何かあったら必ず責任取ります。何かなくても必ず責任取ります。幸せにします。」



「えええっー!!」




これは……私は自分の上司にも騙されていたんではないのかしら……ステラ姐さんはここまで知っていたの?



そして冷静になって今の現状を見ると、未だ興奮しているのか顔を真っ赤にさせたまま正座しているジュード。


その彼が目をギラつかせて私に告白してきた……もしかして私って今危ない?


私はジリジリと後ずさってみる…



「クラン先輩……2人っきりで興奮が冷め止まらないんです……責任とって貰えませんか……」



ジュードが正座から立ち上がってジリジリ近づいてくる……



「ちょっと待て!先輩に歯向かうと評価が悪くなっちゃうのよ!!」



「大丈夫です…次はしっかり挽回します。

今回は先輩がいやらしい攻撃して下さると思って事前に私も心構えをしておいたのですが残念です……私は大好きなクラン先輩なら何されても嬉しく感じていたんですが……して下さらないのなら……するまで」



ああ……ジュードは優秀だから……次回で挽回なんて……簡単だ!!



今は逆に私の方がピンチだわ…!!



身体に触れられる前にギリギリ防御結界をかける……もう解除されそう……3連重ねる……もう解除される……身体強化しつつの幻覚魔術展開……くうっ跳ね返された……拘束魔術……解かれて逆に拘束される…貴方はっ!本当に優秀ねっ!!



「先輩も魔術師として本当に優秀ですね。私じゃなければ今の展開が早い連続攻撃は難しかったと思います。

流石は上級魔術師です。でも私も先輩に相応しい人間になれる様に頑張ってきました。先輩を大切にします」



強力な拘束が私に3連?4連でかけてある!でも少し時間をかければ解けるはず……解いていくが、ジュードが頭を強く押さえてキスをしてきた……ああ……お願いだから舌まで入れないで……



「ンア…ア…ハア…やめ」

「先輩先輩…ンチュウッ…チュ…アム…先輩の唇……」


するとジュードは夢中になってキスをしながら「好きです」「クラン先輩可愛いです」と愛の言葉を囁きながら両手で頭を抑えつけてやめてくれない……



「ああ…ジュード…ハ…やめ…アア…」

「先輩やめてって言ってますけど、先輩の唇の方が私を離してくれないのですよ」



そう言ってまた私唇を奪っていく……



「ほらやっぱり…先輩の唇が悪いんじゃないですか……悪い唇ですね……責任はとりますからね。ああ……先輩可愛いです」



「ハア…やめて…アア…」



ジュードがたまに唇を離して愛を呟くので、その隙に少しずつ拘束解除を再開する…よしっあと1連…解除…できた!




「ハア……拘束……解除できたわ……」




「先輩流石です!!でもすみません。これだけ至近距離だと……力では完全に私が強いので……先輩をこれから護らせて下さい。幸せにします」



ジュードは離れようとそた私を片手で私の両手を拘束し、もう一方の片手で身体をガッチリ抱きしめられて逃れられないまままたキスをしてきた。



「ジュ…ジュード…駄目…ハアハア…これ以上は……困るわっ」

「クラン先輩とキス……気持ちいい……夢のようです先輩…クラン先輩も……私に身を委ねて下さい。一緒に……気持ちよくなりましょう……」



ジュードは愛を呟きながら私を翻弄し、私は途中から意識が途絶えてしまった。





チュンッ チュンッ



そのまま2人で夜を共に過ごしてしまった次の朝



「ジュード……私は……先輩魔術師として失格だわ……」



「先輩……すみません……私が優秀過ぎるせいでクラン先輩は悪くないです。悪いのは全部私です。責任を取らせて下さい。どうか付き合って下さい。大事にしますから……」



昨日までは自信満々だったジュードが今は少し私の様子を伺うようにして自信なく覗き込んでいる。




「ジュード…私は魔術師としてそれなりに自信があったの……でももしジュードのような敵に捕まったら多分……洗脳までされるかもしれない……そうしたら貴方が私を殺してくれないかしら……?」



