アダルティックなメリーバッドエンド、舞台と題材の着眼点の妙も素晴らしい

 先ず舞台設定として現代の高校生という汎用的な素材に、古典怪談としての百々目鬼を融合させる着眼点とそれらを組み合わせて齟齬の生まれない物語の構成の高さには目を見張るものがある。他人の視界をジャックする異能力を日本の妖怪由来とすることで根拠の所在を明白にし、読者に展開を飲み込ませやすくする効果も期待できる点も高評価。
 二つに、完全に私の趣味ではあるが最後まで主人公に救いのないバッドエンドシナリオは、読んだあとのやるせなさも含めて読む価値を見出してくれる力がありとても好ましい。性的描写を文学上の表現として婉曲的に書いていたのも素晴らしい。敢えてあからさまでないところに奥ゆかしい日本のエロスを感じた。
 最後に差し出がましいことではあるが、全体を通して誤字脱字が散見されるのは少し頂けない。物語の中身がいいだけに、話として盛り上がる所で誤字や脱字を見つけてしまうと読み手の熱が冷めてしまう恐れがある。更新のペースを崩さないことや早く作品を仕上げることは確かに重要かもしれないが、投稿する前の推敲・校正は何度してもし過ぎることはない。
 しかしながら繰り返しになるものの、物語の内容・構成自体はオリジナリティや工夫を感じられ、エンターテイメントとしてとても楽しく読ませて頂いた。最後のメタフィクションも読み手を最後まで引き込んで離さない良いアクセントとなっている。