第4話『今度、書こうと思っている小説の話なんだけどさ』

「未来の世界では、なんでも資源になるんだ」


 昼食を終えて、料理の時に出た野菜のヘタや芋の皮、肉の骨などは、専用のシュレッダーに入れた。すぐさま粉々になり、材料になった。もうそろそろ、完成かな?


「今度、書こうと思っている小説の話なんだけどさ」


 母には小説の話もした。書こうとしているアイデア、あらすじ、SF、聞きかじったテクノロジーの話、なんでも楽しそうに聞いてくれた。


「世界の食糧事情を解決するために、なんでも炭水化物とかに変えてしまうナノマシンが開発されるんだけど、それが暴走しちゃって、地球がどんどんと食べ物になるんだ。何になったら、面白いだろう?」


 SDGsの一環で、環境回復ナノマシンが散布されたのが数年前。プログラミング・ミスにより、地球のうどん・そば化が進んでいるという。


 海は、ナノマシンの働きにより、鰹と昆布の豊かな出汁となり、大陸は麺、大山脈はお揚げ、雲は天ぷらに組み換えられていく。


 北半球は、赤いきつねが多く、南半球は、緑のたぬきが優勢だと言う。宇宙飛行士によると、宇宙から見ると、地球は赤と緑の太極図のように見えるらしい。


 青いほしは、赤いきつねと、緑のたぬきになっていく。


「即席うどん、本当に好きやねえ」

「うん。めちゃくちゃお金持ちになれたら、すんごい大きなやつを作って、全身で浴びるように食べてみたいかな。なーんちゃって」


 小学生の頃、土曜日のお昼に即席うどんを食べながら、母親と冗談を言い合ったのが懐かしい。


 ピンポーンとインターホンが鳴る。相続代理人が来た。僕の人生も、もうそろそろ終わると思うけど、次は何を相続させてくれるのだろうか?


「お月さまが玉子になったら、大きな月見うどんできるかな?」

「お母さん、月見そばも好きやわぁ」

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赤いきつねと緑のたぬきと青いほしと愛のははと黄いろいうさぎ。 ナカノ実験室 @yarukimedesu

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