昨日からの出来事が私の頭をよぎった。上級魔術師としてこんなに後輩の下級魔術師に翻弄されるなんで……指導する側の私にとってあるまじき事だった。


こんな事では私がもし敵に捕まってしまったら……そう思うと自分の今までの自信が打ち砕かれるような気持ちになってしまった。



「クラン先輩……いやクランが捕まる前に私が必ず敵を倒します。だから安心して私と付き合って欲しい。私にクランを委ねてくれないか……好きだ」



ジュードはこんな魔術師として情けない姿の私でも護ってくれるのね……こんな凄い奴が私の事を好きだなんて……



今まで1人でも頑張ってやってきたし、これからも大丈夫だと思っていた。


そんな自分が自分じゃない誰かの事を考える様になるとはね……ふふっ……ちょっと強引だけど……この人と一緒なら私は意外と幸せかもしれないかもね……



「ふふふっ……そう……それは頼もしいわね……ジュード……恋人として……これから宜しくね!!」



「本当かっ!!クランクラン!!ああ…好きだ!」



ジュードが急に私を抱きしめた。


そして私の目を合わせてじっと見ているので、私も目を逸らせないでいると……次第に顔と顔の距離が近づいてきて唇を重ねた。



それから2人で暫く惚けてしまってから…またキスをし合った…



ーーーーーーーーーーー

ジュードside



俺は昔から全てにおいて出来が良かった 。


友達と遊んで騎士の真似をしていても負けた事はないし、家では生活魔術を使って両親を手伝っていた。


自分では簡単に出来る事ばかりなので、出来る事をしているだけなのに他のみんなは出来ないという。


そうしているうちに自然と騎士になった。

国のエリートである騎士の中にいれば俺のような奴らがゴロゴロいるんだろうと思っていたのだ。

しかし同じような者は余りおらず、この場所でも自分が出来る範囲で騎士を助けたり隊を率いていたらいつの間にか賞賛されて副団長になってしまった。


この国のエリートと呼ばれる騎士はとてもモテる。


騎士は貴族でも平民でもこの国の者なら実力さえあれば誰でもなれる職業だ。

そう。実力があればだ!!


騎士になると貴族や平民など身分的には何も関係なくなり、騎士という職業に一括りになる。


それに、いくら貴族出身でも騎士になる奴は爵位の継げない人間、いわば将来婿養子として嫡子がいない貴族に出されるか、平民になる可能性が高かった奴ばかりだから騎士というのは爵位ではないが、それなりに名誉ある職業と言ってもいい。


そんな騎士になると完全に実力社会であり、実力と実績さえあれば貴族の爵位を賜ったり、出世していくのでやりがいがある職業だと思う。


騎士は普通の身分ではなくなるから、平民の女性も上手くいけば結婚相手になれるし、貴族の女性達は将来有望と思われる騎士を見つけてチャンスがあれば狙って来るものらしい。


俺はそんな中で1番の出世頭と思われている自覚はあった。

だから色んな女性からのアプローチが凄い。


仲間のみんなには羨ましいと言う者もいたが、女性からのアプローチの中には人を陥れようとしたり、媚薬を盛って既成事実を強引に作ろうとする者も現れる訳だから殆どが同情である。


しかし逆にモテすぎた弊害というのか……人並みに性欲はあるものの毎度の待ち伏せや高位貴族からの娘の紹介やらの対応にうんざりしていた。



人の出世に寄りかかろうとする奴らが多すぎる。

そこに力を使うなら自分で人生切り拓けばいいのに。



いつからかそんな事を思う様になっていった。



そんな時、国境の魔獣討伐に駆り出され隊を率いていた所を不意打ち気味で魔獣に襲われる出来事があった。


隊を率いている者としては失態だ!!


だが、まだ運よく怪我人もでていなかった為大勢を立て直そうとした矢先、魔獣が群をなして更に襲っていた。


隊が危ない!!


そう思った時、後方から魔術師が強力な防御結界が一瞬で張られ、一時的に時間を稼ぐ事ができ難を逃れる事ができた。


あの一瞬であの防御結界を張れるのか!!


