新生活

@Mrs-Peanut-Butter

第1話

新しい生活。目覚めた朝、隣には愛する女性がいる。新生活の朝一杯目のコーヒー。私はコーヒーにはうるさく、専門店に豆を買いに行き、飲む際には毎回挽いてプロのセオリー通りに淹れる、これが私の拘りだ。だが慌ただしい新生活の初日は疲れが溜まって目覚めの悪かった私に彼女が気を遣ってコーヒーを淹れてくれた。しまった、彼女には私がコーヒー好きと言っただけで、私の拘りをこと細かに話していなかった。新生活、同棲というものの大変さを痛感した。まだ新生活も初日これから歩調を合わせていこうと意気込み、彼女のコーヒーを一口。うまい。ただ、うまい。香りは雑で単調な深みのないコーヒーの香りでとても褒められたものじゃないが、とてつもなくうまい。今までの私のコーヒー観はなんだったのだと思うほどうまい。思わず私は彼女に尋ねた。「このコーヒーはどこで買ったの?」「この間スーパーで特売だったから買ったの。あんまり美味しくなかった?」「いいや、とてもおいしいよ。これから毎朝淹れて欲しいくらいだ。」「ありがと。私はあなたが淹れたコーヒーが飲みたいな。」「わかった、じゃあ後で買い物行こう。」

私の拘りはスーパーの安物にぶち壊された、なんて幸せなんだ。

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