百々目鬼(どどめき)
どくどく
百々目鬼
百々目鬼
「
ある女生れて手長くして、つねに人の銭をぬすむ。
名づけて
外史は函関以外の事をしるせる奇書也。一説にどどめきは東都の地名ともいふ」
…………。
手長くして、と言うのは盗癖があるということである。
鳥目というのは、当時の銅銭の中央に飽いた穴が鳥の目に見えることから、銅銭を指している。
盗みを繰り返して人の財布に手を出した女性の腕に、百の目が生まれた。その目は盗んだ銅銭が憑りついたものである。要約すれば、そういう内容だ。それが『今昔画図続百鬼』に描かれた百々目鬼のすべてである。
女性が奇形の妖怪になる。或いは女性を模した妖怪というのは少ない物ではない。雪女や濡れ女、絡新婦に骨女。現代であれば口裂け女にトイレの花子さん、メリーさんなど数知れない。
美しい女性だからこそ妖しくなるのか。或いは見た目麗しい女性だからこそ、その中にある曇りが映えるのか。百々目鬼は後者だろう。盗癖という醜い部分が顕れるように、腕に目が生えた鬼となった。
鬼、と名こそついているが頭に角はなく、また人を襲ったという話もない。ただ盗みを繰り返した女性が奇形となった。その原因は盗みに対する天罰か、単に鳥目の精が乗り移っただけなのか。最終的に女がどうなったか、などと言う逸話もない。
ただ『今昔画図続百鬼』には、先の文章と目が生えた腕をさらす女性が一人立っている絵画があるだけだ。
この女性――盗みを繰り返してきた女性がどうなったか。それは誰も知らない。
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