素敵な一日を!

夕日ゆうや

わたしの願い事!

 七歳になったわたしはクリスマスが待ち遠しくて、クリスマスイブを夜遅くまで起きていた。

「まだこないかな!」

 興奮していて、寝付ける様子はない。

 まだ目がさえているのだ。

 お昼あれだけ騒いだのに、まだ遊びたがっている。

 ぼふっと何かが落ちる音がする。

 わたしは気になって音のしたリビングへ向かう。

 家族が寝静まった夜だ。

 泥棒でも入ってきたのならどうしよう。でも、もしかしたら――。

 わたしは近くにあった木材を持ってリビングを開ける。

 とそこには知らない男の人。暖炉から現れ、赤を基調とした服に白いふわふわな飾りが付いている。暖炉から大きな白い袋をとろうとしている。

 蓄えたひげが、特徴的な男の人。

 わたしは近づくと、声をかける。

「あなた、サンタクロース?」

「ふぉふぉふぉ。よく気がついたのう。じゃが、こんな時間まで起きているとは悪い子じゃ」

 時計を見ると十二時を回っていた。

「うん。でも本物のサンタ会えるなんて幸せ」

「君が望んだのはサンタとの一日、だからわしがきたのじゃ」

「うん! 待っていたわ!」

 こんなプレゼントは初めてだ。テンションが上がるに決まっている。

「じゃあ、夜会に招待しよう」

 サンタが持っていた杖を一振りすると、わたしの身体が浮かび上がる。

 そして煙突から出ると、空飛ぶソリに乗る。

「わしらの夜会は素敵じゃよ」

「楽しみ♪」

 シャンシャンと鳴り響くソリ。

 12月というのに寒さを感じないのは魔法のせいか。

 わたしはソリから町並みを見下ろす。

 キラキラ輝く宝石箱みたい!

「夜の町並みは綺麗じゃろ?」

「うん! すっごい」

 言葉にするのもはばかれるような美しさにため息が漏れる。

 やがて雪国が見えてくる。

 そこにはたくさんのおひげを生やした男の人がいっぱいいる。

「あれも、全部サンタさんなの?」

「そうじゃよ。みんなこの日を楽しみやってきたのじゃ」

 そう言ってソリを雪の上に降りる。

 薄い膜が半球状に展開されていて、その中にはチキンやポテトサラダ、ケーキが並んでいる。

「これ、食べていいの?」

「ああ。もちろんさ」

 サンタにうながされ、食事を始める。

 たくさんのサンタが自分の町や国の旅路を話してくれて、とても盛り上がった。

「そろそろ時間かのう。家にお帰り」

 サンタの一人が言うと、夜中連れてきたサンタがソリに案内する。

 シャンシャンと音を鳴らし、また上空へと上る。

 どれほどいたのだろう。朝日がまぶしい。

 わたしはもといた世界に帰る。

「ばいばい。サンタさん」

 別れを告げると、わたしはベッドに潜り込んだ。

 楽しい一日を、ありがとう。


                              ~Fin~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

素敵な一日を! 夕日ゆうや @PT03wing

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