第4話
日曜日の天気は大荒れだった。雨風は強く、大型の台風でも来たのかという具合だった。私は学校から日曜日は教会に行くようにと言われていたが、こんな天気なので家で大人しくしていた。休みの日は大抵部屋にこもって過ごす。漫画を読んだりゲームをしたり。それらは楽しい。しかしそれと同時に空しくなる。私にはこんな魅力も才能もないと再認識させられるし、この世界はこんなに素敵じゃないと気付かされる。そしてまた死にたくなる。
月曜日は憂鬱だ。毎日憂鬱だが月曜日は特にそうなのだ。その次は日曜の夜だ。1番憂鬱でないのは金曜日の放課後だ。
朝のニュースでは昨日の豪雨で行方不明者が出たと報道されていた。
電車は昨日の豪雨の影響で遅延していた。混み合った車内から川を見る。川は水位が上がり、どす黒い色をしていた。空はそれに反して怖いほどに晴れ渡っていた。
ぎりぎりの時間に教室にたどり着く。隣はまだ空いていた。席に着くなり、担任の先生が入ってきた。先生はやや慌てた様子だった。点呼も取らずに、お知らせがあると言った。何かと思い耳を傾けていると
「昨日の豪雨で園田さんが行方不明になりました」
と告げた。教室は騒ぎになる。
「今、捜索をしてもらっているので……」
先生の声も教室のざわめきも遠くに聞こえた。その日1日はなんだかふわふわと落ち着かなかった。行方不明ってどういうことなのだろうか。園田さんの家は都心にあるのだ。どこか山間にでも出向いたのだろうか。
家に着くと、園田さんから大きな封筒が届いていた。私は急いでそれを開ける。中には以前園田さんが交換ノートにすると言っていたノートが入っていた。
開いてみると
「死にたい」
と一言書かれていた。ああ、園田さんは自殺したんだ。
そういえば私がいつも見ているあの川は園田さんの家の方に繋がっている。昨日の豪雨の中、川に飛び込んだのではないだろうか。憶測でしかないが、行方不明になるならそこぐらいだろう。
私は園田さんが書いた下に
「私も」
と書いた。そしてそのノートを持ち家を出る。川へと向かう。
草をかき分け進み、川に出る。そしてそこにそっとノートを浮かべた。ノートはどんどん流されて、手の届かないところへ行き沈んだ。
その後、園田さんの死体は見つからなかった。私は園田さんは今も川にいると思う。
身近な人の死を経験するのはこれが2回目だ。初めて気付いたことは、死ぬと会えなくなるということ。園田さんとは死について語り合ってみたかった。しかし、園田さんはそれを望まなかった。一方的に死への欲望を伝えることしかしなかった。私は園田さんの意思を尊重することしかできない。
私は今日も川を見る。園田さんは満たされているだろうか。私はいつか満たされるだろうか。川はキラキラと輝いていた。
川を見る 友利日香梨 @hikari_tomori
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