カレーライスは危険な香り

時間指定で設定の依頼が来た。

15:00に帰宅するので合わせて欲しいという依頼だ。

確実に夕方定時を過ぎるパターンで足取りが重い。残業手当は支給されるが微々たるものだ。

気さくな主婦が無線LANの設定をしてほしいとのこと。

家電量販店で購入したらしいが、説明書が難しく無理ということで。

1時間で終わる感じで、サクサクと作業を進めた。

作業が終わると、キッチンから何やら美味しそうな香りが。

晩御飯の時間も近いので、カレーを作ったので食べて帰らないかと言われる。

もらいものとかは、断るように社内ルールがあるので、丁重にお断りをする。

子供が不在で、いつも一人で食事をするのでとても寂しい晩ごはんの毎日であることを強く訴えかけられる。

何とも、涙目で圧が強い。

それにしても、カレーの香りが誘惑をする。

一人では寂しいということで、会社には内緒ということでいただくことになった。

野菜がたくさん入っていて、とても美味しい。

ビールを勧められたが、さすがにアルコールはだめでしょ。

ということでここは、お断りをする。

色々パソコンのことなど会話をしながら、食事をする。

家庭の味というか、久しぶりにまともなカレーを食べた。奥さんにも、とても美味しかったことを伝える。

時刻はもう6時を過ぎていた。

そろそろ失礼することを伝え、帰り際にトイレを借りた。

トイレのドアを開けた時に、長年の直感というか何かを感じたので、ふと部屋の方を覗いた。

奥さんは自分のかばんをじっと見つめている。

あきらかに怪しい視線だ。

間違いを犯す前に、トイレで用を足したふりをして、大声で「どうも、お手洗いまでお借りしてしまって」と発した。

これで未然に防げたか。

急ぎ足でお礼を言い、かばんを脇にかかえて部屋を出た。

部屋を出てから、少し離れた場所で財布を確認した。

無事だった。

とはいえ、1万円ぐらいは入っていたのでもしかすると危ういことに遭遇していたかもしれない。

いや財布のジッパーが中途半端に閉まっていた。おかしい。

わかった。

千円札数枚なら抜かれたかもしれないが、一万円札だからすぐにばれる。

だから財布を開けて、やめたのかもしれない。

危険な主婦に遭遇した。

カレーに睡眠薬とか入ってないよな。と不安な気持ちで帰路につく。

未然に犯罪を防いだだけでも良かったのか。

翌朝、ひどい下痢だった。

絶句、当たったかも。


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