素晴らしい才能と弛まぬ努力がないと出来ない事だ。


隊の無事を確認した後で魔術師にお礼を言いにいくと……



「私は上級魔術師のクランです。間に合って良かった!」


と言って魔術師のフードをとって挨拶をしてくれた。



「!!!!」


そこにはストレートで長い髪をしたプラチナブロンド女の子が立っていた。そして輝く青い瞳と整った顔が微笑んで俺の方をみてホッとしているのが分かる……


そんな彼女が見せてくれた防御結界は素晴らしく、自分で努力を惜しまず練習に励んだ成果でもあるし、それと同時に彼女は誰かに縋ろうとする女と違って、自分で自分の道を一生懸命拓いて来たんだろうと思うと胸が熱くなった。



可愛い!!えっ?君魔術師なの?しかも上級??

凄いじゃん!!胸熱だし!!一目惚れなんだけど付き合って欲しい!!



本音で言いたいこ事が溢れそうになったが何とか押さえつけた。



ついさっきまで自分らを守ってくれた魔術師に対して尊敬と敬意しかなかった筈なのに、今は恋しかない。



俺ってこんなヤバい奴だったか……



その出来事があってからは上級魔術師クランの情報を収集する事が生きがいになった。


俺が知らなかっただけで、世間では可愛くて有名な上級魔術師だった。

しかも普通にモデルや女優のブロマイド写真と同じ様な売り場で沢山売っているようなアイドル扱いだった。


もっと知りたい……もっとクランとお近づきになりたい……クランといつか恋人になりたい……


そんな悩ましい日々を送っていた時に知ったのが魔術師裏試験だった。


何だど!!上級魔術師は下級魔術師に実習という名目で色んな事をしていたのか!!


と……いう事はクランも……色々やられたりして上級魔術師になり、今は下級魔術師に対してあんな事やこんな事をしていると言うのか!!



そんな事は俺が許さない!!



けしからん!!



けしからんぞ!!




「団長、突然ですが今日付で副団長と騎士を辞めさせて頂きたいと思います」



「えっ?おい、ジュード本気か?突然どうしたんだ!!お前ほどの有望な人材はいないと言うのに、辞める理由はなんだ!」


「魔術師になる為に下級魔術師試験をうけるからです」



「はあ??意味が分からないぞ。お前は魔術師にならなくても騎士として魔術も使っているだろう??別に魔術師にならなくてもいーじゃねーか?」


団長が興奮して来て言葉使いが荒くなってきた。



「騎士は廃業します。魔術師としてやっていきたいと思います」



「なあ!!ジュードよ。何が不満なんだよ!!お前の統率力のお陰でうちの団の奴らがどれだけ救われたか知っているだろう?団長の俺でもお前は可愛い後輩で次期団長はお前だと前々から考えているんだ!!頼む!!そんな事言わないでくれ!!」



……確かに団の連中を助けた事は何度もあったが、やれる事をしたまでだ。


それより俺はクランに会いたい。


どうすれば直ぐ会えるのか……出来れば2人っきりになる方法は……やっぱり実習で俺の担当をクランにしてもらう事しかないだろう。



「……分りました。団長が条件を呑んでくれましたら辞職はしません」



「ジュード!!条件っていうのは何だ!!辞職しないなら出来るだけ条件を呑んでやるから!!」



「下級魔術師試験は受けさせて貰います。そして私の下級魔術師の実習は上級魔術師のクランに担当してもらうという事です」



「あのな、流石に騎士団が指示をしても魔術師団の連中がそんな事で担当が動く訳ないだろう?むしろそんな指示を出したら魔術師団の連中は絶対クランをお前の担当にしないぞ!」



