④
風呂場でのぼせた頭を、家のリビングで冷やしている。あの時、振り向いた天才たちが、若干嬉しそうにしていた理由は、今でも俺はわからない。でも、あの時二人に朝昼夕探偵団の結成を持ちかけたのは、俺のファインプレーだろう。あの約束が、一つの事件を解決するごとにお菓子を渡すという取り決めが、今でも律儀に守られている事にも、俺は感謝しなくてはならない。あの関係性を今でも気付けたからこそ、俺はまだあの二人に挑戦できるのだ。心の中で、絶対に勝てないと、そう思っている。でも、それでも勝ちたいのだ。勝とうという思いがなくならないのだ。それはきっと、最初にあいつらにあった時、自分が余りにも甘ったれていて、ダサくて、イキっていたからだ。だからこそ、あの天才で、主役で、主人公に、俺と言う平凡な凡人が、脇役が勝つことで、ようやく対等な関係になれると信じている。つまりは、挽回したいのだ。
いや、挽回と言う言葉は、カッコよすぎる。ただ自分は、あの時お前らに、生身の自分で向かい合えていなかったと、いや、それも言葉が過ぎる。そう、ただ一言、ごめんなさいを言いたいだけなのだ。そして、許されるのなら一緒にいて欲しいと、ただそれだ言いたいのだ。
オフクロに言わせれば、俺は馬鹿なのだろう。オヤジに言わせれば、男になったのかもしれない。でも結局、それらを一言でいうのであれば、俺はケジメを付けたいだけなのだろう。
だから、まず認めるべきなのだ。俺は分をわきまえるべきだ。身の程を知り、そこからあの名探偵ズと肩を並べるにはどうすればいいのか? を考えなければならない。
高校も同じなので、学業で負けたくないとも思うが、あいつらは常に学年同率一位で、俺は中の上ぐらい。色んな意味で情けなくなる。自分で言うのもなんだが、俺はパッとしないので、普段のように下の前で話しかけるのをためらってしまう。あいつら美人だし、人気も高いからな。俺が表立って話しかけるのも、学校で過ごしづらくて迷惑だろう。あの天才たちなら、主役で主人公なら、それぐらいの事は当然思い至っているのだろうけど。でも、あえて名前で呼べと言って来るのは、俺をからかっているに違いない。本当に、まだまだ遠い存在だ。
それでも、いつか本当の意味であいつらの助けになれるようになりたいと、今日も俺は予習の為に自分の部屋へ向かう。あいつらと会ったばかりの俺は全然ダメダメだったが、助けになりたいという思いだけは、本物だったから。
逢魔が時は彼者誰時と亭午に憧れる 朝昼夕探偵団の事件簿 メグリくくる @megurikukuru
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