第7話
* * *
半年ほど経ったある日のこと、遂に僕の作品が完成した。タイトルは【魔法使いの弟子】
この作品が後に大ヒットとなり、僕は一気に有名作家の仲間入りを果たした。
しかし、その日を境に僕は体調を崩してしまった。
最初は軽い頭痛と吐き気だけだったのだが、次第にそれは酷くなり、ついには立つことも出来なくなってしまった。
心配した家族の勧めで病院に行くと、医者から余命宣告をされてしまった。
なんでも、脳腫瘍がかなり進行していて、もう手の施しようがない状態なのだそうだ。
その話を聞いた時は、目の前が真っ暗になった。
これから先の人生、あとどれくらい生きられるのかは分からないが、それでも残された時間を精一杯生きていきたい。
そう思った僕は、最後の力を振り絞って、今までの人生を振り返ることにした。
すると、あることに気づいた。
そういえば、まだ書いていないことがあったなぁ…… それは、タイトルである。
せっかくだから、自分で付けようか………… ふむ…… 【小説家になる方法】
これでどうかな? うん、悪くないんじゃないかな。
これならきっと、みんな読んでくれるはずだ。
そう考えた僕は、早速パソコンを立ち上げて執筆に取り掛かった。
こうして生まれたのが、あの有名なベストセラー小説 【小説家になる方法】だった。僕は自分の人生が詰まった本を書き上げることが出来たことを嬉しく思いながら、静かに息を引き取った。
そして、現在に至るわけだが……
――
どうしてこうなった!?︎ 俺は思わず心の中で叫んだ。
だってさ、普通こういう時って、天国的なところで神様とか天使様が出てくるもんじゃないの? それが何でこんな森の中にいるんだよ………… しかも、隣にはなぜか女性が立っているし…… 俺は恐る恐る女性に声を掛けた。
――……あのぉ〜 もし良かったら、少しお茶でもいかがですか?
(はい?)
はいぃ!?︎ 俺が女性に話し掛けた途端、女性は俺の腕を掴みどこかへ連れていこうとする。
俺は慌てて抵抗するが、相手の方が力が強すぎて振り解けない! 俺はそのまま引きずられていき、屋敷の中に連れて行かれた。
――
こ、ここは一体どこなんだ!?︎ 俺は今どこにいるんだ!?︎ 周りを見渡すと、そこにはたくさんの人がいた。どうやらここは食堂のような場所らしい。その証拠にテーブルの上には豪華な食事が置かれている。
よく見ると、俺と同じ状況になっている人が何人かいた。しばらく待っていると、奥の扉が開きそこから一人の少女が現れた。
その少女は白髪でとても可愛らしい顔立ちをしていた。
年齢は12歳前後だろうか? その容姿はまるで人形のようで、俺は一瞬見惚れてしまっていた。……って! そんなことを考えている場合じゃなかった! 俺は急いでその場を離れようとしたが、それより早く彼女は俺に向かって歩いてきた。マズイ!捕まる!! しかし、彼女が伸ばした手は俺に触れることはなかった。なぜなら、横にいたソフィアさんが彼女を止めたからだ。
――
ソフィアさん! ありがとうございます! おかげで助かりました!
――
いいえ、気にしないで。それよりも、この子から目を離さないようにしてね。
――
分かりました!……ん? あれ?
なんで、俺の小説の登場人物であるソフィアが、ここにいるんだ?
それに、テーマが小説を書くなんておかしいぞ? どういうことだ?……まさか! もしかすると、これは夢なのか!?︎ だとしたら納得だ。
ということは、ここで起きたことは全部忘れて、もう一度最初からやり直せということだろう。
よしっ! そうと決まれば、まずは目の前の女の子に声をかけるところから始めよう。
* * *
その後、俺はこの世界で自分が体験したことを物語にして書き始めた。
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(おわり)
高宮悠斗は小説を書きたい 高宮悠斗 @kanknk
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