風呂上がりの魔法使い

@2202sunao

 俺、朱雀堂御影は魔法使いだ。


とはいえ代々魔法使いの家系で〜とかこの世界では普通だ、なんてことは全然ない。当たって普通な家庭である。ただ、ふと気がついた時には何故か使えていた、それ以外は普通の高校生である。

 そんなことを心の中で語りながら俺は風呂を出ようとするが、少しふらつく。よくあることだが少し入り過ぎたのかもしれない。だがこれぐらいが好きなのだ。

『今日の晩飯は肉より魚の気分だなー』

なんてさっきとは打って変わって平和な事を考えながら風呂のドアを開いた時、


『あぁー』


これもよくあること。少しのぼせてしまって目の前が真っ白になる。入りすぎることがよくあるのでこれもしょっちゅうある。だがこれを待っていた。ここで話が変わるが、「電池は擦れば復活する。」なんてのは常識である。これは電池の中が加熱されて反応が促進されるからである。そして俺の脳細胞はそれと似たことが起きるらしい。脳が半分しか使えていないという映画があったような気がするが、完全に使えるようになるとどのようなことが起きるのか。あの映画ではまるで魔法が使えるようなことが起きていた。そう、俺にも同様なことが起きるのだ。

「今日の晩御飯は鮭が安かったから鮭の塩焼きよー」

母がそんなことを言っているのが真っ白な視界の中聞こえる。これが俺の魔法。風呂上がりに考えていたことが起きる。この現象が起きるのは風呂上がりだけ。だから俺は『風呂上がりの魔法使い』なのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

風呂上がりの魔法使い @2202sunao

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