ヒト
結局、親という存在もふたりのヒトにすぎない。
ふたりのヒトが結婚して子供を作り、
それぞれが父親と母親になっただけ。
ただそれだけであって、それ以上でもそれ以下でもない。
そんな存在に対して、どのような感情をもてばいいというのだろう。
怒りも恨みも憎しみも、すべて僕の中から消え去ってしまう。
でも、最後にひとつだけ残るものがある。
何もかもが去っていっても、僕の中に残る唯一のもの。
それは、許し。
ヒトとしての存在そのものを許さないなんて、僕にはできないからだ。
僕もまた、それ以上でもそれ以下でもない、ただのヒトなのだから。
それを認めなくては、自分という存在を許すこともできない。
あるいは、僕が出来の悪い子供だからなのだろう。
親になった証が子供だというのなら、
ふたりのヒトの人生はなんだったのか。
そんなことを考えてしまうからなのかもしれない。
寂しさも悲しさも孤独も、きっと僕だけのものじゃなかったはずなのに。
「あなたは人殺しの目をしている」
そんなことを言われたのも、いまとなってはなんでもない。
実際、当時の僕はそんな目をしていたのだろう。
自分という人間をひとり、すでに殺していたのだから。
僕は、きっと感謝しているのだと思う。
ヒトとして生まれ、ヒトとして存在できていること。
その機会を与えてもらえたことに。
リコラトコ 桜瀬悠生 @mogurikumaru
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