「そうですか……では騎士団は辞めさせて」




「わあーーーーーー待て!!待て!!」




「希望が通らないのであれば……」




「うぐっ……わ、分かった。出来るだけジュードの希望の答えられる様にしよう」



こうして俺の実習は希望通りクランが担当する事になった。



初めてクランにあった時は舞い上がってしまい、数々集めたクランのブロマイド写真より実物は素晴らしかった。



しかも可愛いだけじゃなくて、日々の努力は怠らずコツコツと精進している姿をみると、他人を必要としてはいないかもしれないが……そんなクランだからこそ万が一の事があれば俺を頼って欲しいとそんな存在に俺がなれたらいいと思う様になっていった。


だから少々強引な……クランには申し訳なかったが、クランの心を折るような事をしてしまった。

クランは防御魔法に特化している為、俺の得意な攻撃の分野は弱かったからで、クランの実力が劣っている訳では全くないのだ。


そして、ほぼ……計画通りにクランが俺の手の中に入ってくれた。



可哀想に……もう逃げようと思っても絶対逃さないよ。


そう思っていたらクランも俺の事を好きになってくれたようだ。


好きじゃなくても逃しはしないが……気持ちが通じ合うというのはこんなに幸せになるものなのだな。


今日の朝もクランのキスで目が覚めると、恥ずかしがりながら照れて「ジュード起きて!朝だよ!!」とはにかんでいるクランを朝1番で見れた!!



何だ!!

ここは天国か!!



クランが可愛い!クランが可愛い!そんな思いが強くなりすぎて何をされても嬉しい状態になってしまう。


変態と思われても俺もクランに見合うように弛まぬ努力がクランに認められたようで……恋人となりついに一緒に生活を共にする事ができたのだ。




最高に幸せだ!!




ーーーーーーーーーー




「それで…クランはまんまと囲い込まれてしまった訳ね。予想はしてたけど」


「ステラ姐さん…でもステラ姐さんは私がジュードの担当になるのを知ってて実習の相手に推薦したんですよね…正直複雑ですよ」


「しょうがないじゃなーい!それに私が推薦してなくても、状況は変わったと思う?あの優秀な次期騎士団長になる男よ!」


「まあ……変わらなそうですけど……」


「でしょう!それにクランは今幸せなんでしょう?羨ましいわよ!!」


「まあ……そうなんですけど……」


「ならいいじゃない! クランはむしろ恋のキューピッド役を演じてあげた私をもっと褒め称えて欲しいわよ!!

ほらっウワサをすれば……あいつ私がクランと仲良いからって睨んで来るんだよねー嫉妬深い奴だわ……そういう事でそろそろ逃げるわねーじゃあね!」


「あっステラ姐さん!!」


ステラ姐さんはそう言うと、あっと言うまに消えてしまった。


「クラン?今ステラ・マージと一緒にいたが……いくら女性同士であってもできれば……嫉妬するからほどほどにして欲しいのだが……」


「ジュード!あっ今仕事中だから副団長か。もう心配性だなあ……私はジュード副団長に一途だっていつも言っているでしょう?」


「クラン!ああ……もう大好きだ……」


「あっ副団長!!今は仕事中だから抱きしめるの無しだからね。だけど帰ったらいっぱいハグしようね!!」


「クラン!仕事中だからそんなに煽らないでくれっ。わかった。今日の仕事も早めに終わらすから!!」


ジュードはそう言ってまた足取り軽く騎士団の方に戻っていった。


あれっ?

今のジュードは魔術師団の敷地に何しに来たのかしら?


もしかして私の顔を見る為にわざわざ魔術師団の方に来たのかしら……


ふふふっ


ジュードはあれから次の実習で評価を受け、中級魔術師の資格まで取ってから騎士団の方に戻っていった。


そして今は第二騎士団の副団長にまた収まったし、魔術師団の人間とも仲が良いので騎士団と魔術師団の橋渡し的な立場で重宝されているらしい。



本当優秀だなぁ。



そしてジュードと私はあれから恋人となって一緒に暮らし始めた……。


だからジュードが魔術師試験を受けた理由は恋人を作る為だったっと言う訳で……




私はとても幸せです。




おしまい。





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【完結済】エリート騎士が変態だった模様。恥ずかし気もなくグイグイ迫ってきて私を溺愛しようとするんですけど うらひとちゃん @urahito_

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