小説の概要に記されている言葉で、おおよそどんな味わいの作品がわかります。わからない人は読まないことをお勧めします。すごくわかりやすく読者を選ぶ物語。アーカムという言葉から想定される設定と、登場人物やモノたち。主人公をとりまく昏い呪。謎の美少女。
主人公のモノローグで進む物語は、つかみどころのない悪夢に落ちた感覚を紡ぎ、甘美で狂おしい死と再生との邂逅を演出します。
ぼんやりとボルヘスの気配が霧のように漂っているのが心地よいです。まだ迷宮図書館には入っていないのですが、独特のリズムで描かれる図書館の佇まいや事件がとても楽しみです。
本作とは関係ないと思いますが、「地獄震」という言葉で、バイオレンス・ジャックの関東地獄地震を思い出してしまいました。あれは凄惨で苛烈な物語でした。
キャプションで既にひしひしと感じられますが、「意味深で謎めいた災害」「なんらかの意図を感じずにはいられない学園都市」「季節外れの転校生として現れた、死んだはずの幼馴染の少女」「フィクション溢れるネーミングセンス」と、好きな人には垂涎の設定がモリモリ登場します。これだけでも序盤の物語から期待大ですが、更に作者特有の短いセンテンスで畳みかけるようなテンポ感のある文章もまた、雰囲気をより引き立てていると感じます。
裏を返せば、人を選びかねない、間口が広いわけではないことを意味しますが、それは作品が先鋭化していることに他なりません。キャプションでビビッと来た方は、まず読んでみてください。